#003 Indivisibleと褒められたいプレイヤー
Indivisible(邦題:インディヴィジブル 闇を祓う魂たち)、クリアしました。プレイ時間は30時間強。プラットフォームはニンテンドースイッチ。
インディーズ系統だし、大作タイトル程にはハマらないだろうと気を抜いていたいたのですが、思っていた以上に面白かったので驚きました。
加えて気になる点も結構多かったので、プレイ後の気持ちの整理も兼ねて各ポイントごとに記録しておきます。
【ストーリー/テキスト】
まず、私はこのゲームを英語字幕・英語音声にてプレイしています。序盤のプレイ動画を見たときに学習用としてちょうど良さそうと思ったので。
そのためこの記事ではローカライズ・日本語音声についてあまり言及しませんので予めご了承ください。
和訳時に表記がバラけたりするケースもあるようなので、固有名詞も英語版で統一します。
いい意味で「力押し」のストーリーでした。アニメ的というか、それこそアニメーションムービー部分を手掛けるTRIGGERのノリに近いものを感じます。
物語世界の歴史や習俗をギッチリ煮詰めて作り上げたような作品とは違って「細かいことは置いておいて、コレはそういうものだ」という勢いでガンガン押し進むので、細かいことが好きなタイプのプレイヤー向けではないかもしれない。世界観なんて特になんちゃってアジアの最たるものなので。
自分としては、元気がよくてよろしい! 可愛い楽しい! というノリで見ていたので(話が複雑になってしまうと読解がキツいというのもあり)とても楽しめました。
勢いでポンポン進めるストーリーが成立するには「登場人物の心情には破綻が生じていない」という前提条件が不可欠と個人的に考えていて、このゲームはその部分をクリアしているのではないかと思います。
序盤の奮起の理由、中盤の挫折、その辺は直球ストレートな王道。王道だからこそ構えずに身を任せられるし、しんどい展開でも安心して受け入れられるはず。
ラストの展開は不覚にも泣かされました。あれはズルい。
あとテキスト。ウッ……と思わされるようなことを言う登場人物はほぼ居なかったため、快く読み進められました。
ただクラウドファンディング支援者なのか? ゲーム世界からは浮いてるNPCたちにも結構な量のテキストが割り当てられていて、ほぼ本編に関係ない内容なものだから非母語話者としては割としんどかったです。
聞き取りはPort Maerifaで力尽きたよ。
【アートワーク/音楽】
初見で真っ先に目を引くのがおそらくビジュアル。褐色三白眼の元気娘こと今作主人公のAjnaちゃんをはじめ、旅の道中で増えてゆく仲間たちも個性的でキャラクター性に被りがなく、かつ皆が魅力的です。流石Skullgirlsの制作陣(今となっては「当時の」ですが……)といったところ。
フィールドデザインはTai Krung Cityがぶっちぎりで好きでした。謎建築に謎提灯! アジアの雑多な都市の空気をポップに昇華していて、探索していて一番ワクワクしました。
地味に助かったのは、地形の見た目と判定がきっちり一致してくれていること。メトロイドヴァニアにおいては「ここは壊せる」「触ったらダメ」など地形の性質がひと目で分かるに越したことはありません。
あまり横スクロールアクションをやらない身としては、このルールをきちんと守ってくれたのがとても有り難かったです。
音楽は菊田裕樹氏が提供されたとのこと、氏の関わったゲームには触れてこなかったので縁のあるプレイヤーが感じるだろう郷愁などは残念ながらありませんでしたが、Tai Krung Cityのダンスフロアのご機嫌なBGMは好きでした。戦闘時にもBGMが切り替わらないところもテンション上がります。分かってるよねそういうとこ。
【システム/プレイ感/難易度】
大味。この一言に尽きます。コンシューマゲームの系譜というよりは、海外フラッシュゲームの進化なのではと言いたくなるような、何とも言い難い垢抜けなさ。失礼な言い草で申し訳ない。が、本音です。
ここまでに述べたストーリーやアートワーク、あとゲームシステムの着想が素晴らしいだけに、ここが大きく足を引っ張ってしまっているのが妙に悔しくて。
この項は辛口になりますがご容赦ください。
(なお、リスペクト作品と言われるヴァルキリープロファイルについては未プレイのため、特に触れません。)
RPGと謳っているのにその実アクションが中心である、という点については、自分は全て了承済みで購入したのでプレイ上は全く問題なし。
ただRPGというジャンルの定義は問いたくなりますね。
ターン制だからなのか、ファンタジー世界が舞台だからなのか、剣と魔法があるからなのか、成長要素があるからなのか。
確かに戦闘は大雑把に分けて自陣ターン/敵陣ターンの交代制で進むので、ターン制と言えなくもない。が、根本は格ゲー的コマンド入力とジャストガードの応酬。プレイ中に長考する要素はなし。
ファンタジー世界の物語ではあります。その中を旅してゆく要素も。しかしどれも探索フィールドとしてのロケーションなので、擬似的に観光するような(=キャラクターを通して世界を擬似体験するような)要素は薄めです。
剣と魔法はあるにはありますが、主題ではないですね。それにコレがRPGの頻出要素であったとして、「あればRPG」と言えるものでもない気がします。自分で言っといてコレ。
成長要素(ステータス)、あります。多分開発側はこれを指してRPGと定義したのだと思うのですが、きちんとした数値として表示されるのはあくまでHPのみのため、これをもって他のRPGと並び立つものとするのは少々苦しい。
せめて装備カスタム、ちょっとしたアイテムを持たせてステータスをカスタマイズできたなら、まだこの呼称でも納得できたかもしれません。
ので、これらを総合するとIndivisibleは「探索型アクションアドベンチャー」と称した方が実態に沿っているかもしれない……と思っています。
探索要素は元々覚悟していたので割と楽しめました。ちょっと難しい寄り道の先にリンセル(強化アイテム。ハートのかけらのようなもの)が置いてあるのはよかったですね。
しかしマップにかなりの難があります。マップで見る限りでは進めそうな部分がフィールドでは壁だったり(後半で顕著? 開発スケジュールの苦しさを感じる)、マークや背景色の説明がなかったり(自然と分かる程度ではあります)、サブクエストの目的地のマークが半分くらい表示されなかったり(これが一番困った)、とにかく不親切。インディーズのアーリーアクセスに近い投げっぱなし感があります。
それがボディブローのように効いてくるのはゲーム後半あたりから。フィールド一つ一つが広めで探索しがいがあるのですが、いかんせん要求するアクションの難易度が高いので、往復するにも手間がかかります。
前述のクエスト指定ポイントをしらみつぶしに探すにしても、広大かつ移動コストのかかるフィールドをあっちこっち走り回るだけで結構な時間を食われます。
特にキャラクターごとのサブクエストは満遍なく世界各地を指定してくるので、これが本当に容赦ない。私のプレイ時間30時間のうち5時間くらいはコレのような気がします。
マップ難度はまぁいいとして、意図的に効率を下げてくるのはよろしくない……。
もうKaanulを往復したくないぜ……。
あとはコマゴマとした部分ですが、こういう点は少しずつプレイヤーの意欲を削いでいきますね。
・例えば壁を壊すチュートリアルが壁に近寄ると表示される場面で、ストーリーが進行してもチュートリアルが消えない。多分表示するエリアが設定されているのだろうけど消すフラグくらい設定しておいていいのでは。
・効果音とBGMの調整が甘い。特にゴブリンのような敵(名前忘れた)のキョアーオ! という鳴き声が戦闘終了直後にデカデカと響くのが気になった。会話開始時の固有BGMの入りはもっと小さめでいいし、音量落とすのはもっとゆっくりでいい。効果音のクオリティももっとこだわってよかったのでは。特にZebeiの着弾音。
・何故エンディング曲がループするのか。その上何故ラストで尻切れトンボになるのか。そこは妥協してほしくなかった。時間の調整くらいならできるはず。
・Zahra加入クエストの固有モンスターがとんでもなく硬い。復活が簡単とはいえ全滅レベルの敵をポンと出してしまうのはちょっと。適正レベルではないと理解しつつも20〜30分ほどジャスガと必殺を出し続けてなんとか負かした。達成感はあった。
・スイッチ版のビルドが古く、New Game+が実装されていない。諸事情により今後のアップデートは望めなさそうなのが本当に残念。
【キャラクター】
めちゃくちゃ刺さりました!!(大声)
そうじゃないとこれだけ↑不満点がありながら記事を書いていないですよ。
特に好きだったキャラを登場順に紹介します。
※なお、私は百合好きのオタクでもあり、特に配慮せず色々書きますのでご注意ください。
《Ajna》
世に一定数存在する褐色好きを引き寄せ本作をプレイさせるに至った、主人公にしてマスコット。
アスレチック中も戦闘中もずっと目にすることになるので思い入れもひとしおです。健康的で元気!
声を当てている役者さんが本当に上手で、照れ笑いするシーンなどは特にかわいさMAXでした。
エンディング後に寂しさが残るのは良ゲーの証だ!
《Dhar》
しでかした事が事なので作中では散々な目に遭ってばかりでしたが、そこからの最後の流れは印象的でした。
本当にラストまで「あのまま」とは思わず。安易な展開に逃げてないという観点で言えば、とても誠実なキャラクター。
《Razmi》
みんな大好きひねくれシャーマン。あのダミ声は唯一無二。トンデモ火力の虜になってしまったので序盤から終盤まで一軍でした。
序盤からずっと味のある茶化し役でプレイヤーの心を奪いつつ、終盤で段々と絆されるところを見せて殺しにかかるのは反則だぞ。
ラストシーンでの会話で彼女を最後に選んで泣いたプレイヤーは多いはず。私もその一人です。
《Thorani》
何から何まで自分のセーヘキにブッ刺さる要素だったのでお手上げです。どうしてくれるんですか(どうもしない)。
戦闘では割と手堅くヒーラー役をしてくれるのですが、最大の弱点「必殺3じゃないと自分を回復できない」がネックとなって二軍落ち。
関係ない話ですが彼女がきっかけで「あらあらうふふ属性=ara ara」と訳されているのを知りました。有益な情報でした。
《Kampan》
何故だか分からないのですが妙に好きでした。作中で年齢は明かされない? のですが、個人的にはAjnaちゃんより年上であって欲しい。
ワシはロリ先輩またはロリ上司属性に目がなくてのう……ヒヒヒ……。
という冗談はさておいて、あからさまにアホなのだ! という第一印象とか、情け無用の必殺とか、下チャージ後の攻撃の効果音とか、まあとにかく色々なポイントが好みでした。かわいいぞ鉄のネズ公!
《Mary》
いやプレイアブルキャラではないんですけどね。でも妙に好きだったので。
彼女にまつわる色々はメトロポリス由来なんでしょうかね? あとで調べておこう。
何が一番ツボだったかって、見た目もそうだけど声優さんの演技と発音。
ネッッットリしたお嬢様らしさが出ていて素晴らしかった。彼女の発音する「MOLOCH」がもう大好き。目覚ましにさせて。
もちろんここに書いてない子たちもみんな好き。この物語を最後を考えると、もう好きにさせた時点で勝ちと言えますね。やられた。
【さいごに】
ゲームが好きな人って、多かれ少なかれゲームに「褒められること」を期待しているんじゃないかと思います。
敵を倒す、お金がもらえる。レベルが上がる、効果音とともにステが強化される。上手く操作できる、ゲージが光る。そんな感じで。
私がシステムの項で言及した「垢抜けなさ」は、多分そこに原因がある。
このゲームはなんだか、褒めの演出が足りないような気がします。
具体的に言うと、集めたリンセルでの強化演出が地味とか。バトルが終わったあとレベルが上がらなければスッと通常フィールドに戻っちゃうとか。クエスト用のマップに(クエスト以外で)苦労して入り込んだ時も、特に何のアイテムもないとか。難所を超えた時に回復アイテムがあればよかったとか。効果音の爽快感がいまひとつだとか。
こうなると褒めの中で大きな比重を占めてくるのが、ストーリー進行とか、ムービーとか、キャラのボイスとか、そういうものになってきます。
これが好きになれる人かどうか、その点が作品の賛否の分かれ目になってきます。いわゆる「アートワークが刺さるなら買い」。
なので、もしこのゲームを誰かに薦めるとしたら「キャラクターをザッと見て好みだと思ったなら」「そしてアクションゲームに抵抗がないのなら」と条件を二つ付けて紹介したいところです。
その二つがクリアできるなら、きっと素敵な体験をもたらしてくれるはず。
70点くらいの良ゲーでも、こうして筆をとるくらいには胸に残ることがあるんだなぁ……としみじみ思った次第です。
今回はこんな感じで。
では、また次の日曜に。