#071 風ノ旅ビト、忘れ得ぬ砂漠めぐり
結局あれは何処の誰だったんだろう。
袖振り合う縁に思いをいたす、素晴らしいゲームの話をしよう。
今週はPS3、PS4、Steamでリリースされている『Journey / 風ノ旅ビト』の話です。
このゲーム、私めちゃくちゃ大好きで、初めてPS3で出会ったころから事あるごとにプレイし、新しいプラットフォームに移植される度に購入&トロコンし、今もまた懐かしく思い出しているところです。
ゲームの構造としてはこれといって特筆すべき点はないのですが(古いゲームですしね)、その体験や、世界を彩るアートワーク、音楽、全てが記憶に深く刻まれています。
今もSteamで手に入れやすい環境にあるので、まだ知らない人は是非この世界に触れてほしい!
ということで、本記事は未プレイの方をターゲットにネタバレ控えめ・紹介目的の構成となります。
ストーリーを知ってしまったから/画像を見てしまったからゲーム体験が大きく損なわれるということは基本的にありませんが、個人的には初めて“見る”体験や“出会う”感動を大切にしていただきたいのであまり深くは突っ込みません。
もし少しでも興味を持っていただけたのならPSストアやSteamで買ってプレイしていただきたい。
2時間くらいで1周できるライトなゲームだよ。
サッと概要からご紹介しますと、Journeyは「雰囲気ゲー」「癒し系ウォーキングシム」「ゆるいマルチプレイヤー」の要素で構成されるコンパクトなゲームです。
ABZUをプレイしたことのある方なら、雰囲気はそれに近いと思っていただいて問題ないかと。
SKYはまだ触ったことがないのですが、聞きかじった限りではこちらも近いのかなと思います。デベロッパが同じだしね。
赤いポンチョと頭巾のようなものに身を包んだ姿のプレイヤーは、砂漠の真ん中で目を覚まします。目の前には光り輝く山の頂。これを目指して進む巡礼の旅が、Journeyのストーリーです。
途中途中で壁画や光の玉などの収集要素を見かけるかと思いますが、これは別に必須ではありません。
壁画は本当に純粋なコレクション用ですが、光の玉はエネルギー=帯の長さ=飛べる距離が伸びるので、あった方が嬉しいかも。
とはいえ取り逃してもゲームクリアには関わらないので、気にせず好き勝手に進んでいきましょう。
この、砂漠のサラサラ感がいいのですよ。
最初のステージからもう分かるかと思いますが、砂山の上からサラーッ……と滑り降りるときのグラフィックの表現、SE、これが本当に癒し。
邪魔にならない静かなBGMも各ステージに合った美しい曲ばかりで、プレイしながら眠くなることもしばしば。
ややアジアンな鐘の音が耳に染み入る。東~東南アジアのにおいがする。
プレイヤーキャラは座禅を組めるようになっていたりと(操作しないで一定時間放置するか、特定ボタンを押せばチョコンとお座りしてくれる)、音楽のみならず動作、更にはステージ構造からも仏教的なモチーフが透けて見えます。
かといって、なんちゃってアジアの枠には収まらず、仏教圏の意匠は極力薄められており、特定文化の匂いのしない中立的でマットな世界観が絶妙なバランスで成立しています。
そのコンセプトが、言葉のないゲーム世界をさらなる静けさへと導いていますね。頭が休まって心地いい……。
さて、本作は先述の通りマルチプレイのゲームです。
といっても不特定多数のプレイヤーが集まってワチャワチャやるような賑やかなマルチではなく。
ある時突然、ひとりのプレイヤーとすれ違う。それだけ。
マルチプレイの上限は2人だけで、1人と出会えばそれ以上は出てきませんし、その1人とはぐれればまた別の1人がやってきます。あるいは、同じ時間帯に同じステージにいる人がいなければ、誰とも出会えないなんてこともあります。
誰かが同じ世界にいる時は、相手のいる方角の画面端がこんな風にぼんやり光ります(↑画像、下辺左側)。
あなたがその誰かに会ってみたければ、その光を追っていけばいい。独りで歩き回りたいのであれば無視してもよいでしょう。
プレイヤーに与えられた動作は、
・歩く
・跳ねる(長押しでちょっとだけ飛ぶ)
・声を出す(通称「ぽわ」)
・座禅を組む
この4種類だけ。
チャットはありません。コミュニケーションを取るためのジェスチャーもありません。フレンドと合流するのも意図的にはできません。
もう、文字通り一期一会です。
相手の名前どころか国籍も分からないけれど、とにかく出会った相手は中身が人間であり、Journeyを同じタイミングでプレイしていて、同じワールドでマッチングした。
それ以外は「私と同じ姿をした旅ビトである」くらいしか分からない、偶然の結晶のような出会いです。
相手に会えて嬉しければくるくる歩いて回ったり、跳ねたりすると伝わるかもしれません。
声をポポポポと出すことで感激が伝わる場合もあるでしょう。
あるいは光の玉のありかを教えてもらい、お辞儀のかわりに座禅を組んで、立って、の動作を繰り返す場面もあるかもしれませんね。
ステージを見て回るテンポが合わなければ、無理に追いかけないでいれば自然とマッチングが切れます。確か一定距離で切れるようになっていたはず。
あるいは、相手と一緒に行きたければ(または相手があなたに付いていきたいような素振りを見せたら)、言葉のないコミュニケーションを精一杯とりながら共に進んでみましょう。
絶景があったら声を上げて伝えてみると楽しいかもしれません。相手に伝わるかは未知数ですが。
※ちなみに声はボタンを押す長さで大きさが変わります。
※また、声は自分以外のプレイヤーのエネルギーを回復してあげられるようになっているので、相手がエネルギー切れで困っていたら声をかけてあげる(物理)といいかも。
この単純なコミュニケーションの世界に魅せられて、もうそろそろ10年になります。
初出が2021年3月13日なんですって。もうそんなに昔になるのか……。
ゲームの世界がどれほど高性能になろうと、この「歩く」と「ジャンプ」と「ぽわ」だけの会話の魅力は色褪せません。
できれば、もし出会ったプレイヤーと気が合いそうだったら、最後まで一緒に駆け抜けてみてほしい。
二人でたどり着いたゴールからの景色は格別だから……。
もちろん完全ソロプレイでもこの砂の世界の魅力は十分に味わえます。
ステージには随所に絶景ポイントがあり、また絵画だけで示されるストーリーは想像の余地を多分に含んだ興味深いものです。
またグリッチの世界も奥深く、ほぼすべてのステージに「裏世界を歩いてみた」な動画が存在します。私も度々裏世界へ足を運びました。表とはまた違った美しさがあるんですよ。素晴らしい。
トロフィーもちょっとした努力だけですぐにコンプリートできます。PS3、PS4、Steamと3回もトロコンしている私(ぬるゲーマー)が言うのだから間違いありません。
ホント、マルチプレイが苦手でなければ、特に複雑なコミュニケーションに疲弊しているような大人に一度はプレイしてもらいたい。きっと子供のころに経験した懐かしくもシンプルな気持ちになれるから。
あの砂漠は、「遊ぼう」「いいよ」だけで会話が完結したあの簡単でやさしい世界に束の間戻してくれる……。
今プレイしてもちょくちょくマルチに人がいるということは、私と同じようにあの砂漠に魅せられた人が一定数いるということなのでしょう。
だって見てくださいよSteamのレビュー欄。エモに当てられてエモを吐き出してる人たちの集まりですよ。ええ、私もあれです。
だらだらと書き連ねましたが、結局何が言いたいのかというと「興味があるなら是非やれ」の一点のみ。
たったの1,520円ですよ。2時間ですよ。
あの時間を思えば何の惜しいことがあろうか!
Skyは果たしてあの夢をまた見せてくれるのだろうか。そろそろDLしてやってみようかな。
もしJourney並みの衝撃を受けたら、またこのブログに書きつけようと思います。楽しみ。
そんなところで今日はここまで。
また次の日曜に。