#119 久々のSteamインディーゲームまつり
久々!
しばらくスプラトゥーン3どっぷりの生活を送ってきましたが、1stシーズンでやりたいことを大方済ませてしまったので、ぼちぼちSteamライブラリの積みゲーを消化してきました。
オータムセールで買い込んだ作品たちです。クリア跡、残った積みゲーは2~3本。ウィンターセールが来たらもうちょい買い足す予定。
積みゲーはすればするほど安心できるのでよい(貯金か?)。
まつりと言うほどボリュームはありませんが、サクッと遊ぶにはちょうどいい感じです。オススメなので全部バイナウ。
以下本文。
【Milk inside a bag of milk inside a bag of milk】
お値段120円。セール対象ではないけれど、元値がそもそもおリーズナブルなので気軽に手を出せちまうんだ。
主人公の女の子がお店に牛乳を買いに行くので、君は彼女の『心の声』としてアドバイスをしながらお手伝いをしよう!
買おう、牛乳!
ちなみにロシア産のゲームだそうで、「袋の中のミルク」はもうそのまんまの意味。むこうでは牛乳を袋に入れて売っているんですって。破れないのだろうか。
で、本編の目的はゲーム紹介文のとおり牛乳を買いにいく少女を手伝うことだけなのですが、キービジュアルから駄々洩れてくる精神不安定感が「絶対それだけじゃ収まらないだろ」と予感させます。
ええ、それだけじゃ収まりません。
道中ロクなことに遭いません。
120円だけあってかなりこぢんまりと纏まっている、一口サイズの地獄です。この作品。
強迫観念や対人恐怖、幻覚、その他諸々に悩まされている人は軽率にやらない方がいいです。多分主人公のモノローグに精神を引っ張られます。
それほど『精神的に不安定なときの考え方、見える世界』が解像度激高で描写されています。
当方は彼女が患っていると思しき精神疾患(素人なので具体名は伏せます)には罹っていませんが、それでもかなりキました。
どっぷりと彼女が身を置く“地獄”を感じられる異色の作品。
なんてものを世に出してくれたんですか。
我々が認識すればありふれた景色なのだろうけれど、主人公の少女の認知を通すと恐ろしく困難な局面に満ち溢れている。
プレイヤーは彼女のイマジナリーフレンドとして、要は彼女自身の一部として傍観したり、時には彼女の自作自演の一部として彼女の用意した台詞(たいてい辛辣)を選んだりすることしかできない。
我々プレイヤーには彼女をあの底なし沼のような赤い世界から救い出す力はないのです。無力。
はたして少女はどこへゆくのか……。
そんなこんなで、解のない課題のみをボンと受け手に投げるタイプの作品なので、次項の続編もプレイした上で暫く色々考えこむ羽目になりました。
いや、本当に引きずられる。ゲームならではの感覚です。
ちなみに本作は日本語に対応しております。ありがたい!
和訳を手掛けた方のnoteにて、四苦八苦されていた当時の話や和訳のニュアンスの話を書いておられるので、クリアした方は併せて読んでいただきたい。読み応えあり。
この作品を芯まで理解しようと、何度も噛み砕き、飲み込み、頭から再度出力して……といった工程を繰り返すのは本当にハードな作業だったと思います。
お陰様でややこしくねじくれた英文とにらめっこすることなく、この作品を楽しめました。
深く感謝いたします。
【Milk outside a bag of milk outside a bag of milk】
前項の『Milk inside a bag of milk inside a bag of milk』の続編です。
一気にグレードアップして大満足のボリュームに仕上がった地獄。
前作同様、この作品に少しでも「共感」できる人はあまり入れ込みすぎない方がいいです。
特に続編のoutsideの方は、前作以上に主人公の拗れに拗れた内面世界、過去にあった出来事について掘り下げてきますので、感情移入してテキストを読めば読むほど彼女の地獄がプレイヤーの心の中に顕在化します。
一歩退いてドライに読み解くのがいいのか、どっぷりと首まで浸かりながら追うのがいいのか……精神の健康を思えば前者の方が良いのでしょうけど、Milk 1&2には深追いしたくなる奇妙な魅力がありますね。
ビジュアル面の進化はもちろんのこと、お部屋の中をポイント・アンド・クリックで探索するパートが増えたことで、作品全体のテキスト量が倍増しました。
主人公ちゃんのことをもっと良く知れるね!
ただし、掘り下げれば掘り下げるほど辛い過去しか見えてきません。
“彼女の心の声”として過去の事実を問い質し続ける選択肢を選ぶのはかなりの罪悪感を伴います。
初回は日和って「この話はやめようか……」「ベランダには出ないでおこうか……」と慎重プレイに徹してしまいました。
前作では詳しく見えてこなかった主人公の年相応の生意気さ、打って変わって不安げな表情、記憶の開かずの扉に触れてしまったときのドロンとした目、それらがより解像度の高いアートワークで描き出されてゆく。
プレイヤーは引き続きどうすることもできません。我々はただの傍観者でしかない。
選択肢すら彼女の作りだしたものであり、我々は「彼女」でしかない。
ちなみに、本作はいくらかの選択肢によりエンディングが分岐しますが、救いのあるエンドは一つもありません。
プレイヤーには彼女の「結末」を変えることはできません。と言うよりは、このゲームには「結末」がありません。
ただほんの少しだけ意識の向く方向が変わるくらい。
救いがない、救いがないよ。
じっとりと意識の外から悪夢が侵食してくるような、あるいは無意識の底の混沌に押し込んでおいたはずの有象無象が染み出してくるような、どうしようもないしんどさを始終感じさせる作品でした。
ただただ淀んだどん詰まりを見せつけられるだけの作品ですが、抗いがたい魅力がある。
なんてものを世に出してくれたんですか(再)。
Milk 1&2、素晴らしい作品です。ただし全方面にオススメするほどの勇気はない。
どうか日当たり良好な休日の午前中にでもプレイしてください。今の季節なら、温かい飲み物があるとなおよし。
心の安寧はあなたにしか保てない。
【Moncage -箱庭ノ夢-】
打って変わって癒しのゲーム。
……のはずが、これ案外テーマ重いな?
プレイヤーの目の前に用意されるのは、正方形の箱。
底を除いた5面は、それぞれ別の景色を映し出します。
視点をくるくる回しながら、別々のシーンの画的なつながりを見つけ出し、止まってしまったシーンに変化をもたらして進めてゆく……というコンセプトのパズルゲームです。
発想が天才的。
けっこう詰まることがあったので堪え性なくヒントを2回ほど見ました(白状)。
同じシーンから進められず一定時間が経つと、ゲーム側が用意したヒントを閲覧できるようになります。
ヒントは3つの段階に分かれており、それでも分からなければ解法の動画まで見せてもらえる親切設計!
ピタリと繋がったときの気持ちよさは素晴らしい。
が、実際問題、ヒントがないとかなり厳しい部分も多かったように思います。
シーンを繋げるだけでなく、練習問題を経ずに「あえて繋げずに操作する」とか、「別のシーンにオブジェクトを持ち込んで、シーンの変化によってオブジェクトの色を変える」などの操作が要求されるので(プレイしてない人には伝わらないだろうなぁコレ)、要求される発想の幅はかなり広いと感じました。
ええ、私のアタマがカタいのも一因です。勿論。
各シーンにはほんのりとストーリーが付いているのですが、いまひとつパズルの解法とストーリーテリング的な演出が噛み合っていないように見えて、そこも若干残念です。
ストーリーのためのパズル、パズルのためのストーリー、その必然性があやふやな部分が後半になるにつれ増えてゆき、「今どうしてここにいるんだ?」「彼はどうなった?」「どうして場面が転換したんだ?」といった漠然とした疑問をクリアまで常に抱える羽目になりました。
なおクリアしてもそこまで納得できなかった模様。
なんとなくは理解しましたが、登場人物たちの描写がソフトなタッチすぎて繋がりを類推しづらかったり、写真の場面がどういった状況なのかが分かり辛かったり(ここは文化的な壁を感じる)、どうにもスッキリしない感が残りました。
戦争で罪を犯した若者→父が、息子?と向き合えるまでに回復するまでの物語……なのだろうか。
間違っていたらごめんなさい。
実績は全解除したので許して。
あ、個人的には懺悔室のシルエットが内的世界の雷を遮る手に替わり、砂時計の砂が鐘に替わって救済が訪れるところが白眉だったなと思います。
あそこのアートは本当に良かった。
以上、ここ最近遊んだSteam販売中のゲームのお話でした。
合うも合わぬも逢坂の関。懲りずに色んな作品を買いあさってボチボチと遊ばせてもらいましょう。
大作をガッツリやるのもいいけど、これくらいのボリュームのをサクサクやりたい時もあるよね。満足。
それでは、また次の日曜に。