週報タルトトタン

よく寝て、よく食べ、日曜ものかき。

#042 業原一族の話、終幕


 先々々週(#039)、先々週(#040)、先週(#041)に引き続き、俺の一族の話を聞いていってくれ。

 PSP俺の屍を越えてゆけR」のプレイ記録を振り返りながら色々と語る記事、最終回です。
 当時のプレイ記を読み返すほどに思い出が次から次へと蘇ってきて、ついつい長く書き連ねてしまう一族記ですが、今週は十代目から十二代目・最終当主まで一気に駆け抜けて一区切りとしましょう。
 前回の記事では、高位の神々と子を成したものの戦力が安定せず、もう二~三代ほど代を重ねないと朱点に太刀打ちできないと悟った九代目までをご紹介しました。
 今回は神様の位を少し下げ、戦力を練り直す十代目世代からのお話です。

 

 なお、当時のプレイ方針は、
  ・どっぷり固定
  ・初代×初期女神様の4家系を維持する
  ・名前は男子を各家系ごとに「○道/継/実/正」、女子を「お○」とする
 としていました。
 いちおう一人一柱の縛りも無意識に課していたみたいです。

 

 それでは、十代目世代から続けましょう。
 相変わらず最初から最後まで感情移入と妄想がたっぷり入ったトッポな記事です。
 あしからず。

 

 俺の屍を越えてゆけ 家系図ジェネレータ(Ver.2.7.2)をお借りして家系図を作ったので、よければこちらもご覧ください。
 

oreshika.net
 (一度ログアウトしたら編集できなくなってしまいました……若干のミスがあるかもしれませんがご容赦を)

 

 

 

 

【十代目、臥薪嘗胆】

f:id:tarte-tutan:20210613162343j:plain [重道] 愛称:昼行灯
 十代目当主、剣士。お時、滝登り金太の息子。

f:id:tarte-tutan:20210613162346j:plain [お発] 得意:食いだめ
 継流、槍使い。お蘭、嘗祭り露彦の娘。

f:id:tarte-tutan:20210613162349j:plain [お恵] 悩み:吹き出物
 実流、拳法家。典実、吉焼天摩利の娘。

f:id:tarte-tutan:20210613162433j:plain [克正] 来世は:ヒバリ
 正流、薙刀士。貞正、上諏訪竜穂の息子。

f:id:tarte-tutan:20210613162437j:plain [敦宗] 愛称:魔王
 宗流、大筒士。貞宗敦賀ノ真名姫の息子。

 

 さて、先代の九代目・お時の時代に「戦力が不足しているため、このまま最高位の神々と成した子を最終世代とするのは危険である」と判断し、地獄巡りへまっしぐらだった歩みを一度止めることにした業原一族。
 彼らの親神様をざっと見てみても、最終メンバーとして想定されていないことが見て取れます。
 どっぷりモード固定だったためか、素質の引きが安定せず、欠けてしまった部分の素質が大幅に足を引っ張り出撃メンバーとして安心して送り出せない……という子がチラホラ出てきていた九代目世代。十代目・重道の世代はその「素質の欠け」を出来るだけ埋めるべく、準高位くらいの神々の助力を得て素質の底上げをしようと画策した世代です。
 では彼らは一族の悲願のための捨て石となってしまうのか……と思いきやそうではなく、奉納点稼ぎの傍らで迷宮を彷徨う鬼と化した神々を次々と解放して回り、いわば天界に顔が利くメンバーとなりました。

 十代目・重道は技と体の火が光っていたため、初代以来の男剣士当主に任命されました。
 あの三~四代目世代と因縁深い博龍丸と剛剣男山を携えて各迷宮の親玉たちを次々と解放してゆく様は、誕生当初の控えめな印象を180°覆してくれました。
 彼が最後の出陣で解放したのは片羽ノお業様で、その時点で親玉級は白骨城の捨丸を残すのみ。そこまでに打倒数を稼いだのは先人たちの努力とはいえ、迷宮の小物鬼や親玉の解放は、彼らが最終世代となっていたとしたら成せなかったことです。私自身のプレイ方針から導き出された「後出し」のキャラ付けではありますが、昼行灯と呼ばれて愛される重道の仁というか、人柄というか、そういうものが戦績の合間から見えてくるようで思い出深いです。
 彼の遺言が「イツ花、お前だったのか… 最後までありがとうよ」だったのは、展開最高神が看取りに来たのではないかと勘ぐってしまうような引きで、どうにもドラマを感じてしまいます。

 この世代の一族たちは一点特化の素質を持っていて、役割分担が比較的はっきりしていました。

 お発は激しすぎる気性の母・お蘭に心の水を適切に足したような子。防御が硬く、技も全分野安定していたため、非常に安定した槍術師となってくれました。
 技の土がピカイチだったので、石猿係を早いうちから担い、さらに崇良親王から賜った(ぶんどった)巨人針がぴったりフィットして誰も止められない黒ズズ串刺しマシーンと化しました。
 彼女がいたからこそ、奉納点控えめの十代目世代が安定して戦えた。着実に戦力を底上げしてくれた見事な槍の使い手でした。

 お恵は父・典実譲りの心、あと体の水を受け継いだ子。つまり体力が伸び悩み、拳法家の回避頼りになるギャンブルな戦い方をしていました。体の火はいつまでも伸び続け、典型的な「高火力紙装甲」の娘でした。一撃で落ちる危険を恐れてあまり出撃させてあげられず、一族の中でも長寿(2歳)だった彼女の遺した言葉が「まだやり残したことがある」なのはあまりに切実でやりきれない。

 克正はお恵とは正反対で、体力には恵まれましたが火力は伸びなかった薙刀士。梵ピン・石猿を両方使えたため、適宜仲間を庇いながら術でサポートする器用な戦い方をしてくれました。
 回復や補助術などの進言が多く、隊長と以心伝心で戦った「補う役の男」という印象があります。
 特に髪討伐も終わった終盤は薙刀の火力が物足りなくなるため、次世代の奥義継承を見越していたとはいえ、彼には他の職業をさせてあげたほうがもしかしたら輝いていたのだろうか……などと今になって思います。踊り屋とか良かったかもしれない。似合うかは別として。

 敦宗は愛称のインパクトが物凄かったため、彼が何かをするにつけ「お~い魔王~~」などと冷やかしていた記憶があります。当時のメモには「背丈があるため何をしても威厳を感じられるという不思議な特性があるが、本人はいたって普通に振舞っているだけである」とありました。
 前代で五家系に増やしたことでこの世代で業原家のキャパシティがついに満員になり、イツ花の満員警告セリフで「あまりの狭さに、敦宗様なんて立ったまま寝る練習を始めましたよ」などとホラを吹かれて弄られたのは絶妙な引きでした。
 魔王なのに一人だけ三桁ダメージを食らう。魔王陣を覚えられない。留守番を頼むとすぐに拗ねる。前線に出たがって却下される。
 見た目は美大夫で愛称も魔王なのに、どこか抜けた愛嬌のある奴でした。

 

 こんな具合で、十代目はただ足踏みするだけではなく有意義な寄り道にも手を出した世代でありました。
 また、そこまで厳格には定めていなかったつもりが「交神は一人一柱の原則」が結果としてここまで守られてしまったため、それならば最後まで貫き通そうということで、次世代に最高位の神々を譲るべく業原家の氏神たちの助力を仰ぎました。
 氏神たちが持っていた素質の中には「優良だったものの失われてしまった遺伝子」が数多く存在したため、奉納点を抑えつつ全盛期の力を再興させようと画策した……いうのも動機の一つでした。

 

 

【十一世代、見えてきた光明】

 

f:id:tarte-tutan:20210613162440j:plain [お鈴] 悪癖:負け惜しみ
 十一代目当主、踊り屋。重道、冬衣ノ業原(お蘭)の娘。

f:id:tarte-tutan:20210613162443j:plain [お滝] 悩み:くしゃみ
 継流、槍使い。お発、業原大聖(貞正)の娘。

f:id:tarte-tutan:20210613162446j:plain [お巽] 悩み:吹き出物
 実流、拳法家。お恵、業原八千矛(貞宗)の娘。

f:id:tarte-tutan:20210613162449j:plain [お静] 得意:逆立ち歩き
 正流、薙刀士。克正、守護星業原(お天)の娘。

f:id:tarte-tutan:20210613162452j:plain [誠宗] 風評:千三つ
 宗流、大筒士。敦宗、業原御珠姫(お時)の息子。

 

 十一代目は、当家の氏神たちの助力を得て、一族最盛期の力を再興し戦況を立て直すべく生み出された世代です。
 できることなら彼らで地獄巡りの最奥まで踏破し、朱点を討ち果たしたい……と願って、時に養老水でゴリ押ししたりの強硬手段にも打って出たがむしゃらな世代でもあります。
 十一代目・お鈴は“あの”お蘭そのものの心素質を受け継いで、いかにも「この代でなんとかしてやる」と言わんばかりの負けん気に満ちた子でした。さらに全ての技が高水準だったため、三代目・お紅や九代目・お時の遺言になぞらえて初の踊り屋当主が誕生しました。
 このお鈴ちゃんが本当に頼もしくて、端々から見えてくる生き様があまりに逞しくて、プレイヤーの方が彼女に救われるなんてこともありました。豪放磊落な八代目・お天の玄孫で、気性の激しい冬衣ノ業原の娘で、四代目と八代目の悲願の踊り屋で、最高神に看取られた十代目の娘。これ以上ないほどのドラマを体現する娘です。
 編み出した奥義が「台風鈴号」。邪魔な鬼はすっこんでろと言わんばかりの勢いがある。
 妹二人を地獄巡りで失いかける事件が発生した際、帰還後の一族全員の忠誠が100だったことをよく覚えています。飛びぬけたスター性を持っていただけにソロプレイヤーな印象の強い当主でしたが、その事件を境に「世代を引っ張る当主」の色が出てきたように思います。
 十二代目まである、と予め言及していたとおり、彼女は(最終当主の器ではあったものの)全神様の解放を終えたのちに一族史の舞台から降ります。
 その際の最後の言葉が「よそ様を さげすむことも うらやむことも なかった… あたしは、あたしだ」だったのが余りにも彼女らしい言い様で、○ボタンを押せずにしばらく呆然としていた覚えがあります。
 お鈴は最後までお鈴として踊り抜いてくれた。それが最終当主にしてあげられなかったと悔やむプレイヤーにとっての救いです。


 お滝は盤石娘のお発、毒舌野郎の氏神・貞正とのお子。母・お発の最後の出陣で託された名槍雫石をブン回し、唯一の卑弥子使いとして地獄巡りを駆けずり回った“壁の女傑”でした。
 あと非常に個人的な事情ですが、この顔グラがベスト3に入るくらい好きな+女槍使いがカッコよくて好きということで、大技が決まるたびにキャッキャしてました。出撃メンバーとして贔屓していたとかは特にないのですが。
 彼女もお鈴と同じく最終出撃メンバーの器ではあったのですが、頭数が揃わなかったために次代へ託すこととなりました。素質や実績としてはもはや神に等しい実力を持っていましたが、そんな彼女が「人としての意地は貫いた」と遺し、人として絶えていったのは、業原家の通底のテーマである『人として在れ』に回帰するようで、私としては偶然でなく必然に見えました。

 典実、お恵と虚弱体質が続いた実流ですが、氏神貞宗の血をもってしてもお巽の代での再興は叶いませんでした。とはいえ地獄巡りの攻略が急務であるために、彼女には無茶な行軍を強いることとなり、もう少し底上げしてやれなかったかと今でも悔やまれます。
 メモに残る彼女の戦績は一言で言えば「傷だらけ」です。養老水の蓄えに頼って六度の死地を潜り抜け、卓越した技の水をもって昇龍の爪を振り回し、茨城大将の攻撃を既の所で回避し、はやり病に罹り、帰京した後は妹のお静と共に女神丁香酒を呷る(酒は苦手)。そんな日々。
 実流の祖である俊実も度々死地を経験しましたが、場数で言えば彼女が最多です。時間がないからと無理をさせてしまった。本当に申し訳ないことをした。
 彼女は「大事なもんを守るためなら、人は神にも鬼にもなれる」と言い残し、十番目の氏神、風神・白鳥ノ業原となりました。
 歴代で最も厳しい戦地に身を置いたその辛苦が最終的に昇華されたようで、少しでも彼女自身が救われたなら幸いだと願った当時でありました。

 

 

 顔グラ画像から分かるように、お巽ちゃんまでが短命の呪いに倒れた一族です。
 ここからは、呪いを解いて人としての生を手に入れた子たちです。

 

 

 お静は、体素質が盤石だったものの、技が軒並み低かった(誇張抜きで壊滅的だった)ために敵の術に滅法弱く、出陣しては死地を経験して女神丁香酒を呷り、酒の味を覚え、あとはお巽と交代で留守番をする……というような生活を送っていました。
 お巽・お静と力不足が続いたために十一代目での朱点打倒を諦めたという事情です。この世代における打たれ弱さは洒落にならない。
 そんな背景(力不足+飲酒癖)もあって、八代目・女傑お天の娘とは思えない「自暴自棄の留守番娘」なキャラ付けが成されました。
 もしかしたら「もう定めのままに逝かせてくれ」位のことは思っていたかもしれませんが(すまない……)、彼女の娘であるお松があまりに活発ガールだったため、当主含めた「お静ぜってえ助ける」ムードが醸成され、彼女の健康度が下がりかけた月に修羅の塔の最上階まで駆け上がる運びとなりました。

 最終出撃直前のメモより:
 自分が死ぬ前に呪いが解けようが解けまいが、どちらでもいいと思っている。ただ、娘が泣いたら手がつけられないだろうことは心残り。
 思いつめた顔で大荷物を背負って地獄巡りへ出陣する弟妹、そして娘を見て定めのままに死なせてくれないことを察する。酒は呑む。

 

 誠宗は「通称・魔王の倅」「名当主・九代目お時の血を継ぐ者」「千三つとの風評」「穴のない素質」ときた“数え役満の男”で、彼が来訪した時、ついに最終世代が始まったと実感したのを覚えています。
 来訪当時の業原家は増築を提案されるほどの大所帯で、そんな中で千三つだ何だとつつかれながら育てられたため、正流・宗流が代々担ってきた当主の指導役としての下地は十分に育っていたのではないかと妄想しています。
 十二代目・お節の爆走に唯一並走できていたのが誠宗でした。史上二人目の大照天使いとなり、また充実した技ステータスをもって各種散弾を使いこなし、業原家の大筒士は彼で大成したといっていいでしょう。
 文句なしの最終出撃メンバーだったのですが、万が一の事態に備えて、彼も交神し十二世代ラストの子を成します。詳しくは後述しますが、名を永宗といい、最終出撃時には出撃隊にすら入れない0歳1ヵ月のほんの子供でした。
 大筒士を継いだ息子に血生臭い初陣を経験させぬようカタをつける、というのが彼の最終出撃のテーマです。

 最終出撃直前のメモより:
 いつ果てるとも分からぬ身、息子が戦場に出る前に朱点を討つことを密かに心に決める。
 亡くなっていった父や兄姉たちに叩いた大口、自分が朱点を討つという約束を果たすべく、お節に伴い地獄巡りへ乗り込む。

 

 

【十二世代、最後の戦い】

 

f:id:tarte-tutan:20210613162455j:plain [お節] 口癖:なるはやで
 十二代目当主、踊り屋。重道、お鈴、日光天トキの娘。

f:id:tarte-tutan:20210613162458j:plain [豊継] 趣味:雲を眺める
 継流、槍使い。お滝と雷王獅子丸の息子。

f:id:tarte-tutan:20210613162501j:plain [泰実] 日課:瞑想
 実流、拳法家。お巽、氷ノ皇子の息子。

f:id:tarte-tutan:20210613162504j:plain [お松] 愛称:ひょっとこ
 正流、薙刀士。お静、黄黒天吠丸の娘。

f:id:tarte-tutan:20210613162507j:plain [永宗] 好物:お粥
 宗流、大筒士。誠宗、太照天夕子の息子。

 

 ここにきて「将来の夢は当主になること」と宣言する当主筋の娘が業原家へやってきました。
 お節。当家の最終当主です。
 という訳で、この十二代目世代が業原家における最終世代となります。
 長かった。ここまで本当に長かった……。

 親神様も最高位の神々を選び、武器もそろえ、鬼神も全員解放し、後顧の憂いを経った一族。もうこれですべてを終わりにしようと決意するプレイヤーの前にあらわれたのが、将来は当主になりたいと来訪一番に宣言し、口癖が「なるはやで」で、心の土だけが見事に欠けた=堪え性のない娘、お節でした。「分かった、じゃあ早く終わらせよう」と言わんばかりの出来すぎた流れだと思いませんか?
 お節ちゃんはお鈴以上の天才児で、初陣後に60種近くの術を覚え、0歳5カ月で奥義をすべて完成させ、初の大照天使いとなる目覚ましいスターぶりを見せつけてくれました。
 何でもかんでもスパッ、スパッと決着をつけてしまうため、即断即決&竹を割ったような豪傑という印象があります。
 お鈴の代ではギリギリ成せなかった悲願達成をできる限り早く成すべく邁進し、お静の健康度が傾いた瞬間「ここで決めよう」と新年早々(1033年1月)立ち上がります。
 ちなみに、彼女の名は音楽の「節回し」と一族の戦いの「節目」、あと竹の「節」の三つの意味を込めて付けています。
 呼び方も「おセッちゃん」と親しみを込めて呼びやすくて気に入っていたりします。

 最終出撃直前のメモより:
 兄の寿命、そして弟妹たちの成長を見て、自分たちの代で十分に悲願を果たせると判断した。
 善は急げとばかりに新年早々、家にある薬を飲み尽くして地獄巡りへ乗り込む。迷いはない。

 

 豊継。この顔グラが出てくると「どこから隔世遺伝した……?」とドキドキしてしまいますね。当時のメモ曰く「継流お家芸の何考えてるか分からない男筆頭」とされています。
 見た目がゆるキャラ的でかわいいため、一族の女性陣からやけに可愛がられ鷹揚な性格に育ったという設定持ちです。誠宗やお節ほどではないにしろ、必要な能力はしっかりと伸び、またドーピングにより三番目の大照天使いとなったため、最終出陣メンバーに抜擢されました。
 見た目はどう見ても河童+餅+鯰ですが、ここまで長く一族と向き合っていると「髪型は父神様のたてがみっぽい」「髪色と器のデカさは母上っぽい」のように共通点を見いだせて面白いですね。
 名前は、朱点打倒後も豊かに暮らせるようにという祈りを込めて付けています。

 最終出撃直前のメモより:
 これから一族が人として生きてゆくため、自分が力になれるのならば何だってするという心意義。
 お節に勧められるままに薬をがぶ飲みし、一族そして母の仇である朱点を討つため出陣する。

 

 泰実は父神様にそっくりの美大夫なのが運命的。日課が瞑想だったため、今までの「体を張る拳法家」のイメージとは打って変わって「修行者」の存在感のある子です。
 出陣時に妹が怪我を負うとダメージを遥かに上回る回復量の壱与姫を進言するなど、家族の痛みには人一倍敏感なところが「心」で戦う修行僧的で彼らしい。
 また実流悲願の体の水復活をついに成し遂げ、体力はどんどん伸びていったのが本当に頼もしかった。十代目・重道が氷ノ皇子様を解放したのがここにきて効いてきたという……。
 しかし、泰実は最終出撃隊に選ばれず、お静の娘お松にその役を譲ることになります。
 先述のとおり最終出撃隊は隊長お節、誠宗、豊継までは確定していて、あとは泰実とお松のいずれを選ぶか……というところでかなり迷いました。

 最終的に、
  ・候補の二人のどちらが「最終出撃の留守番」という重圧に耐えられるのか
  ・そもそもお静を救おう! となったきっかけは娘であるお松のもので、その彼女を最終メンバーに入れずして話が成り立つのか
  ・八ツ髪に走竜の薙刀が効く
 を加味した結果、日頃から心身を鍛えぬいている泰実に家に残ってもらい、お静と永宗のお守りをお願いすることにしました。
 五人出撃できれば言うことはなかった。おのれシステム上の制約。

 なお、彼の名前は「心が安泰であれ」という意味合いを込めて泰の字を入れています。

 最終出撃直前のメモより:
 朱点打倒出陣隊に加われなかったため、胸の内に葛藤を抱えるが、呑んだくれの姉、生まれたばかりの弟を思い留守番にも意義を見出す。
 普段通り、瞑想と修行を繰り返しながら戦果の報告を待つ。氏神となった母に必勝祈願をする。

 

 お松は、戦いに貢献できなかったお静にとっての待望の“戦える子”。そのため「待つ」の音を取って松と名付けられました。
 すべての火の素質が高く、勝気な顔立ちと「すぐむくれる」の喩えのような愛称から、超絶騒がし女子なイメージがあります。つまり脳筋。業原家の薙刀女子は総じて脳筋
 そんなパワフルさから「母上が死んじゃうのは嫌だ!!」と聞こえてくるようで、それを受けた十二代目・お節が「よしじゃあ行ってこよう、地獄」と即決し、お守り役の誠宗が慌てて後に続き、弟分の豊継がのしのしと続き、三男坊役の泰実が家の守りを引き受け……というストーリーが組み上がってゆきました。
 彼女は一族史の上では(年少組であるため)あまり語ることは多くありませんが、決定打を作り出したという点においてはエースと言ってもいいかもしれません。

 最終出撃直前のメモより:
 戦うことは大好きなので、最終出撃メンバーに加われたことに大喜び。自暴自棄な母のため戦う。
 今から悲願達成した後の人生のことを考えている。気が早い。

 

 永宗。誠宗の息子で、まだ出撃もできない最年少者。
 彼に関しては、「俺の屍を越えてゆけリメイク」という作品上でほとんど描写されない=プレイヤーが関わった時間があまりに短いためここで語ることは多くありませんが、クリア後の人の生という意味では最も長く時間の残された子ということができますね。
 誰を失うこともなく、呪いとは何かを真に理解することなく、ただの人間の子供としての人生を与えられた彼の“この先”の物語こそ悲願達成の何よりの証なのだと思います。
 (なんかいいこと言おうとしてる)

 最終出撃直前のメモより:
 父が思いつめた顔で家を出て行くところを見て、只ならぬことが起こっているということは察する。
 お静に稽古をつけてもらいながら、泰実と一緒に氏神たちに祈りを捧げる。イツ花から台所の仕事を教わる。

 

 

 最後、阿朱羅を討ち果たした後の大照天昼子からの「水に流していただけますね?」という問いに対し、我が最終当主お節は「忘れることができるのも人だ」と了承し、一族の呪いを解く。
 こうして業原元八とその子孫にかけられた二つの呪いは解かれ、六人はそれぞれの道を歩み始めたとさ──。

 

【業原一族 定めに抗うものたち 了】

 

 

 終わりました。
 軽い気持ちで始めた一族記振り返りがここまでの長さになるとは思いもしませんでした。
 正直、もっと細部とか思い入れとかを忘れてしまっているもんだと思っていたので、世代ごとにこれほどのボリュームになるとは想定しておらず、結果として四週に渡って思い出語りをすることに。
 当時作ろうとして断念した家系図も改めて作るとは一週目の当初は思いもしませんでした。まさかVitaからスクショを吸いだして画像加工する羽目になろうとは……。

 

 こうして事細かに、ときに妄想を交えてメモを残しながらプレイする俺屍は、プレイヤーに唯一無二の体験をもたらしますね。
 なによりちょっとした乱数の組み合わせで生まれてゆく一族たちの歴史を想像で補いながら読み解くことで、細部に命を吹き込まれてゆくのが興味深い。
 興味深い……と表現するのもちょっと躊躇うくらい。ここまでくるとプレイヤーはもはや「物語を読む側」ではなく「一族の観測役としての当事者」として巻き込まれるため、一族を架空の存在のように扱えなくなってきますね。
 というか生きてる。生きてたと思うんですよ。我が業原一族は。
 この四本のブログ記事だけでは語り切れなかった実際の出来事も大量にあるのですが(当時のメモを全部打ち出すととんでもない量になると思われる)、これら一つ一つが各々の人格を織り成しているんです。本当ですって。

 

 ちなみに、一族の後日談もちょっとだけ考えていたりします。

 【お節】
 業原家の“後片付け”を済ませた後、家財は他の一族にすべて分配し、旅芸人に転身。京を出る。
 踊り屋の扇を手放すことはしなかった。
 その後の行方は諸説あるが、各地に残る女旅芸人の逸話は演劇や歌として長く語り継がれ、親しまれている。

 【豊継】
 業原家の財産を元手に商いをはじめる。実質の家督は彼が継いだ。
 本人の商才に加え、見た目の景気の良さから「生ける福の神」として親しまれ、彼の姿は後世にも商売繁盛の神として伝わっている。

 【泰実】
 徒手空拳の流派、実流を興す。
 彼の道場は身体だけでなく精神をも鍛えるとして、虚弱な者にも門戸が広く開かれた。
 のちに実流は格闘技ではなく仏教の一宗派として伝わることとなる。

 【お松・お静】
 丈夫な体が取り柄であると言って憚らないお松は、京の農民に加わり農業に勤しむ。
 火の神の加護か、はたまた彼女の陽気さにあてられてか、日照に恵まれた作物はすくすくと育ち、京の食糧事情は劇的に改善したといわれる。
 母であるお静は娘の様子を眺めつつ、お天の世話になった京の住人からの贈り物で酒には困らない暮らしをしたという。

 【誠宗・永宗】
 十二代目当主に後を任された誠宗は、継流、実流、正流の世話を焼いて回り、時には相談を受けたりしながら業原家で日々を過ごしていた。
 彼の息子永宗は生涯大筒を鬼に向けることなく、京の飯屋の主人として身を立てた。
 なお、その飯屋の後ろ盾には問丸の豊継、豪農のお松が控えていたという。
 朱点打倒から十数年経ったある日、京に一人の旅芸人が立ち寄る。誠宗はその旅芸人と共に姿を消したとされるが、業原家にまつわる文献に詳細は記されていない。

 

 

 

 今度こそ本当に以上となります。
 万が一ここまで長々と付き合ってくださった方がいらっしゃったら、本当にありがとうございました。

 

 

 

 さて、来週からは何を書こうか。
 また次の日曜に。