週報タルトトタン

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#006 二匹の蛇、回る鍵、グノーシア考察

(2020.10.12 説明不足な部分を足したり、余計な表現を削ったりしました。)

 

 先週の記事で考察はしないと書きましたが、キャラ感想だけをアップするのも味気ない……と思い直し、考察もどきも一緒に載せてしまいます。
 考察と銘打っておきながら作中で明言されない部分に関しては推測、さらには勝手な想像を含むので、あくまで“考察もどき”の記事として話半分に流して頂けるとありがたいです。

 開発様いわく、設定資料集などで想像の余地を残すか否かの線引きが難しいというお話だったので、謎として残った部分は(解が用意されていたとしても)明確な答えを得られないままになるかもしれませんね。

 以下、「グノーシア」のネタバレをふんだんに含みます。プレイ中の方、未プレイの方は出来る限り回避してください。
 しかも悩んだ末に結論を出せない部分もあります。物語構造を正確に読み解く考察記事ではありませんので、その点にもご注意ください。

 

 

 

 

【セツが先か、主人公が先か?】

 前回の記事でも述べたとおり《銀の鍵》のデザインは尾を噛んだ蛇=ウロボロスです。それが示唆するとおり、セツと主人公を結ぶ因果関係はどちらが先か決めることのできない、いわゆる「ニワトリが先か、タマゴが先か」の状態になっています。

 セツの始点でセツが助かるには、ループしてきて《銀の鍵》を渡す主人公がいなければいけない。
 主人公がループするには、主人公に助けられてループを繰り返してきたセツがいなければいけない。
 セツ始点には主人公が必要→主人公始点にはセツが必要→セツ始点には……

 というように、一方が存在しないともう一方も成り立たない構造。
 通常のウロボロスと違うのは蛇が二匹いること。互いの尾を噛みあった一対の蛇、つまり始点と終点をそれぞれ補完しあっているセツと主人公の二人ですね。

 さて、この関係はどちらかの蛇が口を離すことで破綻します。
 ノーマルエンドでセツが言っていたとおり、セツが主人公に《銀の鍵》を渡さないと主人公がループできない=セツもループできない、ということ。

 (※ここからは作中の情報を拡大解釈した推測ですが……)
 グノーシア世界における宇宙は破綻をきたすと消滅します。
 破綻すなわち消滅、という等式が個々の存在にも当てはまるとすれば、ループ構造の因果が破綻したら「ループしている・した事実」が消滅するのではないかと考えます。
 この説はセツがノーマルエンドで主人公に言う「ループをなかったことにしたくない」という発言が補強します。
 また、セツ始点のループでラキオが主人公に「どうせ使うことになるンだろう」と《銀の鍵》を渡してくれたのも、ラキオなら「主人公はセツに鍵を渡してループさせないと“この場に存在できない”のだから、渡さなければならなくなる原因が必ず発生する」と結論づけたからなのでしょう。
 ストーリーにおいてこれ以上頼りになる存在はないぞ、流石ラキオ。

 つまりセツがループを抜ける=主人公に《銀の鍵》を渡さずに、自身の鍵も取り外す……という結果を得るには、主人公が《銀の鍵》を受け取らなくても主人公がループできるという一見矛盾した条件が成立しないといけなくなります。

 そういう訳のわからんウルトラCを実現するための「プレイヤー」だと考えれば、セツが「私のためのイレギュラー」と表現したのも納得がいきます。
 というか主人公のラスト特記事項からそれを理解して解法を見つけるって相当切れますね、セツ中尉。すごい。主人公(中の人)には到底できない。

 

 

【補足・主人公の最後の特記事項】

 これは考察というよりは蛇足。
 前の項で述べた「主人公特記事項:別次元から意識だけを飛ばしている」が何故「鍵を渡さなくても破綻しない」につながるのか、ということを改めて考えてみます。

 セツ視点から見れば、鍵を渡すために連れていった医療用ポッドの中身こと主人公は、間違いなくLOOP 1の主人公です。
 つまり何も知らないまま、記憶喪失状態で話し合いに巻き込まれる主人公であり、過去のプレイヤーです。
 しかしそのLOOP 1主人公が過去のループの記憶を保持している(ノーマルエンド時点でn回ループしているとして、少なくともn+1回目の状態)現象に立ち会ったことで《銀の鍵》が「主人公は別次元から意識のみを飛ばしている」と判断。

 本来はLOOP 1主人公がいるべき場面にLOOP n+1主人公が介入していることで、以下のことが分かります。

  ・主人公視点LOOP 1の宇宙に主人公が意識を飛ばしても(主人公の「始点」が破綻しても)、
   主人公自身は破綻せず存在している。
    → 主人公の「始点」は既に破綻しているので、セツが主人公に鍵を渡さずループを終えても、
      主人公が消えないことが分かる。
     → セツに鍵を渡す人物が消えないので、セツ自身のループもなかったことにはならない。

 説明があまり上手でなくて申し訳ない限りです。間違ってたらすみません。
 こう考えるとグノーシアにおけるプレイヤーって相当ヤベー奴ですね。

 

 

【グノーシア世界の宇宙について】

 この項はだいぶ主観が混ざってきます。なんせ夕里子様が明示して下さらないので。

 作中に述べられているとおり、破綻すると消滅する宇宙“群”がグノーシア世界です。
 この宇宙はどれも「なんか矛盾っぽいんだけど認知を曲げて説明をうまくつけられればセーフ」というやわらか〜い性質を持っています。
 (もっと厳しかったら、主人公がDay0に飛んだ瞬間に即破綻・崩壊してもおかしくないので……)

 セツがノーマルエンドでDay0宇宙を去れば「セツの存在がなんとなく無かったことになる」とか、主人公がグノーシアに襲撃されたあとの宇宙にループしてきても「なんとなく消えてなかったことになる」とか、割とアナログな方法で自動的に解決されます。
 どうやら歪みに気付けるだけの情報を持っている場合にはこの影響を受けない(例:ノーマルエンドのククルシカ)ようですが、程度や条件は謎です。

 いかにも「何者かに造られた宇宙」っぽい設定なのですが、作中においては何者がこれを創造せしめたのかという部分については明かされません。
 唯一出てくるのは、夕里子が認知の歪みを正すときに言及する「狂える神々」だけ。
 で、明かされた限りではストーリー上の敵「グノース」は決して神のような超常の存在ではなく、電脳化された人々のデータベースに巣食う自己拡大欲求を持ったエラー的な何か……のはずです(もし間違ってたらすみません)。
 つまり宇宙の創造とはまた別の存在と思っておいて良さそうです。もしかしたら裏設定的にはつながりがあるのかもしれませんが、劇中の情報だけでは恐らく導き出せない。

 なので、夕里子の言う「狂える神々」はグノースとは別の存在であり、元ネタのグノーシス主義でいうところの「不完全な宇宙を造った偽の神」にあたる存在なのかもしれません。
 ただ電脳化に関わる星舟の巫女がそれを知りうる、矛盾をカバーするために捻じ曲がった因果を感知・修正できるというのはちょっと謎ですね。
 もしかしたら電脳化技術はグノーシア宇宙の根幹に関わる何かをコアにしているのかもしれません。さらにはそれを外に知られるとマズいことがおきるので厳密に秘匿されているとか……?
 この辺が明かされたらグノースと偽の神との関係性も見えてくるかもしれません。

 グノーシアがグノースの元に人間を送るときも、電脳化するだけなら肉体が残ってもいいはずなのに、肉体まるごと消失させる。
 ラキオと二人でグノーシアになるループで「汎可能性演算を使う」「グノースと接続される」などの表現を使いますが、これをザックリと「ワープ時はネットのようなものに繋がる」「ので、電脳サーバにいるグノースに接続できる=人間を転送できる」と解釈するなら、多分電脳化とグノーシアの襲撃は似たようなことをやってるかもしれませんね。ステラも電脳化で肉体は失われるって言っていたし。
 やっぱり肉体まるごとデータ化するという技術はグノーシア宇宙の真相に迫っている気がするのですが、あくまで想像にすぎないので、この辺の考えがもし公式情報で覆ったら笑ってやってください。

 

 

【鍵所持者の「過去」と適用】

 さて、前述のとおりグノーシア宇宙においては、ループ等による何らかの介入を受けると「なんとな〜く説明をつける」ことで矛盾を解決しようとする現象が発生します。
 じゃあ変化するのは宇宙の側だけなのか? というと決してそうではなく、ループによる闖入者に対してもある程度変化は適用されるようです。

 各ループにおいて、13人の乗員たちだけでなく、セツや主人公の役割まで変わっているのがこの項の根拠となります。
 SQちゃん曰く、それぞれの宇宙において過去が少しずつ違うから現在=結果も同じように違ってくるらしい。
 では、ループしてきた者(侵入先における過去からは連続しない存在)の役割がなぜグノーシア汚染されたりされなかったりするのかというのも、おそらく二人の「過去」が捏造された上で上書き適用されているから、と考えていいはずです。

 前のループでグノーシア汚染されたのに次のループでは乗員になっている、という現象もこれである程度は説明できるかと思います。
 (この辺は突き詰めるとループ者の自己同一性って何なんだよ、となってしまうので難しいですが……)
 (境遇は引き継ぐけど意識は乗っ取る、というイメージがちょうどいいかも)

 二重存在まで勝手に解決してくれるほど歪みは万能じゃないんですかね? この辺は謎です。

 

 

【銀の鍵を「抜く」って何?】

 この項はあくまで仮説です。さらには本編に対する読解不足もあるかもしれません。ご了承ください。

 セツがラキオに聞いた話では、《銀の鍵》を寄生者から引き剥がすには「別宇宙への扉を開く」と「扉を通り抜けた先の別宇宙側から《銀の鍵》を引き抜く」の2ステップが必要になるということでした。
 この「鍵を抜く」って何だぜ? というのが正直今もよく分からない。
 ノーマルエンドラストのセツ通り抜けシーン、真エンドラストのククルシカ通り抜けシーン。この2つをセットにして考えてみましょう。
 考えうるのは下記の2パターンです。

 

◯仮説1.扉を抜けた者(寄生鍵の有無は問わない)が、抜けた先で「開けるのに使った鍵」を回収する
 事象1.主人公の持つ鍵Aを、セツが引き抜いて持って行く → セツの持つ鍵Bを、ククルシカが引き抜いて持って行く

 とりあえずはこちらが有力候補です。
 ビジュアル的にどうなっているのかは分かりませんが、《銀の鍵》で別宇宙への扉を開くと「鍵が刺さった状態」になり、その刺さった鍵を抜かない限りは扉も閉まらないし元所有者から剥がれることもない、という解釈ですね。

 問題ないように見えるのですが、ちょっと困ったことに、これをすると主人公始点(プレイヤー視点におけるLOOP 1)の宇宙のラキオ所持《銀の鍵》はどこにあるの? となってしまう。

 ここも明言されていないので憶測を多分に含みますが、ラキオの元々持っていた《銀の鍵》が、セツの鍵Bの侵入を受けてどういう挙動をするか、というのがポイントになります。

  ・ラキオの所持していた《銀の鍵》はセツに渡された鍵Bと同一存在なので、
   セツが宇宙にループしてきた時点で消滅=セツに既に渡っていた、という事実が上書きされる。

  ・ラキオの所持している《銀の鍵》はセツの鍵Bとは同一存在だが、別宇宙の存在で経緯が違うため、
   あくまで別物である(鍵B’として見る)。同時に存在しうる。

 これは、別のループでラキオが「君が鍵を持ってたンだ? 道理で見つからないと思った」みたいなことを言っていた(うろ覚え)のを考えれば、前者であるとみていいでしょう。

 以上を踏まえると、真エンド=LOOP 1における鍵Aはノーマルエンドから抜き取ってきた主人公の鍵Aであり、別宇宙へ飛ばされたククルシカが持っているのはセツから抜いた鍵Bである……ということになります。
 主人公の鍵Aは主人公に渡される予定だったと考えると、主人公の鍵は回り続けることになりますね。どこから来たんだこれ?
 (どうも公式情報では「プレイヤーが介入したから発生した」らしいと小耳にはさみましたが、ソースが見つからないため深掘りはしないでおきます。もし本当ならいろいろ納得)

 しかしここで矛盾が発生します。
 セツとククルシカが持っているのが同じ鍵B、つまり同一存在であるなら、ラキオが所持する鍵が別ループで消える現象の説明がつかない。
 今までのループでセツとククルシカが同時に存在できている=「鍵Bが二つ同時に存在している」というのと「ラキオの所持していた大元の鍵B’が消えてしまう」という現象は(少なくとも私が得た情報だけでは)両立できません。
 私のロジック5では解決できない問題です。いいんだよかわいげがあれば!

 まあこの部分の解決はともかく、この仮説1において鍵Aは抜かれてセツの手元(不活性状態)に、鍵Bはククルシカが抜いて主人公始点かつセツ終点の宇宙から消える、という道筋を辿ります。
 主人公に渡されなかった真エンドの鍵Aはどうなるんでしょうね。ラキオに返還されるんでしょうか。だといいね。
 でも君なんでそれ持ってたの?(いらぬ脇道)

 

◯仮説2.扉を抜けた者(鍵所有)が、抜けた先で「自分の鍵を使って」扉を閉じる
 事象2.主人公が鍵Aを使って扉を開け、セツが鍵Bを使って閉じる → セツが鍵Bを使って扉を開け、ククルシカが鍵B’を使って閉じる

 これはちょっと強引なのですが、上記の矛盾点を解決すべく考え出した別解釈。
 作中情報と食い違う部分も出てくるのでちょっと苦しい。あくまで別解というか、思考実験どまりの仮説です。

 扉を開け閉めすることを「鍵Aにより扉を開く」「鍵B所持者が向こう側で鍵Bにより閉じる」「鍵Aは消滅する」の工程からなるものと解釈した場合ですね。
 その場合、LOOP 1で主人公に渡される鍵は、セツがコールドスリープ中のラキオの部屋からパチってきた(!)鍵B’である、ということになります。

 だいぶ苦しい見方ですが(セツと主人公の《銀の鍵》まで同一存在になってしまったりするので……)、以下の部分の説明がつくようになるのがイイところ。

  ・真エンドで、セツの鍵Bを抜くためのククルシカが「鍵を持っていなければいけない理由」ができる。
   (もちろん鍵すなわち永遠の命がなければ説得できなかった、という事情もありますが……)
  ・LOOP 1もしくは真エンド冒頭にて、セツがその場で主人公に《銀の鍵》を渡さないことの説明がつく。

 扉の先で抜いた鍵をそのまま使える(不活性状態の鍵になる)のであれば、主人公から抜いてきた鍵Aを渡したあと、セツが扉を開けて鍵Bを主人公に抜いてもらえば良いっちゃ良いんですよ、実は。生まれたての主人公がそれに納得するかは別問題になりますが。
 ん? でもそれはこの仮説でも言えるか。……分からなくなってきた!

 (追記:この辺は勢いで書いちゃってだいぶ無理があったり説明が苦しかったりするのでナシで……すみません……)


 ……色々考えましたが、やっぱり仮説1の方が無理がないように思います。
 少なくとも言えることは、セツが鍵Bを取り外すには「扉の先で鍵を抜いてくれる人を見つけること」「主人公に鍵を渡さなくても主人公のループした事実が消えないこと」の2つの条件が必要だったってことですね。
 無理やりまとめてしまった。混乱してきた。

 

 

【セツの二重存在問題】

 この点については一切答えが分かってません。ので考察というよりは「どうなんですかコレ?」という話になります。

 主人公がグノーシア0人の宇宙に居られない理由は「グノーシア0人宇宙では“主人公が助かっているから”」、つまりグノーシア汚染発覚の原因として自分が第一被害者になった宇宙でないと二重存在の矛盾が生じてしまうから。

 じゃあセツは? 何故ループ先で存在できるのか?

 ループ者として宇宙に侵入している以上、そこに居るための理由づけ=歪みが生じているはず、というのは前の項で説明しました。
 なので「居ないはずの主人公」に対して夕里子はワー歪んでるじゃんお前! ワー! と突っかかってきますし、アッ! されたラキオも敵意を剥き出しにしてくる訳ですね。

 ではセツは何故目の敵にされないのか?
 その宇宙に存在したネイティブセツ(語弊を生む表現)はどこへ行ったのか?
 グノーシアに消されているなら「生きているはずがない」。
 例えばルゥアンで避難時に皆を守って殉職していたとしても「乗船しているはずがない」。
 問題なく乗船できて、かつ消滅していないのなら、絶対に二重存在のパラドクスが発生する。
 そもそもその宇宙に存在していない? だとすればLeViが身元照会できないから、その線は薄い。

 いずれにせよ、夕里子もセツの歪みに気付くはずです。

 認知の歪みの話においてセツが一切言及されないのは何故か? 別次元から介入しているプレイヤーと違って、もともとグノーシア宇宙に存在している「キャラクター」だから? まさかそんなことは……。

 まあ描写されていないだけで夕里子もラキオも密かに(アイツも歪んでる……)と気付いていたかもしれませんしね。そこは分からない。
 夕里子がセツを「狂言回し」と表現している場面もあったと記憶しているので、少なからず何かしらの違和は感じ取っていたと思われます。

 そもそもプレイヤーが持っている情報がグノーシア宇宙の全てではない、というのはまず確実ですので……。
 夕里子が教えてくれない色々の真相はもちろん、セツが主人公抜きのループを経験しているらしいことも分かっているので、セツだけが経験したアッ! イベントなんていうのもあったかもしれませんし。

 

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セツと《銀の鍵》の情報を共有している場面のスチル。

主人公と思われる“nn”がメンバーに含まれないループがあることが分かる。

主人公のループには必ずセツが存在するので、ループ回数はセツ>主人公であることが確定する。

 

 

 

 と、ここまでダラダラと書いていたら結構な文字数になってしまいました。
 本来は個々の人物について推論も交えて語りたかったのですが、これに続けて書くと記事がハイカロリーになりすぎる(あと次のネタがなくなる)ので、それは次回以降に回すことにしましょう。
 考えることが多すぎて語り切れない。グノーシアは名作。

 という訳で今回はここまで。
 また次の日曜に。