週報タルトトタン

よく寝て、よく食べ、日曜ものかき。

#015 右往左往キネマ


 映画といえば○曜ロードショウか○曜洋画劇場でうっかり面白そうなのをやってるところをザッピングで見かけてしまい、寝る前の準備をそっちのけで最後まで観てしまって「さて寝るか……」となるもの。それくらいの認識しかなかったもので、この監督が良いとか、このジャンルが好きとか、あの名作はもちろん押さえているとか、そういう映画好きなら持っている知識・エピソード全般をほとんど持ち合わせていない私です。
 とはいえ最近(#002で言及したとおり)ホームシアターを導入しましたので、そんなシネマ朴念仁のままでは勿体なかろうと思い直し、まずは「聞いたことある」「ちょっと気になる」な映画は観賞してみることにしています。

 

 そんな経緯で、本日は最近観た映画の感想を簡単に。
 書き始めるのが諸事情でえらく遅くなってしまったので、本日中のアップに間に合わせるために駆け足で書いていきましょう。
 以下、複数の映画作品について若干のネタバレが含まれていますのでお気をつけて。


 ※なお、劇場での映画観賞の際は劇場の指示に従い、適切な感染予防対策を行っています。
  不要かとは思いますが、一応注意書き。時節柄。

 

 

 

【マイインターン】@自宅

 映画好きの友人に「最近観たのでオススメあるかな?」と訊いて何本か挙げてもらった際、「これが一番ライトに楽しめる」と紹介された一本。ありがとう友人、ありがとうアマゾンプライム
 70歳の折り目正しい老紳士のベン(ロバート・デ・ニーロ)が新進気鋭のネットショップ会社社長ジュールズ(アン・ハサウェイ)の会社へインターンとして入社するお話。

 まず結論から言うと、とってもさっぱりしていて、話の筋もまとまっていてわかりやすく、(これが誉め言葉になるのか分からないけれど)イヤなところがない、サラリと読める中編小説のような映画でした。
 なんとなくレビューサイトとかを斜め読みすると「ジジイがポッと出てきて若造の問題を解決するのは~」のような感想もチラホラあるようですが、まあ言わんとすることは分かるけれど、このシナリオのポイントって老人だから/経験豊富だからスゴイ! ということを押し出したかったのではないんじゃないかなって。
 ベンは新しい環境に入って、そこに自分のやり方をうまく合わせながら馴染んでいくし、ジュールズもベンの意見を受容していくことで新しい視点を得てゆく。年齢や実力の差が主題なのではなくて、全く違う人間が交流することで新しいシナジーが生まれることへの肯定だと受け取りました。
 こんな風に自分を変えられる機会が現実に訪れたなら、それはめちゃくちゃ幸運、千載一遇だと思います。

 余談1:働き方がたいそう先進的で「こういうオフィスあるんだ……すげえ……」となりました。田舎者です。いいなぁ。
 余談2:メイキングのロバート・デ・ニーロ氏(素)の姿が劇中のベンとあまりに違って一瞬誰か分かりませんでした。キャラが違うってレベルの話ではない。役者さんはすごい。

 

鬼滅の刃 無限列車編】@劇場

 びっくりするくらい話題になってますね。累計興行収入千と千尋を抜きそうなんだとか。これはロングランになるんだろうな。
 まず以下の感想を書くにあたりはっきり申し上げておきたいのは、自分は「原作コミックス派」であり「アニメ一期は一応アマゾンプライムでひととおりチェックした」ということ。
 この前置きでなんとなくお察しいただけたかもしれませんが、自分にはこの映画は合いませんでした。ごめんなさい。
 何が一番キツイって、世間で大絶賛、この映画を見た友人2名のいずれも太鼓判のこの作品に自分が付いていけなかったやるせなさ、孤独感ですよ。

 ファンの方には申し訳ないのですが、以下に自分がNGと思う点を書き留めておきます。

 一つ目、ある程度独立した上映時間2時間の作品として、シナリオがきちんと成立していない。
 これについては「この映画は独立した一本の作品ではなくアニメ一期の続き物だからこれで問題ない」という見方もありますし、自分もそれには同意しますが、単純にこれだけ動員できた作品なのに初見にまったく優しくないのは勿体ない。
 原作でも煉獄さんの初めての活躍編だったのにそのまま退場となってしまって「もっと活躍しないんですか!?」と驚いたのですが、映画ではこの唐突感が殊更に目立ってしまっている。だって初対面の柱合会議も映画にはないからね。列車で会って列車で別れた人でしかないというのは、折角の魅力的なキャラクターが浮かばれない。
 なんとなく素人が見た感じ、「下弦の壱戦・前編」「下弦の壱戦・中編」「下弦の壱戦・後編」「上弦の参戦・前編」「上弦の参戦・後編」のアニメ五回分を観たような感覚でした。
 原作通りと言えばもちろんそうですが、自分としては一本のストーリーを追いかけたかった。

 二つ目、原作通りとは果たして最善か。
 漫画原作の方はモノローグ(マルの吹き出しじゃなくてシカクのアレ)で心境も状況もおおかた説明してしまうつくりをしていて、それは漫画として読む分には大した違和感もない(むしろ面白い、大衆小説的)のですが、これをそのまま映像にしてしまうとテンポが遅いのなんの。
 漫画はなぜ違和感なく受け入れられるかというと、読む速度や受け取り方が読み手によって完全にコントロールできるから。
 これが映画になると一気にテンポが損なわれる。なぜなら動画のシークバーが一定の速度で進むように、描写も説明も作品側の速度で進んでゆくから。
 漫画とアニメは同じものではなく、それぞれに得意不得意があります。漫画にはない「動きの演技」をアニメにはもっと取り入れてほしかった。キャラクターが喋って説明する心境ひとつとっても、たとえば焦り顔で剣の束を握りなおすカットで代用できるのではないか。
 せっかくの劇場版アニメなのにその辺がとても物足りないと感じた次第です。

 結果として同伴してくれた友人や斜め後ろのオネーチャンほどには泣けず、「さて……どうしよう……」と困り果てる観客となってしまいました。
 いっそのこと映画から入った人が「えっ、タンジロウが主人公なの!? レンゴクさんじゃなくて!?」と驚かれるくらいアレンジを加えて良かったんじゃないかな。キッズのメイン層受けはいまいちかもしれないけど。

 

【名探偵ピカチュウ】@自宅

 話題になってるなぁ……くらいで当時スルーしていたのですが、なんとアマゾンプライムで公開されていたので(回し者か)早速観てみました。
 ポケモンに関して、自分は「アニメ初代」「金銀」「HGSS」「剣盾」あたりに触れてきています。あんまり数はやってないですが、アニポケは小さいころにお世話になりました。ポケモンショックは事件そのものよりもTSUT〇YAのレジにあった「ポケモンのビデオはレンタルできません」の張り紙が怖かった思い出。
 うーん、世代がまるわかり。

 で、ポケモンたちが現実に生きているかのようで最高! と噂の名探偵ピカチュウですが、個人的な意見としては「ウーン大味! じつにハリウッド!」でした。映画オンチでハリウッドのなんたるかを語るなとは自分でも思います。すいません。
 もちろんフシギダネとか知ってるポケモンは可愛かったですし、ピカチュウもフワフワシワシワしててチャーミングでしたが、でも一番肝心なのはやっぱりストーリーじゃないかと思うのです。

 いかにも何か裏事情を知ってそうなケン・ワタナベはホントに何も知らないだけの父の友人でしたし、父がピカチュウに移し替えられる必要があったのかいまひとつわかりませんし、結局ピカチュウの中身が○だったとはいえ(中途半端なネタバレ配慮)どうして主人公にだけ言葉が分かったのかとか、ミュウツーから採取できる「R」の正体とか、その辺の情報がほとんど与えられなくてちょっと切ない。
 もうちょっと……もうちょっと何かあってもいいはずだ……。

 あとなんとなく観賞後に「画が頭に残らない感じ」があるなぁと思ったのですが、これは何なんでしょうね。彩度? 構図の問題?
 ただでさえ人の顔と名前を覚えるのが苦手なのですが、とくにこの映画の登場人物については覚えられなかった。不思議。
 ケン・ワタナベを除いて。

 ポケモンがその世界に生きてて、ピカチュウがモフモフで魅力的で、ドダイドスどーん! 研究所ドカーン! 最後はビル最上階でスリラー! なエンターテイメント性に肌が合う人ならきっと見ても損しないはず。

 

【羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来】@劇場

 たしか鬼滅の映画の開始前宣伝タイムで予告編を見て「おっ……? 大陸からケモが渡ってきたな……」と一瞬で心を掴まれた作品。
 ここまでナンダカナーな感想が続きましたが、自分、この映画好きです。面白かった。

 シンプルな作画(多分元々のフラッシュアニメからそうなのだろう)の助けもあって本当によく動く。緩急も気持ちよくて、細部の動きもこだわりを感じます。
 眉や目線の動作、手足の運びから見える重心の移動といった「動きの演技」がきちんと描かれていると、絵として描かれたキャラクターたちにきちんと命が宿って見えます。今思いつく例でいえば、もののけ姫のサンやアシタカの機敏な目線の動きとかその辺。
 そこがしっかりしている時点で、観客としては「彼らは生きてる!」と登場人物に対する一段階目の好感を抱く訳ですね。
 訳知り顔で何か言ってる。

 ストーリーは序盤のうち知らない世界観に突如として放り出されるので、しばらくは何がなんだかわからないまま進んでゆきますが、シャオヘイとムゲンが陸に上がったあたりからなんとなく世界の構図が見えてきて「ああ、そういうことだったのね」と入り込めるようになってきます。
 いま思うと右も左も分からないのは主人公の視点とほぼ一致していて、その辺は感情移入させる仕組みとして上手いですね。
 とはいえ航海のシーンはちょっと長かった気がする。あの場面、そもそも島がどこかの霊域的なものなんじゃないかと勘違いしていて、陸についたときに「えっコレ現実だったんかい!?」とびっくりしました。

 妖精やムゲンなど、向こう側の住人たちが現代社会にバッチリ馴染んでるのが意外と新鮮に感じました。スマホ普通に持ってたのに驚き。こういうのって“念”で通信したりしそうじゃないですか。
 その辺は日本の現代・伝記モノにはない感覚かもしれない。そういう作品もあるのかもしれないけど、少なくとも私はそんなに見たことないです。
 「テレビを袈裟斬りにするタイムスリップしてきたお侍さん」的な、未知の文明に遭遇するタイプの典型ではないのが真新しかった。

 あと、「イントロは千と千尋・トトロ」「ロードムービー・ギャグは00年代日常系アニメ」「バトルは少年漫画的枠組み」あたりのエッセンスを感じました。パクリとして指摘するつもりではなく。
 上手いこと取り入れるってこういうことを言うんだろうな。
 この映画ならではのオリジナリティもきちんと受け取ったのでよいと思います。
 (オリジナリティなきオマージュについてはゲーム方面で色々思うところがありますが、それはまた改めて)

 ただひとつだけわがままを言うのであれば、もうちょい女の子の妖精がいてくれると嬉しかった。見たいじゃん。人外に変化する美人(憚らない発言)。
 フーシーみたいな変化が見たいねん!!
 こら!! お茶碗叩かないの!!!!!!!!

 


 ここまで書いて思うのは、大人向けの作品を全然見てないな!? ということ。
 実は「ミッドナイトスワン」を羅小黒戦記と同じ日に観ようと思っていたのですが、休憩のために一度家に帰ったらなんとなく疲れてしまって、また来週でいいや……とキャンセルしたらなんとその日が公開最終日だったというオチ。
 観たいことには変わりないので、レンタルできるようになったら是非チェックしたいところです。
 そのころには円盤の再生環境も整えておかないとね。
 アマプラの次見るリストもたまってきてるし……。


 今週の更新は思ったよりドタバタしてしまった。
 次回以降はもっと余裕をもって更新したいです。土曜に書き上げるのがベストと分かっているけれど、どうにも(毎週毎週、日曜当日に書いてる)。

 それでは、次の日曜に。