週報タルトトタン

よく寝て、よく食べ、日曜ものかき。

#033 はぐれABBA 天丼派


 人間生きてりゃ無性にツボに入ってしかたないものの一つや二つ、どこかしらで出会うもの。
 自分でなくても、例えば何気なく放った一言が誰かの笑いのツボにヒットしてしまって、暫し会話を中断せざるを得なくなったなんて場面、経験ないだろうか。
 あるいは家族でM-1でもエンタの神様でも眺めていて(番組名に世代を感じる)、自分だけ妙にウケてしまって「そんなに?」と言われるようなワンシーン。
 大抵、笑い転げている側が「なぜそこまで面白がっているのか」と言わんばかりの冷ややかな目で見られる。
 笑う人間も笑う人間で、腹筋が攣りそうになる一方でどこか冷静に「どうして自分だけ……」と己の置かれた状況の理不尽を思うのである。
 そんな大層な話なのか。
 大層じゃない気がする。
 まあでもあるじゃない、そういうの。
 みんなちがってみんないいけど、笑いのツボが突如としてはぐれ小島になってしまうとそれはそれで寂しいアレ。
 友達と一斉にワーッと駆け出したつもりが、振り返ったら誰も走ってきてませんでした、っていう子供時代の思い出がよぎるアレ。

 

 なぜ急にそんな話をしだしたかというと、最近になって久々にその「はぐれツボ」に出会ってしまったからで。
 私としては間違いなく笑える部類のものなんですが、「xxxxx 笑える」「xxxxx シュール」「xxxxx 面白い」などで検索しても似たような感想を持つ人が見当たらないし、某動画のコメントを漁ってみても、私の想定する方向性でウケているようにも見受けられない。
 とにかく謎。
 なぜこんなにギャグ的に受け取られてないか、謎。

 

 別にもったいぶるつもりはないのでさっさと言ってしまうと、そのツボの所在は「ABBA“Money, Money, Money”のオフィシャル・ビデオ」です。

 「ABBA“Money, Money, Money”のオフィシャル・ビデオ」です。

 (なんとなく二度言って強調してみた)

 

 

 ABBA
 男性二名・女性二名の音楽グループ。スウェーデン発。
 主に活動していたのは70~80年代とのこと。Wikipedia調べ。
 世界のヒット・チャートを席巻していた当時の彼らをリアルタイムで追えていなかった世代(1980年以降生まれくらい)でも、「ダンシング・クイーン」のイントロや「チキチータ」のサビを聞かせれば9割くらいは「あっ、知ってる!」って答えるんじゃないかな。名曲は時代の垣根を越えるもの。
 というかカーペンターズに並んで日本のTV最後の黄金期(90年代~00年代前半を想定)でしょっちゅう引用されてた気がする。
 みんなどこかしらで聴いてる、有名どころ。

 

 その大御所のオフィシャル・ミュージックビデオのどこがそんなに面白いのかって、正直に白状すると明確にはご説明できないのだけど、ものすごく疲れているときにふと検索したらヒットしたMVにしこたま笑わされる不条理ったらない。
 とりあえず順を追って見ていこう。
 全貌はこちらの埋め込みからその目で確認していただきたい。

 私と同世代なら絶対に聞き覚えがある、「いきなり!黄金伝説。」でしょっちゅう使われたあの名曲(番組名に世代を感じる)
 以降、逐一ツッコミながらMVのシーンを追っていきますが、ABBAのメンバーの方々およびMV制作に携わった方々は大真面目で制作されたのであろうことは承知しておりますので、色々ご勘弁くださいませ。
 わるいのは笑いの神によって無造作に配置されてしまった私のツボです。
 ゆるして。

 

 

 

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 お馴染みのイントロからスタート。

 

 

 

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 なにやら緊迫した様子のフリーダ女史。街中を所在なさげに彷徨います。

 

 

 

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 “I work all night, I work all day, to pay the bills I have to pay...”

 シリアスな歌詞とともに現れた抽象的なカット。

 

 

 

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 ん?

 

 

 

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  “Ain't it sad?”

 謎のズームイン。
 ちょっとフフッときますがまだ分かる領域。

 

 

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 “That’s too bad”

 音ハメと正面顔。
 既にゴリ押し感から生まれるシュールさが顔を出してきてます。顔だけに(?)。

 その後、シリアスなAメロが続き……
 サビの直前まで迫り……

 

 

 

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 バーン!

 

 バーンじゃねえんだわ。

 

 歌詞的にもだいぶ直接的な歌ですけど(ハァ~金持ちのオトコ作って遊び暮らしたいわ、ダメならカジノで一山当ててやるわ、ああでも実際はスカンピン……って歌)こう、あまりにヒネリも何もないイメージでバーン! ってやられると思わずツッコミたくなるじゃん……。

 

 

 お待ちかねのサビ。
 民族調の衣装を身に着けシリアスな面持ちでサビを歌い上げるメンバー。

 

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 ABBAの中のBB部分のお二人、ビヨルン氏とベニー氏が"Must be funny in the rich man’s world"と語り掛けます。

 

 

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 いや何でそこをアップにするの?

 フレームアウトしきらないお二人の頭がチープさに磨きをかけている奇跡のカット。
 笑いの神様(地域・個人限定)がニッコニコに微笑みかけてきています。アーメン。

 

 

 

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 ABBAの中のAA部分のお二人、フリーダ女史とアンナ女史が続くサビを歌い継いでゆき……

 

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 流れるようにフレームインしてくるBBコンビ。
 曲のコンセプトは理解するけどあまりに表情が真剣だからこっちがおかしいように思えてくる。

 

 

 

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 いやそれは分かったから!

 

  


 

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 アア~~~アアア~ア~~~~~。

 フリーダ女史の伸びやかな美声に心奪われた矢先、

 

 

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 だから何なのそのズームインは!
 ズーム&目線INが定石化してきてもはや天丼だよ!
 こっちはもうどのタイミングでこっち見られても笑う状態だよ!

 

 

 

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 “If I had a little money...”

 

 この辺りで「分かってやってる説」が持ち上がってくる。
 “If I”に合わせたフリに「もう分かった、分かったからもう勘弁して」という心境に至り始める。

 

 

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 モーションブラーかかりまくるし。
 (それはあえてそういうコマを選んでるからでもある)

 

 

 

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 あっ。

 

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 ABBAは二度刺す。
 さっき見た! これさっき見たよ!! ボク覚えてるもん!!!

 

 

 

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 ポーン!

 (このカットはちょっとお洒落で好き)

 

 

 

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 最後のサビの一山。

 ここまでで何度か出てきた「リッチなABBAのメンバー」のイメージが出てきて、ああこれが“A rich man's world”なんだな、歌の世界の中では決して届かないものなんだな~(現実のABBAは届いたけどね)と余韻に浸る。

 

 

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 諸事情により別動画から拝借。
 導入と同じピアノのカット。物語の終わりが綺麗に締まった印象を与えます。
 と、気を抜いた矢先……

 

 

 

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 ABBA全員による「現実のイメージ」が差し込まれて、転落を印象付けます。
 もうコンセプトとか抜きで、「歌いながらこっちを見られる」が笑いのトリガーになってる人間からすると、不意打ちでンフッとなります。

 

 

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 だからなんでそこをアップにするの!
 もうええわ!

 

 

 といった感じで、具体的に書き出してみると
  ・繰り返しの似たような動き、カメラワーク
  ・始終シリアスな表情で演じることにより醸し出されるシュールさ
  ・なんでそれ入れたの? というような謎カット
 がボディーブローのように効いてきて、結果としてエグイ角度でツボにヒットしてしまったらしい。
 他人事のように言う!


 この記事を作るためにYouTubeで公式動画を再生速度0.25で流しつつ、戻し戻しスクショを撮るなんて地道な作業をしてたら、笑える笑えないを通り越して「なんで私はこんなことしてんだ」という虚脱感に襲われたことをここに書き残す。

 なお、“Money, Money, Money”だけが突出してキレッキレの出来なのかと思いきや、

 

 

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 ※“Knowing Me, Knowing You”より

 

 

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 ※“Super Trouper”より

 割とほかのMVも同じ調子で私が歓喜の舞を踊り狂った、というのも申し添える。
 ちなみにあの「世界でいちばんダサいPV」で有名なArmi Ja Dannymの“I Want To Love You Tender”はフィンランドだし、もしかして北欧の文化圏ではこれが通常運転だと言うのだろうか……?
 ちょっとDigってみる必要がありそうだ……。
 (なおダサいダサいと呼ばわりながらも曲は歌謡調で染みるよね、というのはお伝えしておきたい)

 

 

 ここまでネタにしておいてなんですが、もちろんABBAは好きです。
 ダンシング・クイーンの煌びやかで潤ったピアノいいよね。


 そんなこんなでABBAに終始した日曜日となりました。
 今度は何を書こうか。

 また次の日曜に。