めっちゃくちゃ面白かった! 『両手いっぱいに芋の花を』!
今週の記事は2022年3月10日にSwitchとSteamでリリースされたインディーズDRPGの感想、ならびにご紹介です。
私はSwitchでやりました。プレイフィールはプラットフォームで変わらないだろうから都合のいいバージョンを選べばよいと思います。
ちなみに私は「ディープなファンではないもののある程度の数はプレイしてきたかな……」というくらいのフワッとしたDRPGファンです。
思いつく限りでは、世界樹初代(DS)、デモンゲイズ(PSVITA)、魔女ノ旅団シリーズ(SwitchとPS4)あたりですね。
世界樹初代、特に第一層一階の思い出は忘れられない……。まさか雑魚のちょうちょに毒殺されるなんて、やさしいゲームに甘やかされて育ったx学生には手厳しい洗礼でした。3周くらいしたなぁ。
シリーズものは何となく食指が動かないので、できればいろんなメーカーさんからいろんなDRPGが出て欲しいなァなどと(ニッチなジャンルにおいては無茶な要求ですが)ほんのり願いながら暮らしておりました。
そこに颯爽と登場したのが『両手いっぱいに芋の花を』。以降、『芋の花』と略称で表記させていただきます。
これがね、メジャーでありがちな諸要素を大胆に切り落としてコンパクトにしつつ、面白さを損なわない絶妙な仕上がりでして、久々にダンジョンクローラーの“コア”を味わえて最高だったんですよ。
同じようにDRPGを求めて彷徨う飢えた同志のため、ネタバレ控えめの感想記事を書いてご紹介したいと考えた次第です。
(いやまあこのブログに影響力・拡散力なんてチリほどもございませんが、まあ気持ちだけはね……)
『芋の花』はいいぞ!
クリア時間は20時間。
キャラメイクで時間をとられたり(恒例)、マップをジッと眺めたり、大事をとって拠点にとんぼ返りしたりと、結構なまったり進行でこれくらいなので、上手い人なら15時間も余裕で切れるんじゃないかな。
調査隊の名前は「マッシュ隊」にしました。マッシュポテト食べたいな〜ウフフくらいの安易なノリだったのですが、舞台背景が想像していたよりずっとシビアで微妙にミスマッチだったのが逆に気に入った……おもしれー調査隊……。
【堅実で親切なダンジョン探索パート】
DRPGの芯、ダンジョンクロウルの部分ですが、「とにかく快適にするための配慮」を主眼に練って練って練り倒したんだろうな……という印象を受けました。
『芋の花』は全てシンボルエンカウントで、敵はマップに固定配置されています。世界樹のF.O.E.みたいに動き回ったりすることもありません。
ランダムエンカウントがないことで、不幸な事故が起こらない。
これは探索のリスク・リターンの駆け引きも生むので、シンボル/ランダムの方がいいということはないのですが、今作の場合は「攻めるか、退くか」の判断にランダム要素が介入しないことで却って戦略性が際立ったように思います。
ある意味ではパズル的な手触りですね。
また、撤退についてもコマンドひとつで拠点に戻れるようになってます。しかもノーコストで。アリアドネの糸(あなぬけのヒモ)が実質無料。
更に言うと、撤退の判断をしくじって全滅したとしても、デスペナルティは何もありません。ただただ、拠点に戻されるだけ。マップもアイテムも巻き戻らない。
これだけ言うと「そんなの何度もアタックしてりゃ誰でもいつかはクリアできるじゃん、つまらん」となりそうですが、駆け引きの意義はきちんと存在してるんですよ。ここが面白い。
全ての敵は固定配置かつ“拠点に帰る度に必ず復活する”ので、撤退すると同じ場所に戻るために同じ敵を倒さなければなりません。
そんなの毎度毎度やっていたら精神力(MPみたいなもの)がいくらあってもゴールに辿り着けないので、接敵せずに先へ進めるショートカットをどんどん開けていきたいところ。
『芋の花』の探索の重要なファクタは、このショートカット開通にあります。
目の前の一団を倒せば向こうの扉を開けられる、しかし調査隊の状態はギリギリだ……撤退して攻め方を変えるべきか、それともここで勝負に出るか……?
こういう風に頭を悩ませる時間、まさに「自分の意志でダンジョンを探索している」という実感が湧いてきて、気持ちが画面の中に入っていきますよね。楽しい。
また、ノーコスト帰宅をはじめ、「パーティの誰かが一人でも生き残っていれば、勝利したとき全員経験値を獲得する」や「初見殺しの理不尽なイベントがない」など、従来の作品によくある要素の大胆な撤廃も、盤上でアレコレ考えるときのノイズをなくす一助になっていたように思います。
失敗に対するペナルティ的なものがないと歯応えがない! というユーザーも一定数いるとは思いますが、個人的には余計な心配をせずにゲームのコア部分に集中できる素晴らしい設計だと感じてます。
更に全体のボリュームに関して言えば、ワンフロアが狭すぎず広すぎず、ダンジョンも多すぎず少なすぎずの絶妙な塩梅なので、飽きがくる前に壁を越えられて楽しさ長続き。うれしいね!
各ダンジョンには特定の鍵を持っていないと開けない扉が散りばめられている(そして例によって良い武器や強敵が隠されている)のですが、新しい鍵を手に入れたときのダンジョン再訪も前述の固定シンボルエンカウントとショートカット開通のおかげでスイスイ避けて進めるので、興味が冷めないうちにサクッと開きにいけるのが有難い。
【目からウロコの先読み戦闘】
ターン制RPGの戦闘としては割と珍しいシステムが採用されています。珍しいというか、多分初めて見た。
『芋の花』の戦闘では、敵のコマンド(対象や命中率も含む)が予告されます。
敵の行動を知った上でどのように動くか。守るべきか、あるいは行動される前に倒してしまうか? これを組み立てながら3人パーティのコマンドを決定してゆきます。
攻撃対象が予め分かるぶん、敵の攻撃力は強烈で、ほとんどの場合はガード必須となります。
他のRPGでは攻撃を受ける前提でノーガードの殴り合いになりがちなので、ガードを有効に使える戦闘は新鮮でした。
また、ガードするにも攻撃するにもスタミナゲージの消費が必須となるので、スタミナを回復するための「構え直し」を選択するタイミングも考える必要が出てきます。
パーティの最大人数は3人のため、1人でも落ちるとかなりの痛手です。おおかた総崩れになります。
ただし戦略によっては、あえて見捨てるのもアリだったりします。なんせ味方が1人でも生き残っていればバトルは勝ちですから。
誰が防御するか、誰を庇護するか、誰が体勢を立て直すか、あるいは誰を切り捨てるか……。
出してくる技が読めるというだけで、サイコロの振り合いからパズルゲームのような手触りに様変わりするのは興味深い。
クラスは8種類用意されており、3人パーティと考えるとどれをスタメンにするか悩ましいところですが、前・中・後衛のバランスさえ整っていれば割とどんな戦略でもクリアできそうな感じがしました。
当方は補助・回復役までアタッカーとして火力を期待してしまったりするゴリ押しプレイヤーですが(世界樹初代の殴りメディック好きだった)、『芋の花』では前衛ナイトが陽動と防御に徹し、中衛レンジャーが補助・回復・妨害に奔走し、後衛ウィザードの魔法をメイン火力として頼る……という体制で安定した運用ができており、役割分担のピースがピタッと嵌った感じがとても美しかったですね(プレイの自画自賛ではなく、役割分担を自然と持たせるように組まれたシステムが素晴らしいという意味で)。
ご参考までに私の組んだマッシュ隊のメンバーをご紹介します。
終盤装備が載ったスクショのため、ネタバレが気になる方はフワーッと飛ばしてやってください。
《ナイト》のシド。ガチガチの壁役。
口上スキルでヘイトを集めてからの炎の壁ガードで敵を一掃できたときの爽快感たるや!
またチュートリアルでガードの重要性を教えてくれた庇護スキルも中盤から最終盤まで使い倒しました。
攻撃系の技能はほとんど振らなかったので、火力を捨ててメンバーの生存率を上げる方に特化した感じになりました。
盾役でひたすらダメージを負っていくので、HPを盛りつつ被回復量アップのスキルも取得し、隊の不沈艦と化しました。心強い!
《レンジャー》のラナ。サブアタッカーになるかと思いきや万能ガールに成長。
最初は3人パーティの手数の少なさに心許なさを覚えて召喚系に技能ポイントを振ったのですが、中盤に差し掛かって回復スキルが必要となり復活・回復役に。
さらにガード封じスキル、火矢・毒矢による削り、最速のトドメなどなど、とにかくパーティに足りない部分を補ってまわるのに大忙しなキャラでした。
この子も火力が出ないかと思いきや、生物2倍弓の登場により意外なダメージソースとしても頭角を表しました。
序盤は器用貧乏でクラス選びに失敗したかと思いましたが、終盤にはどの役回りもソツなくこなすようになっていたので、たぶん大器晩成型のクラス。
《ウィザード》のニコ。最強のメイン火力。
なんとなく、RPGの魔法職はサブ火力的な印象を抱いているのですが、『芋の花』においては魔法攻撃の火力がバフなし物理攻撃の倍以上ありまして(弱点属性を突ければ倍率ドンさらに倍)、特にボス戦においては主要なダメージソースとして大活躍していただきました。
特に近接攻撃を仕掛けてきた敵にダメージを返す「炎の壁」が序盤だとアホみたいに強くて、これで雑魚敵を一掃できたときの快感たるや筆舌に尽くし難い……。
精神力もスキルを積めばぐんぐん伸びてゆくので、探索が長引いても息切れしない。強い。
物理バフを持っているクラスを使っていたらまた違った印象だったのかもしれませんね。
《シャーマン》のテテ。ベンチ要員。
控えメンバーにも経験値が入るのか確かめたくて作った子です(結局控えには入らない仕様のため初期レベルのまま)。
メインパーティの経験値をバラつかせたくなかったため、最後まで戦闘には連れていきませんでした。
たぶん出陣のたびにメンバーへおまじないをしてあげたんだろうなぁ……と脳内補完してました。かわいいね。
【名前のない“誰か”たちの物語】
DRPGにそこまでシナリオは求めておらず、なんならキャラクリエイトとダンジョンクロウルさえしっかりしていれば何でもいいよ位に考えているのですが(問題発言)、予想以上に作中世界の作り込みとメインシナリオが良くて意表を突かれました。
まず、この物語において固有名詞で呼ばれる人ってほとんど居ないんですよね。
最初から最後まで物語を牽引してゆく調査隊のチーフも、名前は明かされないままです。
終盤に出てくるあの人は……通り名だから本名ではなかったような。
プレイヤーが生み出すキャラクターたちも、設定上は「チーフと通信する際のコードネーム」という建前だったと思います。
自然災害により斜陽の時代を迎える文明、そこに新たな収穫の秋をもたらすべく尽力するのは、芋の種を造った名も知らぬ錬金術師たちであり、我らがチーフであり、その他大なり小なり関わった人々であり(ネタバレ配慮のためここでは言えないのですが、味のあるサイドキャラがたくさんいます)、そしてプレイヤーたる調査隊の面々である。
この「名もなき人々が一灯を持ち寄って明日を繋いでゆく」という一貫したシナリオの理念に胸打たれましたね。
エンディングで不覚にも泣きました。チーフ殿……。
というか世界観、作中の社会構造といい発掘文書といいガチすぎませんかね!?
教養を下敷きにフル活用した作り込みって点ではウィッチャーシリーズにも匹敵するほどの、まさに“生きた世界”だと思うのですがそこんとこどうなんでしょう。
最初は初出単語が多すぎてNPCたちの台詞も頭に入ってこないかもしれませんが、なんとなくこの世界に馴染んでくるとどんどん引き込まれますよ。
特に、この世界では比較的高度な教育を受けていそうな宝石技師の話がめっちゃくちゃ興味深くてドキドキしながらテキストを読んでました。
(ところで私昇降機の2Fに止まるって発想がなくてしばらく1Fと4Fの往復にしか使ってなかったんだぜ……あの辺の敵が全部ザコになってしまって「しまった!」なったわ)
あとこれは声を大にしてお伝えしたいのですが、調査隊を支えてくれるチーフ殿が最高に親しみやすくて好きです。
視界に入るたびに手を振ってくれるし、新しい敵・技が出るたびに愛嬌のある解説を挟んでくれます。これが楽しみで新手に接敵してました。
[X]コール のコマンドが光るのが毎度嬉しかった……。
要所要所の感想としては以上です。
これだけ綺麗にまとまったDRPGが世にリリースされたことを心から祝福させていただきたいです(お前は何者ですか)(ただのその辺の素人ゲーマーです)。
いやホント、純粋なダンジョンクロウル体験といい、手頃なボリュームといい、正に求めていたそのものだったので余りに嬉しくて……。
先述の通りDRPGファンとしては浅い人間なのでどれほど他の方の参考になるかは分かりませんが、個人的に『芋の花』は今まで遊んだ中でも最もバランス良く作られており、「安心して遊べる適度な歯ごたえのDRPG」としてベテランから初心者に広くオススメできる逸品だと思っております。
クリアに要する時間もそんなに多くなく(これも先述しましたが、20時間くらい)全実績解除もクリアと同時に達成できました。この調整は有難い!
実績にこだわっている訳ではないのですが、それでも“全実績解除”って体験には特別感がありますね……。
『両手いっぱいに芋の花を』、良作でした。
DRPGに「自分で悩みながら未知のダンジョンを探索する楽しさ」を求める人なら必ず楽しめると信じています。
素晴らしいゲーム体験をありがとうございました。折に触れてまた別パーティで遊びたいな。TAとかも面白そう。
といった具合で本日はここまで。
また次の日曜に。