#019 ガラムマサラ・ボデー
副題、印度カリー子大先生への一方的な感謝。
カレーとは市販のルーでナベ一杯につくって、その後数日はカレー三昧になる宿命を背負った料理、いや料理というよりはある種の「イベント」でありました。
美味い、楽チン、しかし重い。
料理にはそれほど造詣が深くない……という若干の引け目(?)もあり、スパイスから作る本格カレーなんぞ夢のまた夢でありました。調べればやりかたは理解できるかもしれないけど、これのためにようわからんスパイスを買い揃えたとして他に使い道がある訳でなし、余計な在庫が増えるだけだろうなぁ……とハナから調べることもしませんでした。
(似たような人は多いと思う。醤油とかの分かりやすく使いやすい調味料以外は買うまでのハードルが高くないですか?)
そんな折、料理に精通した竹馬の友から激しくおすすめされたのがレシピ本、【ひとりぶんのスパイスカレー】。
以下、この本および著者の印度カリー子先生への賞賛が続くことになりますが、外部リンクなどは一切貼らないのでこれは宣伝目的のブログエントリーではありません。
Amazonでも紀伊國屋書店オンラインでも、なんなら電子書籍でも簡単に手に入るので、この記事を(何の事故か因果か)読んでしまったあなたが「なんだかやれそうな気がしてきた」「カレーの口になってしまった」という気持ちになったのなら、ぜひ手に取ってみてください。
きっと想像以上のおもしろい出会いになるはず。
さて、この突拍子もない一方で何を信条にしているか非常に伝わりやすい素敵ネームを名乗っている【印度カリー子】先生ですが、一貫してカレー初心者に向けて「スパイスカレーは簡単に作れるよ!」というメッセージを発信しているようです。
さらには会社を設立、初心者向けのスパイスセットの販売も行うなど、日夜スパイスカレーの布教に東奔西走しておられるとか。
まさにカレーの伝道師。とんでもねぇバイタリティ。
今回私が入手した【ひとりぶんのスパイスカレー】という本では、だいたい以下の3パートに分けて作り方を説明しています。
1. いかに作るのがカンタンか、必要な道具と材料
2. 肝心要の「グレイビー」の作り方
3. 具材、グレイビー、ベースを合わせて完成
多分ネットで調べればいくらでも出てくるとは思いますが、あんまり本の内容を明らかにしてしまってもアレなのでここではグレイビーの作り方や具材の量について詳細は書きません。
ただ、グレイビーは「野菜二種類を切って炒めるだけ」「スーパーにあるスパイスの小瓶3種類を混ぜるだけだった、あと塩」「これで2人前と明言してくれる」とだけ記します。
料理に自信のない方なら、この3点がどれだけ有り難いかきっと察してくれるはず。
とくに◯人前のくだり。
ちなみにグレイビーというのは市販カレーを作る際のルーにあたるものです。レシピにある分量で2人前、2倍の材料で作れば単純に倍で4人前。
塩やスパイスが効いているので、冷蔵でも冷凍でも長持ちです。
ひとり暮らしなら1人前を小分けにしてタッパに入れとくと便利。4人前作って4日連続カレー! などという悲劇はもう起こりません。
グレイビーが作れれば(2. の工程が完了すれば)あとはこっちのもの。
3. でめちゃめちゃ応用が効くので、ここからが大層楽しいのです。
・具材(野菜、魚、肉、なんでもお好きなように)を炒めて
・グレイビーと炒め合わせて
・ベース(難しいことはない、水や牛乳、ヨーグルト)を混ぜて火を通す
たったこれだけでルーにもカレー粉にも頼らないカレーが出来てしまう……。
今までの私の苦手意識はいったい何だったのか。
あと当然これは明記しておきたいのですが、美味しいです。
めっっっっっちゃ美味しいんです、これが。
だいたい何入れても美味しい。どういうこと? これが人類の叡智ですか?
さらに手厚いことに、この本には具材とベースの組み合わせの例もきちんと書かれてます。
本のパートとしてはこの具体例レシピのページが大半を占めるのですが、前半のグレイビーの作り方が重要かつ有用なもので、レシピ本読み込むのが億劫だったとしても「本当に押さえたいところ」が最初の数ページで理解できるのがニクいところ。
ちなみに、具体的な指南で私が作ったのは以下のカレーです。ご参考までに。
【ベイガンキーマ】
いきなり(カレー音痴としては)耳慣れない名前が出てきましたが、なんてことはない「ナスとひき肉のカレー」です。
ベースはヨーグルト。
レシピ集の中でも一番最初、「実践編」の先鋒として出てくる基本中の基本のカレーです。
材料の分量も計りやすく、かつ作り方も簡単なので文句なしに初心者向け。
なおかつヨーグルトを使うことで「ふつうの(ジャパニーズな)カレーと違う!」な味わいがあります。
ポケモン剣盾でいうところの「すっぱくちカレー」ですね。
プレイしていたときはすっぱくちカレーなんて有るものかよ、と半信半疑でしたがなんと実在しました。しかも美味しかった。
想定外の場所で点と点が繋がってしまった……。
また、今日(2021/01/10)作ったベイガンキーマ、ヨーグルトを切らしてしまったため豆乳(紀文のやつ。特濃)で代用したところ、ヨーグルトよりクセのない味になって、これもまた美味でした。
乳製品の脂質が気になるならこっちもオススメです。
いくらでもアレンジがきくよ! 滅多に失敗しないから安心して! と本の随所で初心者を励ましてくれるメッセージたちは真実でした。
心強い。
【トマトチキンカレー】
シンプルに鶏肉だけで攻めるカレー。
何を隠そう私のクリスマスイブを飾った一品です(公表する必要もない)。
トマトとありますが別にトマトを具材として用意する必要はなく、前述のグレイビーに含まれているため必然的にトマトカレーになる……ということだと思われます。
これも鶏肉の旨味が引き立って美味しかった。
応用レシピとして水を多めに入れてパスタを投入するチキンカレー・スパゲティも紹介されていたので試してみましたが、美味しい以上に油がキツかった(多分オリーブオイルを少しだけ投入したせいもあると思う)。
今度別の具材で試してみることにします。
【ポークマサラ】【アルービンディ】
水分少なめカレーたち。
ここにきてベースをほとんど使わないレシピが出現します。必ずしもベースを使う必要はないと、読み込むことで新たな知識を得られる構造。お見事です。
なんだこの本。カレー・チュートリアルとして優秀すぎる。
必ずしもごはんとセットで食べる必要はなく、このあたりになるとおかずとしてのカレーの可能性も見えてきます。
実際、ジャガイモは単品でもいける味わいでした。
好きなときに1人前だけ作れる手軽さから、一時期はカレーばっかり食べてました。
ところで「日本に来た外国人は、空港で醤油の匂いを感じる」という話を聞いたことはありますか?
当方は日本人ですから己が醤油の匂いを放っているかはイマイチ分からなかったのですが、スパイスカレーを頻繁に食べていたところ、ある時自分の体から懐かしい匂いがすることに気付きました。
それは大学生時代、たった1年間だけとはいえ国際学生寮に寝泊まりしていたときのこと。
留学生たちはさまざまな人種・国籍の入り乱れる集団で、とりあえず英語が通じるだけでも有難い(向こうの母語はバラバラ、こちらの英語はブロークン)といった日々を過ごしておりました。
普段は自転車で大学へ通っていたのですが、その日は雨がひどく、なおかつ徒歩では間に合わない時間だったため、本数の少ないスクール・マイクロバスへ留学生たちとともにスシ詰めになった時──
そう、まさにあの時嗅いだ香りでした。
異国の習俗の中で暮らしてきた、和食ではない料理を食べてきた彼らの香り。
今なら分かります。あれはまさしくスパイスの香りだったのだと。
(ちなみに、留学生たちはアジア圏が過半数を占めてました。)
あっ、いちおうフォローしておくと、決して不快なアレではなかったです。
ただ文化の違いをフィジカルに理解した瞬間だったので、今でも妙に鮮明に覚えていたようで。
嗅覚って視覚より記憶と強く結びつくんですって。
ソースはうろ覚えの伝聞。
もう一つフォローしておくと、カレーの頻度を少し下げたら一切気にならなくなりました。
そもそも自分が何かの匂いを感知したとしても、ほとんどは他人にとって無臭なので(よく鋭すぎると言われます)まったく気にする必要はないと思います。
あしからず。
今週は伝道師のおかげで万年料理初心者がスパイスカレーにハマった話でした。
来週は何を書こうか。
では、次の日曜日に。