週報タルトトタン

よく寝て、よく食べ、日曜ものかき。

#013 CLOUDPUNK、ひた歩く


 こないだのSteamハロウィンセールでポイポイと買ったゲームのひとつ、『CLOUDPUNK』が非常に好みの雰囲気でした。大当たり。
 今週はその辺のジャンルに思いを馳せてみます。
 いつものことながらネタバレ配慮は致しませんのでご注意を。

 

 

 ポイントからポイントに移動してストーリーを読み進めるタイプのゲームはなんて呼べばいいのだろうか。
 CLOUDPUNKに関しては移動が歩行:HOVAの運転で半々くらいなので「ウォーキングシム」に括ってしまうのはちょっとズレてる気もします。ウォーキングシムがなんたるかをきちんと理解している訳ではありませんが……。
 移動、または移動中の演出に重点を置いているゲームということで、本記事では「移動ゲー」と表現してみます。


 雰囲気がいいワールドをダラダラ歩いたり、あるいは乗り物をトロトロと走らせたりするのは、ACTやRPGでは得られない心地よさがありますね。
 最近で言えば『DEATH STRANDING』がジャンルとして近いかな。苔や雑草に覆われた荒地をただただ歩いて目的地へ向かって行くだけなのに、なぜかじんわりと面白くて止め時が見つからないあの感じ……。荒れ果てた(廃墟どころか文明の痕跡さえ見受けられない)アメリカ大陸、という舞台設定もチルなかんじでした。
 さて、ではCLOUDPUNKの舞台はどんな世界かというと……

 

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 絶大なテクノロジーを誇りつつも、どこか退廃的な大都会。ピクセルアートで描き出されるニヴァリスという街へ主人公ラニアが転居してきたところから物語が始まります。
 エッ!!
 超絶サイバーパンク!!!

 

 このニヴァリスサイバーパンク世界に必要な要素は全部揃っています。

 

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 謎日本語、

 

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 謎ラーメン、

 

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 裏路地の雑配線、

 

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 大量ネオンのビルディング!


 雨止まぬカオスの街に訪れたイースタン半島出身のラニアは、半合法の運送会社CLOUDPUNKの一員となって地区から地区へ、お客からお客へと荷物(ときどき人間)を運んで回ります。
 大枠で言ってしまえば、それだけ。
 ストーリーの進行方法も一貫して「移動」で、その合間合間に挟まれる登場人物たちの会話を通して世界観への理解を深めていくことになります。
 ポイントからポイントへはHOVAと呼ばれる空飛ぶ車両に乗っていき、目的地の近場の駐車場にHOVAを降ろしたあとは徒歩でテクテク向かうような流れ。どこにでもHOVAを停められるような自由さはありませんが、ニヴァリスは一歩間違えれば海に真っ逆さまの“雑”海上都市なので、それを許しちゃうとHOVAがどっか行っちゃって絶望する場面も出てきそう。これは仕方ないね。

 

 あくまでそれだけで、ストーリーも序~中盤までは割と起伏の少ない展開が続くので、プレイヤーとしては「専門用語がわからない」「地理がわからない」「知っている人がいない」の正しく一人暮らし始めたての状況に放り込まれたような心地になります。

 ストーリーに関係のない食事ポイントが豊富なので、要所要所で謎ラーメンやらケバブやら水(ディストピアなので綺麗な水も貴重)やらを食べ歩くのもまた楽しい。そうやって歩き回るうちに少しずつ街に慣れてくる感じがこう……イイですよね。
 移動ゲーの楽しさって、そういう「その世界で生きてるロールプレイ」にかかっているかもしれない。

 

 雰囲気づくりに一役買っているのが光源処理。これが本当にこだわって作られてるんですよ。
 見てくださいこの窓辺の明かり。

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 夕方の住宅街の窓灯りフェチにはたまらない!!!!!!(ニッチがすぎる)
 アー!! 最高です!!!!!

 

 ちなみに肝心のストーリーがどうだったかというと、……ウーン! 今一つよく分からなかった!!

 街の整備・拡張を担うAIの「CORA」が限界を迎えて都市に異常をきたしていて、それをどう解決するか。
 CORA自身が二人の人間に判断を託した……というのが最終局面だったのかな? くらいの認識です。合ってる?
 街に染まり街を知り尽くしている支配層の一人だけではなく、街に来たばかりの移住一日目なラニアにも目を付けたのは、ニヴァリスのために取る選択が「ニヴァリスの外」にどう影響するかをジャッジする視点が欲しかったからなのかもしれませんね。

 ただラニアは相棒のカミュが言及していたとおりこの街より故郷の方がずっと好きでしょうし、プレイヤーもそこに至るまで10時間ほどしかCLOUDPUNK世界と付き合っていないので(それこそ日が暮れてから夜が明けるまでくらいの時間!)ニヴァリスを救おう! またはCORAを助けよう! という強い情動は生まれなかったというのが本音。
 とはいえ、そういう着かず離れずでドライな作品との距離感が却って絶妙なクリア後感を生んだような気がします。
 ああ、夜のシフトが終わった……くらいの適度な達成感と疲労感があってね。

 

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エンドロールもネオンネオンしててまったくクール。

 

 

 積極的に布教して回るほどではないですが、某2077にサイバーパンク欲をさんざん煽られた揚げ句お預けされてしまい悶絶している同志に対しては自信を持ってオススメできる一作でした。
 同スタジオの次回作が来たら是非チェックしたいところ。

 

 今回はここまで。
 また来週。