週報タルトトタン

よく寝て、よく食べ、日曜ものかき。

#100 ゆかいな惑星アトロポス探訪、Returnal感想

 

 愉快な訳があるかい! 死ぬほど死んだわ!

 

 クリアしました、PS5専売タイトル『Returnal』。これね、とてもとても面白かったです。
 4Kモニタを買った(#099参照)のならPS5を堪能したいよね! ということで何気なく手を出したタイトルでしたが、予想以上にハマり倒してしまいました。
 移動や仕事の合間にもそのゲームのことを考えてしまうレベルになったら本物ですよね。どっぷり。

 

 プレイ時間50時間ほどを経て、《真エンドクリア》《シシュポスの塔トロフィーコンプ》まで漕ぎ着けましたので、今週はその感想を書いてゆきたく存じます。
 毎度のごとくネタバレ配慮はいたしませんので、ストーリーのネタバレを食いたくないかたはクリアしてから(または購入してから)またお越しください。
 あるいは、ストーリーの考察もどきは記事の後半に寄せますので、ゲームとしての所感を知りたい方は前半だけつまみ食いするのもアリです。どうぞ。

 いずれにしろ、未プレイならまずはトレイラーを見てください。その上でピンときたなら是非とも手に取ってほしい作品です。
 プレイ後しばらくは普通のアクションゲーに満足できない体にされます(こわい)。
 愉快痛快に死にまくろうぜ!

 

 以下、感想本文。

 

 

【キビキビ動く主人公セレーネ、爽快プレイ感のTPS】

 

 当方、TPSは某イカちゃんゲー(3が楽しみ)くらいしかやらないので「他のTPSと比較して云々」の話はできないのですが、少なくともシューターやアクションとしての操作感は他に類を見ないクオリティだろうとは断言できます。

 

 「走る」「撃つ」「回避する」のどれもが直感的にできるこの感覚、ちょっと他にないですね。
 敵の攻撃が苛烈になるにつれ、要求される操作もハイスピードになってゆくのですが、プレイヤーさえ慣れてゆけば主人公セレーネは間違いなく応えてくれます。やってくれるぜこの女!

 

 最初のころは走るのも精一杯(ステージからしょっちゅう滑落する)、撃つのも精一杯(立ち止まりながらエイム撃ちしている間にやられる)、回避も精一杯(回避した先でまた弾に当たる)とドタバタですが、そこは死にゲーの真骨頂、プレイヤースキルの向上でなんとかなります。
 この「分かってくる」感じが楽しいんですよね。
 最初、操作や敵の動きに慣れないうちは本気で絶望するかもしれませんが、人間意外と慣れるもんです。
 周回後に初期のボスと戦うと成長を感じられてビックリします。フリーキ先生(最初のボス)を翻弄できる日があなたにも来る……。

 

 なお、主人公セレーネのスペックを最大限引き出すために、以下の設定をおすすめします。先人の皆様のアドバイスそのままですが、まあおさらいがてら。

 

  • スプリントは常にオン
  • ジャンプ、ダッシュ(回避)はボタンからトリガーに振り分ける
  • エイムアシスト強で腰だめ撃ち推奨

 

 特にスプリントは常にオン状態に慣れておいた方がいいです。
 私は当初押し込みスイッチ型にしていたのですが、このゲーム、とにかく走り続けることを要求してくるので、プレイ開始3日目くらいで左親指にタコができました。押し込みは重労働。
 コントローラーの寿命のためにも是非。

 

 

 

 また、プレイ時の爽快感の源は、操作感だけでなくフィードバックにもある気がします。

 PS5のコントローラーから伝わってくる振動が凄い。もう常に凄い。
 雨が降っていれば雨の当たる感覚が伝わってきます。最初は何事かと焦りました。ただ立っているだけで振動による演出を楽しめるとは……。
 オボライト(鉱石資源、お金として機能)を回収した時にはチャリチャリ感が気持ちよく、武器によって撃った時の反動も違って面白い。
 たかが振動と軽視していましたが、ここまで没入感を高めてくれるものとは思いませんでした。

 

 フィードバックといえば振動だけでなく、敵を倒した時のSE、セカンダリの演出、エーテルを拾ったときのエフェクト等々、プレイヤーがゲーム内世界に働きかけた時に気持ちよく感じるような仕掛けが盛りだくさんでした。

 

 「何度も死ぬしクリアできるかも怪しいけど、やっぱりもう一度トライしてみたい」。
 この感覚を維持できたのは良好な操作レスポンスと爽快感あふれるフィードバックのお陰でしたね。

 

 

【ヒリつく難易度と丁寧な導線】

 

 生き延びるか行き倒れるか、扉を開けるたびにウデを試されるヒリヒリ感。たまらない。

 

 マップは完全ランダム生成ではなくある程度パターン化されていますが(この部屋よく出るなぁとかありがち)、敵の動きはいつも同じとは限りませんし、ローグライト故に当然装備もランダムなので、常に臨機応変な対応を求められます。結構なハイスピードで。
 中ボスが出たのにホロウシーカーしか持ってねぇ! とか、雑魚が大量に出てきたのにコイルスパインしか持ってねぇ! とか、長距離必須ボスなのにスピットモウしか持ってねぇ! 等々、窮地は枚挙に暇がない。
 アリモノでなんとかさせられるのはローグライトの真骨頂と言うべきか……。ただし、ガチャ運の悪さによって勝ち目がなくなるような局面はあまりないかと。結局は実力というか、現場の対応力でなんとでもなります。

 ランダム性という点で見れば、死にゲーの金字塔ことフロムゲーとは似て非なるものかもしれません。
 向こうはマップや敵の決まった動きを覚えて順応してゆく楽しさ、Returnalはランダム性を含めた「この惑星の環境」に順応する楽しさ。違った種類の熟達ですね。向こうは覚えゲー
 (私PS5版デモンズしかやってませんけども)
 (語れる立場なのかそれは……)

 

 初めてプレイする方はおそらく(余程TPSに慣れているゲーマーでない限りは)最初の面で心を挫かれるのではないかと思います。
 武器も育っていませんし、セレーネの恒久装備もスッカラカン。ただしその分、このゲームの基礎部分を叩き込んでくれる面でもあるんですよね。

 射撃と回避と時折近接、これがきちんとできれば初めてのボス・フリーキ先生も倒せますし、次のステージも大丈夫。
 武器もハンドガンとアサルトとショットガンの3種類で、クセがなく使いやすいものばかり。後に続くのは変わり種ばかりなので(育てれば強くなるけど)、全て解禁した今改めて振り返ると初期組はオーソドックスな品揃えだったなと。

 

 本作は尖った不親切死にゲーと見せかけて、実際はプレイヤーの成長に合わせて難度が上がっていくように丁寧に設計されているので、嫌になりさえしなければいつかは必ず誰でもクリアできるんじゃないかと考えています。

 エリアごとに毎回「なんだコレ、初めて見るぞ」があるんですよね。ギミックも敵も。これを小出しにしてくれるところにプレイヤーへの配慮を感じます。
 またゲーム内チュートリアルも割と丁寧なので、セレーネが容赦なく酷い目に遭う点以外は割と親切なゲームなんじゃないかと思っています。

 

 心が折れるかどうかはプレイヤー次第。ここに合う合わないの分岐点があります。
 そこはローグライト系が好きかどうかで判断できるんじゃないかな。

 

 


【個人の好みによる武器短評】

 

 攻略向け情報ではなく「触った感じコレが好きだった」くらいのトピックです。
 究極どの武器も使えますが、個人によってかなり好みが分かれるんじゃないかな。

 熟練度(主人公セレーネ自身の経験)ではなく武器固有能力(セットスキル)が育っていくのは予想外でしたね。
 武器が育つたびに使用感がガラリと変わるのは新鮮な体験でした。

 ガチで進みたい周回で、育てたいスキルを持ったアホ武器がドロップして悶絶するなど、ランダムの醍醐味のような場面もありました。画像参照(ロット→ランチャーの持ち替えで悩んでいます)。

 

 これからボスを倒しに行くっていうのに君さぁ!

 

 

《改造サイドアーム SD-M8》

 初期武器。いわゆるハンドガン。

 タップ撃ちで高速連打すればDPSが上がるのですが、押しっぱなし派な私としては活用しきれませんでした。
 とはいえ開始時も強制装備でも困るほどではなく、クセのない使用感です。
 初めてのデイリーチャレンジでスキル盛り盛りのサイドアームが出てきて、その余りの暴虐ぶりに唖然とした記憶があります。これが武器成長の魔力。

 でもチャージングだけは勘弁な!

 

《タキオマティック・カービン》

 最初に解禁される武器。いわゆるアサルトライフル

 これ、エイムアシスト強だと滅茶苦茶頼りになります。大層お世話になりました。上がりにくい防御力を底上げしてくれるスキルを持っているのも好印象。

 スキルによって発射レートが上がったり下がったりしますが、下がっても外さなければいいので問題ないです(難しいことをサラッと言う)(私は外すけどな)。
 特に対ボスならレートの上がるライジング・ピッチの方が良いんでしょうね。このゲーム基本的に瞬間火力がモノを言うので、ゆっくり確実に削るハイキャリバーはやっぱりイマイチかもしれません。あの重そうな感じは私好みですが。

 

《スピットモウ・ブラスター》

 いわゆるシャッガン。近接向けですが弾自体は割と遠くまで届きます。散るだけで。

 1面および4面は狭い場所での戦闘が多いので便利です。それカタナの近接で良くね? は禁句。
 一番輝く場面は飛んでる雑魚の牽制時ですね。タコ坊主(飛んでるタコみたいな小さい雑魚。ちゃんとした名前はありますがずっとタコ坊主って呼んでた。ビームやら赤輪攻撃やらでひたすら鬱陶しい)は一発でも食らうとと攻撃モーションを中断するので、数が多くて対処しきれない時にバラ撒くと吉。どうしようもない窮地ならいっそセカンダリを吐いた方が安定しますがそこはご愛嬌。

 スラッグ・ショットがつくと弾が一点攻撃型になり中距離以上でも使えるようになりますが、それ別の武器でよくね? となるので何とも。バラけるのこそ散弾銃の華よ。

 

《ホロウシーカー》

 いわゆるサブマシンガン……だと思います。数撃ちゃ当たる、当たってもそんなに痛くないけど、といった具合の使用感。

 火力が低いですがスキルが育つほどにどんどん化けてゆきます。育て甲斐があると言えば聞こえはいいですが、育てるまでのすっぴん状態があまりにも“豆鉄砲”で最初は苦戦します。
 解禁される場面が2面のセヴァード(孤立した者、人型中ボス。こいつと戦うときはとにかく火力が欲しい)直前のため、試し撃ちに担いでみたはいいけれど火力ひっく! 豆鉄砲やんけ! となりがち。なった。
 ですが、ウェーブを始め有能なスキルが揃っており、特に追尾性能ナンバーワンのポータル・ビームがレベル3まで育てば向かうところ敵なしでしょう。自動攻撃ポータルを搭載できるということは、以降に取り上げる継続ダメージ系と同じく「放っといてもボスが溶ける状態」に持っていけることを意味します。あとはただ敵の弾幕を避けていればよろしい。

 真エンドのラスボスに長らく苦戦していましたが、レベル3のポータル・ビームのお陰で切り抜けられました。
 ありがとう豆鉄砲。

 

《エレクトロパイロン・ドライバー》

 いわゆる……何? 継続ダメージを与える杭を撃ち込むやつです。

 回避と攻撃を同時にこなさなければならない本作において、継続ダメージ系の武器は有難い。回避に専念できるので。
 個人的には対ボスに持っていきたい武器ですね。雑魚には向いていない。道中においては雑魚を瞬殺できた方が安定するので、発射直後の爆発力がイマイチなパイロン先生は個人的に扱いづらく感じます。
 あと杭同士の間に流れる電流の色が真っ赤なので、敵の攻撃判定と見間違いやすいのもちょっと。せめてオレンジとかにしてほしかった。

 敵の動きを見て回避の練習をしたい時は間違いなくコレが適任ですね。逃げ回る前提なら最強武器です。

 

《サーモジェニック・ランチャー》

 いわゆるロケラン。ドッカンドッカン派手なやつです。

 弾数が少ないのと、たとえフルオートがついても空中の敵に当てづらいのとで私はあまり活用できませんでした。偏差撃ち必須ですねコレ。
 爆発範囲がもっと広ければ雑に雑魚を散らせて良かったかもしれませんが、そうしたらバランスが崩れてしまいますね。君はそのままでいい。
 弾切れが早いので、オーバーロードが上手い人ならアーティファクトとの相乗効果で大暴れできそうです。

 戦いには活かせなかったとはいえ、4面などのオブジェクト(植物のつぼみみたいなやつ、たまにアイテムが出る)をお掃除する時の使い勝手は最高でした。そこは好き。

 

《ロットグランド・ロバー》

 いわゆる……グレラン?  違う気がする。毒液を発射するゼノテクノロジーの申し子です。

 使い勝手で言えば一番かもしれません。対ボスはもちろんのこと、雑魚に対しても割と活躍してくれます。ボーナスダメージが乗っていれば飛んでる雑魚も一撃です。
 パイロン先生と同じく継続ダメージ系の武器ですが、こちらは初撃の攻撃力が高めに設定されているので、どちらかというとこちらをお勧めしたいですね。解禁までがストーリー上ちょっと遠いので「初心者向け武器」とは呼べませんが……。
 ただし操作に慣れるまではやや時間を要します。弾が直線ではなく放射線状に飛ぶので。チャージ撃ちすれば割と真っ直ぐ飛びますが、チャージする余裕がこのゲームにあるかと言えば……ないですね……。
 シシュポスの巨塔の最終形態ラスボス戦で大活躍してくれました。頼れる相棒です。

 あと外見がグロいというか、配管が腸みたいにプルンプルンしているのがキモくて良かったです。柔らかいモノの表現がすごい。
 (次世代機の表現力を実感するのって大抵キモいものを目の当たりにした時ばかりな気がする)
 (次世代のkawaiiをくれよ……)

 

《コイルスパイン・シュレッダー》

 強いて言えばスナイパーライフル。一点突破な尖った武器です。

 基本的に一発しか撃てません。外してはなりません。このゲームでしっかりエイムしろなんて難題すぎますわよ!
 尖りすぎた性能を敬遠してほとんど使っていませんが、敵に当たったら弾が三叉になるとか、壁に乱反射するとか、狭い通路で使ったら案外面白いことになるかもしれません。
 ただしそういう副効果はほぼすべてスキルによって付与されるものなので、すっぴんの状態で担ぐのは一切おすすめしません。

 シシュポスで出てきたからといって泣く泣く担いでヒーヒー言うのが逆に楽しかったです。最早縛りプレイの一環。
 本編ではとても活用できる気がしません。プロの方にお任せします。

 

パイロシェル・キャスター》

 こっちの方がロットよりもグレラン的な気がする。敵や壁にピタッとくっつく爆発物を射出するやつです。

 これもロットと同じく放射線状の軌道で飛ぶので練習が必要。なおかつ、初撃にダメージがないので(多分爆発するまでノーダメージ)牽制としても機能しません。コイルスパインと並んでかなりクセの強い武器です。
 ステータス次第でタコ坊主(前述)を一撃で倒せないこともあり、本命として使うにはややシンドイ。これも一種の縛りプレイとして使っていました。
 ボロクソ言ってしまいましたが、発射レートが意外と高めなのが長所です。ロットと同じ感覚で一発ずつ撃つよりも、長押しでバラ撒いた方が(たとえマトに直撃しなくとも)効率がいいはず。

 有用スキルも多いのでちゃんと使いこなせれば強いはずなのですが、でもそれ他の武器でもいいよね? の一言で片付いてしまう悲しきソルジャー。

 

《ドレッドバウンド》

 これは……何? ブーメラン? ディスク? とにかく撃ったら弾が戻ってくる不思議な武器です。
 本作に登場するよりどりみどりの武器の中でも特に好きな子でした。必ず戻ってくる不思議な弾を駆使しながら走り回る感覚は唯一無二。

 「当たると戻る」「当たらなかったら一定距離を進んで戻る」という珍しい性質を持っていて、畢竟、弾が戻ってくるまでは次の攻撃ができません。
 ですが対象物に近付けば近付くほど戻ってくるのも早くなる=発射レートが爆上がりする訳で、この時の火力のアホっぷりが最高なんですよ。
 特に接近して戦える中ボス級に対して有効。モンスターハウスに乗り込むなら是非担いでいきたい武器ですね。

 ただしエイムの下手な人間(私)がドレッドで遠距離戦を行うと悲惨な目に遭います。
 弾があらぬ方へ飛んでいき、戻ってこない。戻ってくるまで逃げ回るしかない。悲惨。このピーキーさがたまらない。

 壁のある室内で最も輝く武器なので、ラスト面に持ち込むならエイムを丁寧にした方がいいです。小兵は引き撃ちでなんとか凌ぎましょう。

 

 

 といった具合で色々好き勝手に書かせてもらいましたが、基本的にどの武器も使い道があるように出来ています。この調整・構成、素晴らしい。

 武器のスキル上げについては、本編よりも塔で回した方が楽かもしれません。熟練度がすぐに25に到達しますし、本編以上に武器が落ちるので未解放スキルを探しやすいです。
 ただしスキルレベル3は要求される敵撃破数が跳ね上がるようなので、1〜2を塔で解禁し、3はラスト面の無限湧きイカちゃんを叩いて稼ぐのがベストかなと思います。

 

 

【で、結局どういうシナリオなのか】

 ここからは本編のネタバレを含む“記事の後半”にあたりますので、未クリアかつ自力でムービーを観て考察したい方はご注意ください。

 

 

 

 

 コズミック・ホラーを期待させておいて、その実サイコ・ホラーだった。といったところ。

 

 序盤の不気味さは演出、データベース、シップログのどれもが最高でした。
 特にテキスト周りはKeter級のSCPの報告書のような不安感・絶望感があって、今後の展開に期待したものです。
 タコ坊主とその親戚の敵説明文だけ他と様子が違いすぎるじゃん! コワイ!

 

 ただ、最初から「アストラの実態が一切説明されない」「“白い影”が何か明示されない」「セレーネの言動が支離滅裂」「20世紀の住宅が実家として出てくる」など違和感のモトはいくらでもあり、その時点でなんとなく内面世界がテーマなのではないかと察するものはありました。

 でも信じていたかったんですよ。セレーネは本物のアストラのスカウトだと。
 《心の闇を人に見せつけながらループに捕らえ続ける、悪意の塊のような異常惑星アトロポス》が、その物語世界に実在していて欲しかったんですよ。
 夢オチだなんて思いたくなかった。
 物語の結末としては最も萎えるので……。

 

 とはいえ、その内的世界の描写や謎めいた暗喩たちは“ただの夢オチ”で済ませられるほど安易なテーマではなく、考察しようとすればするほど泥沼に嵌まってゆくように作られており興味深い。
 興味を持った人間を思考のループに引きずり込む、まさに悪夢のパズル。
 「欲しかったのはそれじゃないけど、これはこれでアリだな」というのが現在の結論です。

 

 他の方も各所で書いておられますが、現実の主人公に何が起こったのか、この物語の断片的な情報から断定することはほぼ不可能でしょう。シシュポスの病院イベントでも暗示されたとおり、この物語は母と子の関係性を軸に循環するようにできています。多分。言ってて訳が分からなくなってきた。
 とにかくセレーネは“信頼できない語り手”の最たるものであり、この物語の主人公が「子としてのセレーネ」なのか「母としてのセレーネ」なのかすら判然としないのです。もう何一つ正しく定義できない。

 

 

 そのため、我々にできることは「現実に起こった事象を主人公がどう受け止めて」「どのように克服しようとしているのか」を演出面から推測することくらいです。要はフィーリング。
 「柱のようなものを崇拝するセヴァードは脊椎損傷により半身不随になった母親に負い目と恐怖を感じる主人公である」とか、そういう感じに。
 (物語をある程度理解した上でステージの意匠に注目してみると、脊髄や胎児など生理的にウッとくるモチーフが思った以上に多くて精神にきますね。この惑星はセレーネにとってあまりに辛すぎる……)

 

 

 

 それを踏まえた上で、真エンドのラストシーン。
 ここからは個人の印象を交えた考察なので、そういうのもあるのか〜くらいに流していただければ幸いです。

 

 まず結論として、あれはハッピーエンドであると私は考えています。

  • 半身不随になるような怪我を負った母に対し、無傷で助かった子供時代のセレーネは負い目を感じている
  • 「置き去りにする」という行為にトラウマを抱えている(車の事故、地下室の母の死によるもの)
  • その上で、地下の母親と決別し、水面を求めて泳ぎだす

 この一連の流れは、本編に通底していた「母親との決別(=アセンション)」を示しているように見えるんですよね。
 「自分は助かってもいいんだ」という意識を獲得した演出と受け取れます。
 根拠? 印象だよ印象(急に自棄になるな)。

 そこから流れる原曲の『(Don't Fear) The Reaper』もカラッとした印象ですし、事故の瞬間に流れていたこの曲を原曲で流す演出自体、主人公があの事故に向き合って正しく認識できたことの示唆と捉えられたり……しませんかね……。

 

 

 じゃあ白い影っていったい何だったんだよ、という疑問も残っていますが、この単語は半ばマクガフィン化しているっぽいので正解は得られないのではないかと。
 テイア、セレーネ本人、あるいはセレーネの“一側面”、何とでも言えます。

 

 私個人としては「白い影が見える?」のフレーズ自体がそもそも捻じ曲げられている可能性を考えています。

 ムービーではセレーネまたはヘリオスが車の中でポツリとこの台詞を呟くだけですが、その実態は『ネグレクトされがちだった子供時代のセレーネが運転中のテイアに「私を見て!」と何かしらのアクションをしてしまったために事故が発生した』だったとしたら?

 そもそも事故で子供だけ助かったからといって、それを子供のせいだと責める母親がいるとは考え難いんですよ。いやテイアがそのレベルのやべー人だった可能性も捨てきれませんが。
 またセレーネが自責し続けていることも加味すると、やはりあの事故は子供側が運転手の母に話しかけただけで起きたとは考えにくい。実際に宇宙飛行士が現れたなんてオカルトはもっての外です。
 後部座席に乗っていた子供はセレーネで、宇宙飛行士=白い影もセレーネ。事故の原因は何かしらセレーネにある。

 

 では何故あんなオカルトな表現になったのか?
 罪の意識から記憶を捻じ曲げてしまい、セレーネの思い出せる事故の場面はあのようにオブラートに包まれた表現に差し変わっている……と考えるのは厳しいですかね。ここまで来ると考察じゃなくて作話ですけども。

  • 事故に関与した宇宙飛行士=白い影は自分だったと認識する
  • その上で水没した子供セレーネが助かるラストシーン

 改めて考えると、ハッピーなアセンションを果たしているように見えてきませんか?
 私は見えていたはずなのですが、きちんと文章に直したら急に疑わしく思えてきました。ああまたループが始まる。

 

 

 

 また、母との確執やアセンションの真意については、シシュポスの病院イベントや音声ログでだいぶ掘り下げられていましたね。
 新情報が出たとしてそれが現実世界の真実であると言い切れないのが歯痒いところですが(前述のとおりセレーネを信頼できないので)。

 

 随所に堕胎に関するモチーフが使用されていましたが、あれは即ちセレーネ自身が子を堕ろした経験というよりは、母と子の繋がり(確執)を断ち切るニュアンスに見えましたね。
 セレーネに子供(ヘリオス?)が本当にいるかどうかも断定できない現状では、セレーネの経験した事実よりは“心境”をベースに考えた方がいいんじゃないかなと。これも印象であり作話ですね。この記事そんなんばっかり(自棄)。

 

 で、母との決別を目指して塔を上り続けてきたセレーネが、シシュポスの病院イベントで最後に得る結論が「母がいなくなっただけじゃない!」なのはリアルだなと……。

 

 傷つけてくる人を排除したとしても、新たな自分や素敵な未来が得られる道理はどこにもなくて、ただただ傷ついてきた(がもうこれ以上傷つけられることもない)自分が残されるだけなんですよ。
 彼女はアセンションに夢を見ていたが、実態は空虚なものである。しかし、自由(自責をやめる自由含む)を得ることはできた。
 シビアかつ現実的な結論です。それでも生きていかなきゃならない。これは誰もが多かれ少なかれ経験している気がする。

 

 セレーネが思うほど“アセンション”は劇的な解決法ではありませんでしたが、人生を束縛されるほどに畏れていた母の影から解放されたのは間違いないので、あの虚脱感漂うラストシーンは間違いなくセレーネ自身がループを繰り返しながら求めていた答えそのものなんでしょうね。
 やるせないね……。

 

 

 

 ……といった感じでおぼろげながらも主人公に感情移入してしまったからこそ、ただの夢オチだったとしても私はこの作品のシナリオを「名作」と呼びたいんですよ。
 もちろん伏線がきちんと回収されてゲーム内で物語が完結する方が気持ちいいですが、こういう物語もアリです。
 ただし、この物語に正攻法の考察は通用しないということは購入前の方に予め伝えておきたいですね。ここは好みがかなり分かれるところなので。
 (その辺は他のネタバレ抜きレビューを書いてらっしゃる方のほとんどが言及されていたので問題ないかな)
 (私もそれ覚悟で飛び込んだし……情報提供ありがとうございました)

 

 

【本編トロコンはしんどすぎる】

 で、ゲーム自体の話に戻ります。トロフィーについて。

 私が現在取得しているのは1~3面と5面の探索以外の全てです。
 要は森、砂漠、要塞、雪山の探索以外は全て完了しました。DLC含めて全部。廃墟と深淵はラスボスチャレンジしている間に自然と取れていました。

 

 探索以外はそんなに難しくない内容でしたね。基本的にストーリーに従っていけば取れるものばかり。
 特殊条件系も、あえてそうなるように意識して行動すればおおよそ条件をクリアできます。

 

 探索トロフィーは諦めました。
 やろうとはしましたが、未発見の敵も新しいムービーも残されていない世界でただ無為にループするのは流石にキツかったです。部屋ガチャが運ゲーすぎる。砂漠コンプとか気が狂いそう。
 惰性でズルズル続けてもゲーム自体がイヤになってしまいそうだったので、名残惜しいうちに切り上げることにします。

 

 蛇足。
 DLCの方のディスゴージャー100体撃破は塔攻略の最初から意識してやった方がいいかもしれません。おそらく攻略するうちに自然と取れるでしょうが、あえてのアドバイス
 というのも、ディスゴージャーは道中のヤバい局面で吐いてボスまでの生存率を上げるものなので、積極的に雑魚散らしに使って「ボムの抱え落ち」をしないように訓練するとよいです。グッと進みやすくなります。
 もちろん対ボスの短期決戦用としても優秀ですが、雑魚の猛攻で死んでしまったら元も子もないので……。

 

 

 

 

 そんな感じで大いに楽しみました、Returnal。
 作品自体のテイストや、プレイ開始直後の高難易度から、PS5を持っているならマストの1本! と触れ回るにはちょっと躊躇するゲームですが、もしトレイラーを見て「イケそう」と思ったならきっと最後まで楽しめるんじゃないかと思います。オススメするならまずトレイラーを見せよう。

 個人的にはもっと遊びたかったので、続編が出るのを期待しています。あのシステムで新しい冒険をしたい。
 ただ、次はもうちょっと主人公が報われる話だといいな。

 

 といったところで今週はここまで。
 次は何の記事にしよう。スケジュール的にゲーム感想は当分書けそうにないのが悩ましい。はて……。

 それでは、また次の日曜に。

 

 

 

《余談》

 2020年9月ごろ週一更新で続けてきたこのブログ、今回でようやく100本目の更新と相成りました。
 記事更新のスケジュールの関係で特別なお祝い記事を用意できず、いつものゲーム感想になりましたが、何も言わずに100回達成……ではちょっと味気ないので、末筆にて密かに喜んでおきます。
 やったぜ。
 今後もこの調子でダラダラ続けて参ります。