#079 お米作って大立ち回りだ! 天穂のサクナヒメ
米は力だ!
農業シム×横スクアクションの新たな金字塔、『天穂のサクナヒメ』を先日クリアしました。
ストーリークリアまでにかかった時間は37時間。重すぎず軽すぎず、個人的にピッタリ気持ちいいボリューム感です。
久々に心の底から気持ちよく「このゲーム好き!」と言える作品に出会えたので、クリア後の若干のロス感を紛らわすべく間髪入れずに感想記事を書いていこうという次第です。
もうね、丁寧。とっても丁寧に情熱と愛情と気遣いを込めて作られたんだな、と随所から伝わってくる名作でした。
素晴らしい!
あ、ちなみにやりこみダンジョンの攻略とか、格50以上の最強米づくりとか、その辺のクリア後やりこみには手を出してません。ストーリークリアで一旦満足しちゃうタチなもので。
やりこみ派の方から見るともったいない! と思われてしまうかもしれませんが、「そんなライトな層でも十分に堪能できたよ」という観点の感想ってことでひとつ……。
ちなみにご新規さん向けの紹介になれば嬉しいので(お手頃価格ver.も出るそうですし)、ネタバレは極力しない方向で進めます。スクショも序盤の画像を選んで掲載しますのでご安心ください。
とりあえず、各構成要素を切り出して書くことにします。
様々な材料が一つの鍋にドカンドカンと放り込まれているのに、きちんと一つのおいしい料理になっているのホントに凄いと思う。
【実はかなり良質なアクションパート】
これ、これね!
開発の方の「横スクロールアクションのカメラの動かし方調整動画」なるものを見かけて、多分すごく力を入れてるんだろうな……と期待しておりましたが、もう本当にその通りの出来でした。
横スクロール視点ではありますが、大きなマップを探索していく(メトロイドヴァニア的)というよりは細かいステージを一つずつ攻略してゆく(マリオ的)のがメインになります。もちろん大きな迷路的マップもありますが、ほとんどは小~中規模だったように思います。
稲作パートと並行して進めるので、このボリュームの匙加減は素晴らしかったですね。
朝一番にパッと1ステージほど攻略して、お昼頃に一度田んぼの様子を覗きに帰り、夕方までに戻れるよう次のステージに取り掛かる……というような忙し兼業農家プレイも可能です。
個人的にこのゲームの戦闘アクションの手触りがものすごく好きで好きで……。
主人公であるサクナヒメができるアクションは、
・小武器(主に鎌)を振る
・大武器(主に鍬)を振る
・羽衣を伸ばして地形や敵を掴む
・ジャンプする
・各種戦闘スキル(稲作が進むと解放)
このくらいなのですが、これに加えて「敵・オブジェクト同士の衝突判定」「敵のダウン後の無敵時間」あたりが戦略性を加えてきて、シンプルそうな見た目とは裏腹に意外と奥深いです。
小武器は小回りが利いて手数で攻めやすいですが、敵の体制を崩しにくい上に否応なしに接近戦に持ち込むことになるので引き際が肝要。
大武器はモーションが大振りでスキが多いですが、敵の体制を崩しやすく、一気呵成に攻める糸口になります。
羽衣は最初、移動くらいにしか使えないのでは? と思っていましたが、スキルを覚えてゆくうちに「崩し」「退避」「吹き飛ばし」あたりをオールマイティにこなせる万能武器に育ってゆきました。とくに退避は重要。適当にシュッシュシュッシュ伸ばしてるだけで攻撃を避けられるよ。
スキルにもそれぞれ一長一短あり、自分好みの技を好きなように装備して、なんとなく「衝突ビルド」「空中ビルド」みたいにカスタマイズできるのも楽しかったですね。
私は胴抜打ちと飛燕と登鯉が好きでした。吹っ飛べ~!
そうそう、これも細かなスキポイントなのですが、アクションにおける演出も随所に光るところがありました。
特にヒットストップの演出。
分かる方には分かると思うのですが、GCのゼルダ風タクでプチブリンが大量に出てきたところで回転斬りすると ス パ パ パ パ パ パ パ パ ァ ァ ァ ン . . . といった具合に処理落ちして疑似ヒットストップが発生するんですよ(伝わる層どれだけいるんだろう)。私アレが大好きだったんですよね。斬撃の重さが感じられる気がして。
大武器の空中振り下ろしとか特に、ちゃんと敵にヒットした瞬間に「カッ!」と止まって見せるフレームが挟んであって、そういう“重み”をきちんと演出してくださるのは丁寧で素晴らしいなと感激しました。
胴抜打ちの連鎖衝突も似たような観点で爽快。大好き。兎鬼とか沢山出てくるところでブン回しまくりたい。
後述の稲作を雑~にやるくらいで進めれば、ちょうどいい歯ごたえの戦闘を楽しめるかと。
全く放っておくと流石に無理ゲーですけど、そんなに本気出して専業農家にならなくとも大丈夫でしたよ。
【入口はカジュアル、踏み込むとコアな稲作パート】
先に言っておきますと、稲作については先人の知恵を借りまくって進めましたので、何か役に立つ情報とかは特にご提供できませんのでご了承ください。
あくまでエンジョイ勢の意見としてお読みください。
まず、米の“格”というものが存在していて、これが主人公のおひいさまことサクナヒメのレベルに直結しています。
いい米ができて格がたくさん上がれば、連動してサクナさまも強くなる。
参考までに初年の収穫リザルト画面を持ってきました。
これが格1→5に米がレベルアップしたときの画面ですね。精米が終わるまでが米作りです。
右側の「サクナの強さ」と書いてあるのがそのまんま主人公のステータス。カッコ内の数字が今回の米のステータスアップに伴って伸びた数値です。
HPが+29、攻撃力が+36……結構ドカンと伸びているのがお分かりいただけるでしょうか。
この成長によりサクナさまの基礎ステータスが底上げされてゆき、アクションパートもグッと楽になってゆく(というか稲作をしてレベルアップしないと到底太刀打ちできない敵も出てくる)訳ですね。
なのでゲームの進行には稲作パートは必須なのですが、例えばアクションパートの方が好みで「農業なんてやってられっかい」な人でも実は大丈夫。
戦闘・稲作の難易度は別々に設定できるようになっているので、稲作だけ簡単にするなどの調整も可能(当然、逆も然り)。
私はどちらも通常難易度を選択したのですが、適当にやっていても毎年2~3は格が上がってくれるので、そんなに身構える必要はないのかなと思います。
どうやら確定で毎年1は上がるっぽいですし……多分……。
テキトーでダイジョーブダイジョーブとは言いましたが、もちろんあまり放置していると稲の状態は結構とんでもないことになってゆきます。
参考画像がこちら。
どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!
(とある広いステージの攻略に手間取ったからですけど流石に罪悪感がひどかった……)
これらをきちんと対策しておいしいお米を作ろうとすると、途端に稲作の深みに嵌ってゆくという……。
きちんとした管理を始めると本当に奥が深いことに気付きます。
私はこの大惨事↑の翌年に丸一年アクションパートを封印し、専業農家プレイに勤しみました。
それでも抑えきれないカメムシの発生……。
今なら分かる、農家の方って本当に凄いし、長い長い農業の歴史で積み重ねられてきた知見と技術って偉大なんだと……。
ちなみに、レベルアップに直接関係するのは米の格上げだけですが、通常戦闘が全くの無関係という訳でもなくて、肥料や天候操作に使う「木魄」は主に敵のドロップから得られますし、その他の素材も探索を頼ることになりますので、やはり農業と戦闘は両輪なんですよね。
着想がすごいと思います。個人的に、某イカゲー以来の衝撃。
【コミカルで王道なストーリー、愛すべきキャラたち、堅実な土台たる世界観】
THE・王道の主人公成長譚!
いやあ、王道だ王道だとは聞いていたのですが、ここまで正統派のアツいストーリーとは思ってませんでしたね。嬉しい誤算でした。
最初は甘えんぼさんで、ひょんなことから下されたお役目にもヤダヤダヤダ~! と駄々をこねてばかりだったサクナさまが、嫌々ながらも(豊穣神のサガなのか)野良仕事に勤しみ、共に暮らす人間たちの面倒を見はじめ、いつしか立派な“神様”となってゆく姿は愛おしくもあり、眩しくもあり。
役割や責任はソトから押し付けられるものでは決してなく、己が選びとって全うしてゆくものなのだと、そしてそれが他者と共に生きてゆくことなのだと、時にコミカルに時にシリアスに語りかけてくる真摯な物語でした。
年齢のせいもあってか、サクナさまよりお目付け役のじいことタマ爺に感情移入してしまって「おひいさま、なんともご立派になられて……ヨヨヨ」と目頭を何度か押さえておりました。ジジババの視点に弱いのよ……。
もちろん忘れちゃいけないのが共に暮らす人間たち。
架空のキャラクターではありますが、内面の美醜をどちらも秘めた大変「人間らしい」造形で、彼らが直面する困難や生活における相互の衝突は実に生々しく、しかしきちんとデフォルメによって和らげられてもいて、読み物としてスッと受け取れる絶妙な匙加減の描写でした。
一番の年少者である子を年上の子が辛抱たまらず叩いてしまうちょっと辛い場面から続く、とある名シーンがあるのですが、このパート、作品が描きたい「人間」を恐れず書いたキモの部分だと思ってます。
そりゃ小さい子を年長が叩いちゃうのは良くないことですけども、年長の子も辛いときがあるし、私は「ああ、どっちも辛いよなあ」と思わず頷いてしまいましたね。
悪いことは悪い、けれど人間である限りどうしても呑み下せないときもある、ならばそれを上手く受け流してやり過ごそう、いつか実りの秋は来る……とでも言いましょうか。
「生活の辛苦は極端な善悪で裁かずに、今はただ歩もう」みたいな地に足着いたしたたかさがあって、とても印象深かったです。
これらの人物描写や大小の物語を下支えする堅実な世界観も“神憑り”。
どれだけ日本史(だけじゃないな、世界史もか)、農業史、文化、宗教の知識を蓄積してきたのだろうか……。
当然、架空の物語によるものですので史実や実際の稲作、あとモノホンの神道とは異なる部分もいくらかあるかとは思いますが、基本的には細部に至るまで「いにしえの日本」を主題に緻密に統一されており、プレイする側も違和感なく進められます。安心感があるよね。
むしろ勉強になることの方が多かったかも。稲作なんか特に。
これからの田起こしシーズンから始まる今年の田園風景、見る目が変わるかもしれない。
(私も専門家レベルまで詳しいわけじゃないのでハッキリここがこうで……とアレソレ指摘できるわけじゃないのですが、そんなちょい齧りニワカでも分かる本気度ってことで……)
【期待以上に良質だった音楽】
音楽、とくに各ステージのBGMが耳に心地よかったです。アレンジアルバム買わなきゃ……。
和風テイストにきちんと纏められた各曲は、どれも流れる場面にピッタリの名曲揃いです。
第二エリア(木の領域)で流れる「谺」、クセモノ感と奥行きがあってついつい聞き入ってしまう。
11拍子? 5拍子と6拍子が交互?に来る? だか何だかの曲芸みたいな構成のはずなのに、頭にサラリと入ってくる不思議な心地よさがあります。面白いね。
ちなみに作曲をされた大嶋啓之様が、各楽曲を細かなところまで解説されていて、これまたコンセプトの読解に役立つどころか作曲技法まで踏み込んで学べる必見のコラムとなっておりますので是非に!
(ネタバレも多分に含みますので第一回にリンクを張らせていただきます)
(イチファンのブログから堂々とリンクを張るのもどうなんだろうか……不都合がありましたらお知らせください、削除いたしますので……)
【アートワークも絶品】
パッケージというかコンセプトアートというか、あの一枚絵だけで分かる“圧”、いいよね……。
特にキャラデザが好み。人物も愛嬌があって良いし、私個人としては河童ちゃんたちが超絶可愛くて大好き。描きたい。
あと割と意表を突かれたのが、横スクロールながらカメラ手前からの奥行きがバッチリ作り込まれていて、揺れるカメラの動きによって立体感が演出されているのがスッゲ~~~ってなりました(ここにきて語彙がお亡くなりに)。
操作していても、耳で聴いても、目で眺めても、いずれにしても気持ちの良いゲーム。
名作としか言いようがない……。
【絶妙に親切なバランス調整】
ここは簡潔に。
前述のとおり稲作は必須ですが、戦闘の片手間にやっていてもおひいさまはそこそこ強化されますし、全ての要素(鍛冶とか真価発揮とか)を極めなくても詰まってしまうことはないと思います。
なんなら最初の2~3年くらいはトライフォース農法(全ての肥料を常に100%にし続ける稲作手法。実のところ悪手)に手を染めていましたし、本気で稲作だけをやってた年は1年だけだったと思います。
それくらいの感覚でも戦闘は「あ~適度な歯ごたえで楽し~い」といった具合でしたし、ちょっと敵が強いなと思ったら冬の精米を待ちながら近場の大将をシバき回しておればよろしい。
あ、ただ一つ辛かったことがあるとすれば、夜にしか敵から得られないレアドロップの装備用要求数が(ゆるゲーマー目線でいうと)キツめだったのはもう少し手加減して欲しかったですかね……。
結びの木花と水分の雫、これが集まらねぇんだわ。何度デカ鹿とデカ鮭をバシバシやったことか……。
※別に集めなくても進められます。ただの装備コンプ欲のための寄り道。
37時間、12年、格37。
一通りストーリーを完走しての感想は、だいたい上記のようになります。
このブログにしては全面的好評というか、(点数制は採用してませんが)ほぼ100点満点に近いクリア後感。
久々の名作をクリアしてしまった余韻で久々にロスになりかけてます(じゃあ天返宮せえよ)(ストーリー終わるとモチベ消えるんだよ)(こればかりは個人的な問題ですゆえ)。
楽しくて、愛おしくて、心を揺さぶられる、そんな素敵なゲームでした。
ちょっと最近いろいろあって元気がなかったのですが、サクナさまをはじめとする強かな人物たちの成長物語にちょっとだけ胆力を分けてもらえた気がします。この体験は当分忘れられないな。
何度も言うけど、名作でした。世に出てきてくれてありがとう……。
そんな感じで今週はここまで。
次週は何を書こうかな。今週みたいに余裕をもって更新できれば最高だけども。
では、また次の日曜に。