#085 ドーマンセーマンGhostwire: Tokyo
Ghostwire: Tokyo、クリアしました。良いゲーム体験でした。
今週は出来立てほやほやの感想記事です。
ネタバレが致命傷になる性質の作品ではないように思いますが(シナリオよりは体験そのものに旨味が凝縮されている)、未プレイでネタバレを一切食いたくないタイプのあなたはブラウザバックナウ。
中盤以降のスクショも遠慮なく貼り付けますので。
(とはいえストーリーの核心すぎるものや、私が個人的に「これは初見で体験してくれ!」と判断したものについては流石に避けるつもりです)
超常の力に憧れた“あのころ”のワクワクを大人になったゲーマーに再びもたらしてくれる作品でした。
2022年上半期・おすすめオープンワールド。
……と、私個人の所感としては「最高! 最高!」な感じなのですが、もちろんあくまで個人のレビューなので合う合わないは当然あると思います。
特に以下のタイプの人にはあまり響かないんじゃないかな。
・ゲームの戦闘に戦略性を求める(ビルド、装備、操作全般)
・オープンワールドなら広いフィールドを駆け回って新しいロケーションをたくさん発見したい
・メインストーリーだけで100時間くらいは遊びたい
・Jホラーを期待している
・東京、とくに渋谷は見飽きている
一方で、以下のような人なら刺さること間違いなし。
・能力バトルものが嫌いじゃない
・軽口叩きあう系のバディものが割と好き
・渋谷に観光に行ってみたい
・最近、プレイ時間がかさむ“重いゲーム”をやれなくなってきた
・「臨、兵、闘、者、……」の続きを暗記している
一つでも当てはまればイケますよ。二つならなお良し。三つ以上あったら私と握手。
また他の項目がハズレでも一番下の項目が当てはまった場合は迷わずバイナウ。
以下、大雑把な項目に分けて感想を述べてゆきます。
【オーソドックスでありながら偏執的な作り込みのオープンワールド】
オープンワールドとしては非常にオーソドックスな作りだと思います。
渋谷各地に点在する鳥居を制圧(浄化)して活動エリアを広げていく形式。FARCRYの電波塔ジャックと同じですね。
ただし、活動エリア外は霧に包まれており、霧に入ると容赦ないスリップダメージに襲われますので(同時に相棒からめちゃめちゃ叱られる)、基本的にはメインクエストに従ってエリア解禁してゆく流れになるはず。メインを無視して全エリア解放! とかはおそらく無理です。
とはいえ、鳥居がひとつ解放されるだけでサブクエ・収集物・幽霊などが一気に増えるので、そこまで行動を制限されている不自由感ありませんでした。
このゲームの白眉はなんといっても世界の作り込み。
まさに「現代ニッポン」がそのままギュッと凝縮されています。びっくりした。洋ゲーじゃ出来んよコレは。
コンビニからは呑気なテーマソングが流れ、ネオンライトは雨に反射してギラギラやかましく、ビルの間に神社が経ち……となんとなく見知った「トーキョー」なのに、人だけが消えてしまった異様な世界。
この雰囲気がもう……素晴らしいんですよ。ちょっとだけ外国人の夢見る「Nippon」的テイストも混ざってるのがまた面白味があっていい。
プレイヤーはこの街中をテクテク歩き回ってもいいし、ビルの屋上から屋上を滑空しながら渡り歩いてもいい。
最早一種の観光です。
日本ネイティブにしか分からなさそうなネタが随所に仕込まれているのもまたニクい。
特にコレ。
《何だか釈然としない酒》
《でも美味い》
はい神ゲー!
こういうクッソくだらないネタが随所に仕込まれていて、PS5(とPC)の高解像度でボケることなく読み取れちゃうので、ついつい立ち止まって飲み屋の看板とかを眺めちゃうんですよ。母語が日本語でよかった。
(海外メディアではこういうコマいところが拾えなかったからメタスコアの初動が低かったんじゃないのかなぁと勘繰っている……)
(でもセクシー大根なんかは言葉要らずで伝わるんじゃないかな……)
※セクシー大根参考画像。渋谷のどこかに隠されているぞ! 肉感のあるお尻は君の目で確かめよう!(?)
だいぶ長いこと首都圏にすら足を踏み入れてすらいないため、渋谷なんかは『ペルソナ5』や『すばらしきこのせかい』等のマップでしか馴染みがないのですが(いなかもの)それでも「アッ! マルキューなるもの!」「アッこの駅! アッ渋谷駅これ! ワッワッ!」と大はしゃぎできたのでヴァーチャル・シブヤとしての再現度も相当高いと思われます。
あとフジヤマート(コンビニ)の歌が本当にクセになる。
ああフジヤマフジヤマ3776……。
猫又ちゃんも可愛いね。
【口当たりサッパリな王道シナリオ、ボリュームは控えめ】
気になるメインシナリオですが、こちらは最近のオープンワールドにしては軽めのボリュームでした。
マップに表示されるサブクエストをすべて消化した上でクリア時間が28時間だったので、メインクエストだけの省エネ攻略なら10時間もかからないのでは。
それ自体はまったく問題ないどころか、むしろポジティブに作用していたと思います。
特に、サブを堪能しきってからメインを進めるタイプのプレイヤー(ツシマでいうところのエリアマップを全部埋めてからメインクエに取り掛かるような人)にとっては探索しきるくらいが逆に適正ボリュームになるというか。
この辺は好みが分かれる気がします。もっとボリュームをくれ! という声は一定数ありそうですが、私個人としてはボリューム軽めのゲームが好きなのでちょうど良かった。
30時間プレイしましたが、実績を見るに探索要素は半分くらい残っているので、やろうと思えばまだまだしゃぶれるはず。
あとプレイヤーが自由に進行速度を決定できるオープンワールドにありがちな「メインストーリー何やってたんだっけ問題」も、ミッションのシンプルさで解決されていた印象があります。
お話自体は単純明快。そして登場人物たちとの関係性は王道。だからこそスッとシナリオに戻りやすいし、ちょっとくらい放置していても大丈夫そうな気がしてくる(そして使命をそっちのけで犬猫と戯れ始める……)。
登場人物たちについては、ゲーム本編だけだとおそらく情報不足により感情移入しづらいかもしれないので、無料で配信されている『GhostWire: Tokyo – PRELUDE』こと序章をあらかじめプレイしておくのをオススメします。
ノベルゲーでボリュームも軽いです。1時間もやってないかな。分岐も拾ってません。
1周サラッと流すだけでもキャラクターの人となりや関係性が多少は頭に入るので、序盤の入り込みやすさが段違いです。是非に。
(最初期にやたら悪役ムーブをかましてくる相棒ことKKなんかは特に前情報が必要なのでは……?)
(いい人なんすよあの人)
記事の最初の方で「バディもの」と言及しましたが、Ghostwire: Tokyoのシナリオの半分以上は主人公・暁人とKKのバディシップで構成されています。
暁人の身体の中にKKが魂だけ入り込み、やいのやいの言い合いながら異形はびこる渋谷を歩き回るのは存外に楽しい体験でした。
この二人の軽妙な掛け合いがあったからこそホラー的演出も耐えられたように思います。
暁人は素直で優しい青年、KKは文句言いながら助けてくれる正義のおっさん。
どちらも主人公にふさわしい気持ちのいい奴らで、彼らが少しずつ打ち解けてゆく様はグッときましたね……。
(技を教えたがるKKが近所の面倒見のいいおっさんそのもので笑った)
うーん、わくわくバディ物語。
また、各電話ボックスにたまに置かれているエドの音声記録がこれまた面白くて、ちょくちょく言及されるデイルの扱いが雑で毎回笑ってました。
台風コロッケネタは古いよデイル!
登場人物たちが魅力的な一方で、ゲーム内で姿をがっつり見せてくれる訳ではないので、可能であれば序章にあたる話をDLCか何かでプレイさせてほしいですね……。
その場合、人のいる渋谷を描写しなきゃいけないから厳しいか……? どうだろう……。
KKで妖怪退治する話やりたい……。
【これぞゲームの強み! 息を呑む演出の数々】
タンゴゲームワークスさんの作品は初めて遊んだのですが、いやぁ……度肝を抜かれました。
これこそゲームでしか味わえない、“実体験する異空間”の極み!
かっこいい。
もうこれだけでフルプライス出してもお釣りがくる。
建物の探索中に幻視が始まる度にキャッキャキャッキャと喜んでました。これ! これをゲームでやりたかったの(満面の笑み)!
部屋の上下がおかしくなるとか、間取りが狂うとか、変なのがウロついてるとか、行手をおかしな新聞の集合体で阻まれるとか。
そういう「自分がそこにいるからこそ味わえる」「自分の動きに対応した反応を返してくれる」からこそ生まれる非現実感、異質感。
最高でした。
カッコいいスクショを撮って布教できれば良かったのですが、いかんせん夢中になっててろくすっぽ撮れてないという……。
【戦闘は淡白なお味、引き撃ちが基本】
一言で表すと“戦闘の単純さをカッコ良さで誤魔化してる”といった感じでした。
不自由さはないので決してマイナスポイントではないのですが、「カッコ良くエーテル弾を撃ち出す」以上でも以下でもないので、奥深い戦闘をお望みの方には物足りないかも。
とはいえエーテル技だけでも連射力の風属性(ハンドガン)、近接と幅の水属性(ショットガン)、高威力の火属性(グレネードランチャー)があり、それぞれ強化スキルが用意されています。
また遠距離高威力の弓矢、高価だが上手く使えばピンチを覆せる強力なお札、あとステルスキル技……と攻撃手段は各種揃っているので、「今回はステルスで制圧しよう」「今度は正面突破でいこう」とアプローチを変えればある程度の味変は可能かと思います。
こうやって書き出すとプレイヤー側の選択肢は案外豊富に見えますね。
そうなると問題は敵の種類の少なさにありそう。
「マレビト」と呼ばれる化け物はマップの各所に現れ、またサブクエストのラストはこいつらとの戦闘で締められることも多く、プレイ時間の半分くらいはこいつらと組んず解れつする羽目になるのですが、思い返せば確かにサラリーマンとOLさんばかりだったかもしれない……。あと女子高生。
淡白とはいえ、いちユーザーとしてはハンドアクションのカッコ良さをいちばんに求めて暖簾を潜ったので、その辺はあまり苦にならなかったですね。
前述のとおりボリュームが軽めなので、飽きてきた頃合いで丁度よくクリアできますし。
いやぁ手のモーション、凄く良かったな……。
術を撃ち出すモーションはもちろん、お札を初めてゲットした時のヒラヒラ〜もカッコ付けててGOODでしたし、強敵を倒した後の「ッシャァ!」みたいなポージングも(システム的に絶対要らないけどフレーバーとしては絶対に)マストですよね。気持ちいい。
細かい感想としては以上の通りです。
プレイ後の印象をざっくり纏めると、「ラーメン屋に行ったら最高に上手い小盛りの味玉ラーメンが出てきてサイコーだった」といったところ。
最近二郎系のゲームを食えなくなってきたので有難い(それは感想としてどうなんだろう)。
ニッポンのゲームでこれだけ楽しいものが出てきたのもユーザーとしては嬉しい限りです。
DLC出ないかな。出たら絶対買います。
そんな具合で今週はここまで。
また次の日曜に。