週報タルトトタン

よく寝て、よく食べ、日曜ものかき。

#005 苦難を乗り越え、ループの向こうへ

 

 スイッチ版の『グノーシア』をプレイしました。
 いや~~~~~~~~~面白かった、とても面白かったです。
 ループ回数は178回、プレイ時間は22:47。特記事項埋めは途中で詰まってしまったので、有志wikiの情報をお借りしました。比較的スパスパ進められた方だと思います。感謝。

 まさかプレイしたことのない方がこんな辺鄙なブログに迷い込むなんてことはないと思いますが、念のためフワッと説明しますと、グノーシアは下記3点の要素で構成されるPSVita、スイッチ対応のゲームです。

 ・SF世界を舞台にした人狼系ゲーム
 ・ゲームプレイを繰り返し、14人の登場人物たちの情報を少しずつ集めてゆく
 ・主人公はループに囚われていて、登場人物のひとり「セツ」だけが同じくループしている協力者

 ゲーム自体は最近にしては珍しくシンプルなデザインだと思います。基本的な情報はテキストベースで、「発言」と「事実」を精査しながら進めてゆく具合。
 人狼かぁ……と当初は尻込みしていたのですが(実際スイッチのお知らせでオススメされた時も人狼系という触れ込みだけでちょっと避けてた)ことのほか評判がよかった+日本ゲーム大賞で最終選考に残ったらしい、という話を聞いてやってみたところ、これが分かりやすいし面白いしで最高でした。大事件ですよこれは。

 という訳で、今回は昨日クリアしたグノーシアの感想を、頭の中を整理するために書いていこうと思います。
 なおストーリーを「最後まで」クリアした前提で全ての情報に言及するつもりなので、万が一未クリア・未プレイでしたらこの記事を読まずにまずご自分でプレイしてください。
 このゲームは初回の体験、それも自分自身がストーリーに向き合った体験が第一の作品です。どうか是非、未知の展開に当事者として巻き込まれてください。きっと無二の思い出が心に残るはずです。
 保証します。

 

 

【設定の巧みさ】

 ゲームシステムと物語世界の設定が噛み合っている……というのは演出上めちゃくちゃ効果的です。

 例えば、「Doki Doki Literature Club!」の流されるだけでなにも出来ない主人公。または「Undertale」の主人公の選択で姿を変えるゲーム世界。
 何かまだ良い例がある気がするのですが上手い事思いつかない……。
 
 反対の例(ゲーム体験と物語が乖離する例)を挙げるなら一般に「負けイベント」。自分は確実に倒したはずだったのに、バトル後のムービーで仲間がボロボロ、相手はピンピンしてたらスッと熱が冷めていく感じ、ゲーマーの方なら経験があるかと思います。

 グノーシアはとにかくSFの世界観、ループ設定とゲームシステム自体が非常に親和性の高いつくりをしています。
 主人公とセツはループしている。だから同じ「1日目」を何度でも迎えるし、コールドスリープされてもグノーシアに消されても1日目に戻ることができる。
 何度失敗しても真っ新な状態からやり直すことができるので、プレイヤー的にもとても嬉しい設定です。

 人狼ゲームの役職のSF的読み替えも巧みで、チュートリアル中の説明を読んでいくだけでもとても面白い。SF好きな人なら確実に楽しめる。
 誰か一人選んで正体を判別する占い師=船内の機器を使う権限を持ったエンジニア。多数決で消された人の正体を判別する霊媒師=眠った人を診断するドクター。絶対に人間だと互いに証明できる共有者=グノースに感染する機会のないアリバイ有の留守番。
 まだ役職はありますが、これらの情報を違和感なく飲み込みながら進めてゆける設定の妙が素晴らしい。
 あと怪しいと判断した人物を「吊る」、つまり人狼においては処刑すると表現されるところを、生命は奪わない「コールドスリープ」としてくれたところもプレイヤーの心情にとてもやさしかったです。

 特記事項を全て埋めよう! というのも巧い。
 キャラクターのことを全て知って思い入れが強くなってから終盤の展開へ……という流れと、ループを引き起こす銀の鍵が「情報よこせ」という性質を持っているという設定、これが噛み合っていますね。
 空いてる情報全部コンプリートするマン(?)でない限り「何でこれを全部埋めないと進めへんねん」と疑問を抱く場合もあるかと思います。実際私はコンプリート癖がないので、この理由付けが出てきたときは膝を叩きました。そこもフォローするか、やられた! と。
 なにより情報が埋まるにつれ登場人物がみんな好きになってゆくので、見事に罠にかかった形ですね。
 キャラクターたちの魅力については後述。

 

 

【ランダム性という救い】

 人狼というゲーム。とにかく誰かを疑う、場合によってはクロでない人をハメる局面も出てくるので、面白いのですが「友情破壊ゲーム」になってしまう性質もあるかと思います。
 私自身は本格的な人狼に参加したことはないのですが、友人の集まりで誰かが提案してきた「ワンナイト人狼」をプレイしたとき、自分がクロの立場からシロの友人をうっかり上手いことハメて「えぇ……(ドン引き)」という空気になった苦い思い出があります。多かれ少なかれそういう経験をお持ちの人狼プレイヤーは居るんじゃないかと。
 プレイヤーとしての最適解と、人間としての正解って違うんだね! 切ねぇな!

 その辺の心理的負荷をグノーシアは上手いこと軽減してくれています。
 もちろん「相手はプログラムされた架空の存在、CPUである」というのもあるのですが、それ以上に「役職が毎ループでほぼランダムである」というのが有難いのです。

 つまり、絶対にどのループでもこいつは敵! というキャラクターがいないので、安心して全員を好きになれる。
 どのループでも絶対に味方! な子も居ないので(一緒にループしている協力者のセツでさえ敵になる回がある)、投票されそうになっている味方を前に「違うの、この子はいい子なの! 何もしてない!」と王蟲の幼体を連れてゆかれるナウシカのようなムーブをしなくて済みます。
 何ですかねその喩え。

 誰もが味方になりうるし、敵になりうる。ループごとにほぼリセットされるから、疑っても消してもそこまで苦しくない。リセットされるし。
 プレイヤーの目的は「様々な条件の彼らと出会って、情報を集める」ことだと説明されているので、誰と協力・敵対してもそれは必要なこと。
 と、このように環境と大義名分の両面からプレイヤーは保証されている訳ですね。

 何度でもプレイしやすい心理的な状況と、ロード皆無なサクサク感も相まって、プレイヤーは寝食を忘れて物語を追ってしまうんですね(実話)。

 

 

【作り込まれた登場人物たち】

 立ち絵やイベントCGが美しいのは当然のこと、登場人物たちの特記事項埋めの過程で見えてくる各々のキャラクター性、さらにこれは本当に凄いのですが議論中の振る舞いから浮かんでくる人物像が「彼ららしい」のですよ。

 ラキオは正論を言うのにしょっちゅう疑われているなぁ。守らなきゃ……。
 夕里子さまを敵に回したら最後、あっという間に眠らされるな。怖い。
 ジナは誰かしらの嘘を見抜いても、疑った人物を糾弾しすぎて消されちゃうな。誠実すぎるぞ!
 しげみちがまた嘘ついてる……。で、みんな気付いたみたいだな。
 ジョナスはマジで訳わかんねぇな!!

 など、何度もプレイしていくと傾向が見えてくること見えてくること。
 どういう風にプログラムを組めば彼らにこんな風に生命を吹き込めるんでしょうね。
 制作者の方のインタビュー記事を読んだのですが「なるほどそういうことなんですね???」くらいの理解しかできず少々哀しい。
 なんか凄いことが起こってるんだとおもいます(背景が宇宙の顔)。

 

 各キャラクターについてもっと語りたいのですが、残念ながら今日は時間切れになりそうなので省略します。
 情熱が抑えきれなければ次週の記事で書くかもしれません。
 グノーシアの登場人物たち総勢14名、それぞれが(ちょっとブラックな背景を持った“彼女”含めて)興味深いパーソナリティを持っていて、読み解くのも議論するのも本当に楽しかった。
 締めのような感想を書いていますが、正直まだ見ていないイベントが沢山あるように思うので、今度は性別を男性にしてプレイしようかと思っています。
 ……しまった、先週やるやる言っていたElonaに手をつけられていないぞ。
 11月になったらCyberpunk2077とゼルダ無双BotWも出るし、ああもう……時間が足りねえよォ……。

 

 キャラクターについて深く触れられなかったのですが、これだけは一言。
 セツ。あの人は、本当に……プレイヤーにとって、特別な存在になります。
 初めは頼もしい存在で、終盤にかけて「絶対に幸せになってほしい人」になってゆく。
 ノーマルエンドにて「そ゛ん゛な゛ん゛認゛め゛ね゛ぇ゛」と思わせるストーリーテリングは見事としか言いようがないです。

 

 

 という訳で、語りたかったことをまるで語り切れていないので、多分来週もグノーシアの話です。
 次は人物中心の話になるかな。ループ構造の考察とかは他の方に任せましょう。物語の中でほぼ語られてますし、残る疑問は「銀の鍵の構造がウロボロスである=“どちらが先か”の答えはない?」と考えているので私には明確な回答を示せません。

 まだ知らないイベントがあると考えるとわくわくしますね。
 それに、1回1回のループが少しずつ違った過去の産物なので、ある意味では初見。新鮮に楽しめるので、まだまだ遊び足りません。

 

 ではまた来週に。