#024 YUKI事件、あと山下達郎のレシピ
知らないというのは恐ろしくもあれば楽しくもある。
今日はそんな話を二つほど。
なお先にこの記事へ辿り着く層を見越してあらかじめお伝えしておくと、「カシミヤのほほえみ カバー」または「カシミヤのほほえみ 山下達郎」あたりのワードで検索して来られたあなた向けの情報はこの記事のいちばん下にあります。
そこまではあんまり関係のない世間話が続きますので、必要に応じて飛ばしてくださいね。
ご参考までに。
【YUKI事件】
音楽は割と積極的に聴く方なのですが、音楽界というのは広範なもので、いまだに詳しくないジャンルや分野がたくさんあります。
それでも90年代〜00年代の邦楽についてはある程度分かっていると思い込んでいたのですが、つい先日とんでもない「灯台下暗し」があったことが判明しました。
YUKI。
言わずと知れたガールズ・ポップの大家ですね。
パッと思い出せなかったとしても、「メランコリニスタ」「ふがいないや」「星屑サンセット」あたりを聴けばすぐにピンとくるんじゃないか、というレベルで有名。
YUKIさんのことはもちろん認識していて、前述3曲がヒットを飛ばしていたころにアルバムを買おうかな〜どうしようかな〜位には興味があったのですが、当時は限られたお小遣いをやりくりして厳選したアルバムを手に入れる質素な日々を送っておりまして……。たしか復帰した椎名林檎の音源と天秤にかけた結果選ばなかったような気がする。
で、興味はあるのにきちんと聴かなかった心残りがあってか、最近(といっても一年前から)ようやくApple Musicで解禁されたYUKIさんの音源を貪るように聴いていたわけです。
朝晩問わずヘビロテしているとなんかもう何の根拠も事実もなく自分が恋や自意識に悩むティーンエイジ・ガールズの一員にでもなったかのような錯覚を得られますね! ワーイ!
この大人怖い!
※具体的に言うとプレイリスト「はじめてのYUKI」をヘビロテしてました。
話は逸れるけどApple Musicの「はじめての〜」シリーズってほんとイイとこ押さえてきますよね。助かってます。
ボヘミアン・ラプソディ(映画)から入ったにわかQUEENファンを導いてくれたのは「はじめてのQUEEN」でした。
話を戻そう。別に大した話ではないのだけども。
とりあえずもっと深く知ろうかな、と気が向いたときの強い味方といえばWikipedia。
深く知っているアーティストでも記事を読むと新たな発見があったりして楽しい。編者の主観が混ざっているって意味でも読んでて面白いんですよね。
といった経緯で、ほんの数日前、はじめてYUKIさんのWikipediaを覗いてみたんですよ。何か面白いエピソードでも載ってないかな〜程度の軽い気持ちで。
以下Wikipediaより引用:
YUKI(ユキ、1972年〈昭和47年〉2月17日 - )は、日本の女性歌手。JUDY AND MARYの元ボーカリスト。
へ〜。
……。
…………。
YUKIさんってJUDY AND MARYのボーカルだったんですか!?!?!?!?!?!?!?!?
いや、その……
なんでそれを知らなかったんですか!?!?!?!?!?!?!?(自問)
はい。
恐ろしいことに知りませんでした。
もう完全にモグリですよ私。音楽ファンなどと冒頭で言いましたけど、こんな基礎の基礎を知らなかったなんて言ったらモグリとしか思われませんよ本当。現に私自身が己を疑い始めましたもの。もう……こんな……ホント……何故か知らなかった……。
だって「メランコリニスタ」歌ってるひとが「そばかす」歌ってたなんて思わないじゃないですか!?!?!?!?
この二曲の間にどれだけ時が流れていると思いますか!?
十年だぞ十年!!
でも改めて聴くと当然、声質は一緒なんですよね……音楽の方向性はやや違うけど……。
お恥ずかしながらJUDY AND MARYに関しては「一人で歌ってるっぽいけどMARYさんはどこ行ったんだろうな」くらいの考えでいました。
一人だよ。YUKIさんだけだよ。JUDYさんではないよボーカル。
ちなみにJUDY AND MARYの名付けは『快活でポジティヴな女のコ“ジュディ”とすこしひねくれ者のネガティヴな女のコ“マリー”という女の子の二面性を表しており、それがそのままYUKI自身に当てはまる(Wikipediaそのまま引用)』とのこと。
驚愕! JUDYさんもMARYさんも実在しなかった!
(※今思えばあたりまえ)
「椎名林檎って東京事変のボーカルだったの?」と同等の無知。コトの重大さに笑いしか出ませんね。
奇跡的に知らなかったからこそ今になってこんな驚きに見舞われている、と考えれば貴重な体験かもしれません。
アホ話としてここに晒しておきます。
一笑に付していただければ幸い。
【山下達郎のレシピ】
ここからは別の話。
まずはこちらの動画をご覧ください。
相変わらずこの兄弟は愉快だなぁ、というのは置いておいて。
問題は動画末尾で使われているセンチメンタルなナンバー。
♪あなたはムーンライト シャインブライト 目立つひとじゃないけど……
気になる曲って歌詞を覚えてググって音源を探しません?
私はよくやります。で、この曲もビビッときた(古い)ので慌てて検索してみたんですよ。
結果、八神純子さんの「カシミヤのほほえみ」という曲のワンフレーズであることが分かりました。
……ん? 待てよ。八神純子さんの曲にしては声が低い。まるで山下達郎さんがカバーしているようだ。
「カシミヤのほほえみ カバー」で検索してみる。
出てこない。
……驚くほど何も引っかからない。
試しに音源を母に聞かせてみる。「達郎だと思うんだけど……」と自信なさげながらも追い風。
山下達郎さんの公式ページで検索(Ctrl+F)してみる。
出てこない。
しかしGoogle検索のサジェストには「カシミヤのほほえみ 山下達郎」などが出てくる。多分みんな似たような袋小路に迷い込んでいるんだろう。
分かる。分かるよ。YouTubeにアップロードされた動画にも尋ね曲、詳細求ムってコメントがついている。
なんならTwitterでも迷子になって泣いているらしい人らをチラホラ見かける。
妙な話です。カバーしているのなら何かしらの情報が絶対に転がっているはず。しかし山下達郎さんじゃないにしろ、この曲がカバーされたという事実自体が見つからないのはどういうことか?
いよいよお手上げだ。捜索班(単独)に諦めのムードが満ちた──
改めて聴いてみる。
原曲はアップテンポなシティ・ポップなのにこっちのカバー? はスローなミックスになっていることでよりメロウな味わいを醸し出していることだなあ(詠嘆)。
……スロー?
八神純子さんの「カシミヤのほほえみ」のカバー音源を探す皆様方への処方箋です。あるいは山下達郎さん(偽)の作り方解説動画。 pic.twitter.com/NE821fPGTb
— 佐々川トタン (@tarte_tutan) 2021年2月14日
カバーじゃなくて『原曲×再生速度80%』じゃないですか!! やってくれたな!!!
気付いたとき尋常じゃなく嬉しかったです。
なんせ二三週間ずっと引っかかってたので。
つきましては検証結果です。
結論:八神純子×再生速度80%=山下達郎(偽)
そういえばこの音源を使ってた電八さんは音楽やってる人だって言ってたな……しかもヒップホップ方面。
ならサンプリングも加工もお家芸って訳ですね。
すっかりしてやられました。
という訳で、各地に彷徨っているカバー音源迷子の皆さまにどれだけ届くか分かりませんが、真相は「カシミヤのほほえみをカバーした人はいない」「動画では原曲を加工して使ってる」ということをお伝えいたします。
あまりの衝撃に私は八神純子『COMMUNICATION』と山下達郎『OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜』を衝動買いしました。
山下達郎さんは本件に関して完全にとばっちり(?)です。
ベストアルバム買ったので何卒お許し願いたい。
いやあ、この件も元から山下達郎さんについて詳しければ「アレ? カバーしてないよね?」と気付けたんでしょうが、なまじ声だけ分かるぶん、すっかり思い込みに振り回されてしまいました。
知らなかったために散々ネットを探し回ったり、ずっと触ってなかった動画ソフトを使う羽目になったり、ずいぶん引っ搔き回されたものです。
真相が分かってよかった。
無知ゆえに上を下への大騒ぎになった話でした。
これに懲りずに、気の向くまま音楽を学んでゆきたいものですね(綺麗にまとめようとしている)。
それではまた次の日曜に。