週報タルトトタン

よく寝て、よく食べ、日曜ものかき。

#075 オタク、文庫本作る

f:id:tarte-tutan:20220206215835j:plain

 先月、生まれて初めて同人誌というものを作りました。
 結構本格的なカバー付き文庫本だぜ! 市販のものに混ぜてもギリばれないクオリティだぜ!

 

 これがまためちゃくちゃ面白~! な体験だったので、備忘録がてら作業工程をブログにしたためておきます。
 もしかしたら、所謂“字書き”の方の役に立てるんじゃないかと願って。

 

 なお、内容は「とあるゲームの二次創作の」「百合要素をふんだんに含んだ」「大部分が個人的な趣味で構成される」小説です。
 特定を妨げるものではありませんが、この記事はあくまで“ど素人が本を作るまで”に焦点を当てて書くので、内容および属するジャンルは意図的にボカしています。
 やろうと思えば(ボカしますが情報を完全に隠蔽しているわけではないので)頒布サイトにたどり着けるかもしれません。もしご興味がありましたら是非ポチってね(ダイレクト宣伝)。

 

 初心者こと私がつまづいた箇所について解説のようなことも書いてみようと思いますが、説明が足りなくて「なんでそこ飛ばした?」な部分があったらすみません。
 そういうのはきっと百戦錬磨の同人者に尋ねるとよいです。私はそうした。
 身近にいない? ならGoogle先生に訊けばよろしい。細かいところは先生が連れてきてくれるネットの同人者たちが教えてくれます。
 多分ね。

 

 

 で、まずは工程を細かく分けてみましょう。各項にチョチョイと説明を加えていきます。

 

 ① 中身を書きます
 ② Wordのテンプレに流し込みます
 ③ 校正、細部調整をやります
 ④ カバー表紙と表紙を作ります
 ⑤ 最終チェックをします
 ⑥ 印刷所さんに発注します
 EX. 通販サイトに登録します(任意)

 

 お品書きはこんな感じ。
 製本だけなら作業期間はだいたい1か月もないくらい。
 日常的にWordとかを使ってる人ならまったく苦戦しないと思う。
 私はどちらかというとExcelの民なので、初めて使う機能とかがたくさんで結構戸惑いました。面白かったな。新しいことをやるってやっぱり楽しいね。

 では以下から各工程についてのきわめて主観的なご説明。

 

 ① 中身を書きます

 書くだけです。

 

 ……ンな簡単な工程じゃないのよ!

 当方きわめて遅筆であり、なおかついろいろな出来事がありまして、ブランク込みでここが一番時間かかりました。当たり前だよなあ!
 もちろんここの重さは個人差がありますが、私の場合は「自分を叩きすぎて血尿出るかと思った」レベルですかね。愛情かけすぎた。楽しかったけど。

 実際、この部分の楽しみって他人から褒められるとか認められるとかよりも、「自分が欲するものをどれだけ趣味詰め込んで成り立たせるか」を突き詰める工程それ自体にあるように思うんですがどうでしょうか。鍛冶の如く自分自身を打ち据える過程で血が滲むのもまた致し方ないこと。二次創作ならそこに作品への愛情も上乗せ。ラヴよラヴ。
 ちょっと! そういう話はしない約束でしょ!
 (つい……ついね……)

 

 ここがだいたい2019年12月~2021年12月の出来事です。
 二年間常に書き続けた訳ではないのですが、コレについては折に触れて考え続けていたので、色々ごまかして「二年の活動の結晶です(^_-)-☆」ということにしておきましょう。

 2021年11月くらいから並行作業で同人誌用の作業も開始してました。気晴らしがてら……。

 

 ② Wordのテンプレに流し込みます

 文庫本なのでA6サイズの用紙に上手いこと余白が設定されたテンプレを作る必要がありますが、初心者にそれはいきなり酷というもの。
 印刷所さんが用意してくださったテンプレを拝借することにしましょう。

 自分で作るにしろ、よそ様から拝借してくるにしろ、ここに①で作った血潮の結晶を流し込みます。その喩えやめろ。

 改行の頻度にもよりますが、私の場合は短編を10本そこら、本文75000字くらいで本体のページ数が232ページになりました。タイトルトビラとか空白ページを割と入れてたからだいぶ嵩増しされてます。
 なお本文ページ数は製本の関係で4の倍数にするように!
 大切なポイントだ!

 

 補足。フォントは「源暎こぶり明朝 v6」を使わせていただきました。
 この趣ある素敵なフォント、なんとフリーフォントです。ええい、使うしかない!

okoneya.jp

 

 ③ 校正、細部調整をやります

 別に表紙開いていきなり本文! でもいいっちゃいいのですが、ここはある程度拘っておきたいじゃないですか。市販の本の何倍ものお値段を払うんだから……。
 という訳で本文の調整をかけていきます。

 ここは個人の編集系ソフトの取り揃えによりますが、私は本文を一つのWordファイルだけで賄いました。
 PDF化もJUST PDFやAdobeとかを使わずに「PDFとして保存」で乗り切りました。
 PDFを結合するソフトを持ってないなら、一つのファイルをセクション区切りで制御した方が後々楽です。最後にPDF化すれば一発で完成するので。

 以下、この項の細かい部分について。

 

【校正】

 これは個人の趣味の領域ですが、私としては一番大事だと思ってる部分。
 素人仕事なので限界はありますが、読み返した時に「アァーッ!」とならないためにもこの工程を挟んでおくとよいです。

 誤字脱字をはじめ、単語の不統一とか、改ページのレイアウトとか、内容に関する微調整とか、もう気付いたものを何でも直していきましょう。
 私は最古で2年前に書いたものについてそれをやったので胸の痛みにのたうち回りました。過去の作品読み返すとどうしてもそうなる。どうしてもね。

 紙に直接ダメ出しを書き込みながら考えたかったので、第一稿をコンビニのプリンターで刷らせてもらったりしました。
 コンビニのプリンターってお札入らないんですね(知らなかった)。お陰で第一稿の入ったPDFを握りしめて自販機を探し回る羽目に。
 A4モノクロ両面印刷で2000円ちょいかかりました。すでにそこらのハードカバーより高いぞ。

 ちなみに本気で付箋つかって校正したらこれくらいの量になった。

f:id:tarte-tutan:20220207013602j:plain

 やりすぎた気がしないでもない。こんなんしてたらのたうち回りもする。

 

【細部調整】

 最初のタイトルページ、目次、各話トビラ、トビラ裏、奥付を作っていきます。
 サンプル的な画像を作ってきたのでまずはそちらをご覧ください。
 なお、奥付以外は趣味の領域なので、以下はあくまで参考程度にとどめて、ご自分の好きなようにレイアウトしていったらよいと思います。好きな作家さんの文庫本とかを真似したりしてね。私もそうしました。


 タイトルページ:

f:id:tarte-tutan:20220207013653p:plain

 ここの正式名称がわからん。本文トビラ? とかそのへんだと思います。表紙をめくったら一番最初に出てくるところ。
 グラフィック的なセンスはないので、ここはもう適当にテキストボックス二段組み+文字横書き中央揃えで乗り切りました。
 いいんだよ本文で勝負するから!


 目次:

 申し訳ないのですが画像なし。それっぽいサンプルページを用意するのが地味に大変なので。
 当然ながら本文の調整が済んでからの方がいいです。ページ数が変動しちゃうと面倒なので。
 百戦錬磨のWord使いならタイトルとリンクさせて自動生成したりするのでしょうが、私は愚直にページ数を数えて手打ちで書き込んでました。フォント位置の微調整とかあるし……。


 各話トビラ:

f:id:tarte-tutan:20220207013750p:plain

 ここ、ここね、一番こだわりました。タイトルというものに最も思い入れがあったので。愛情をかけた部分は綺麗に見せたい。

 レイアウト構成は画像の通りです。
 内容自体はニッチな層向けでしたが、本を作る際のコンセプトが「本屋に紛れててもギリばれないくらいの本格的なやつ」だったので、何も知らない人向けの表示をしてみました。実際は知り尽くした人が買うようなシロモノな訳ですけども。


 トビラ裏:

f:id:tarte-tutan:20220207013854p:plain

 見開き左(奇数ページ)を各話トビラとし、その裏の空白ページに英語タイトルを仕込んだりしました。
 サンプルとはいえもうちょっと真面目な例文を入れろ。

 そして本文も必ず見開き左から始まるわけです。統一すると綺麗!


 奥付:

f:id:tarte-tutan:20220207013924p:plain

 忘れちゃいけない!
 同人誌を作る際、決して疎かにしてはいけないパートですね。
 「入れるとより一層本っぽくなるから」とかではなく(それも一理ありますが)、同人誌であれ、本の出版に伴う責任の所在を明確にするために必要です。成人向けとかは特にね。

 奥付の書き方については印刷所さんのFAQやマニュアルに細かい指示があったりするようなので(社名の書き方など)、きちんと調べてから書きましょう。

 また、二次創作であれば、その作品が非公式であり本家大本とは一切関係がないことも必ず明記しましょう。
 「自分は一介のファンであり公式と関係するものではない」という鉄の掟、大事。

 

 ここまでが本文の調整。
 結構手間がかかりますが、手塩にかけた子に化粧を施すようで心躍る工程でもあります。
 Wordとの格闘含めて、ここが一番楽しかった気がします。

 

 ④ カバー表紙と表紙を作ります

 字書きさんであれば画像編集と聞いて恐れ戦く方もいらっしゃるかと。
 グラフィックのお時間です。

 

 まずこの時点で「どこの印刷所さんにお願いするか」は決めておいた方がよいです。
 余程の事情がない限り、表紙もカバー表紙も印刷所さん指定のテンプレを使うことになるかと思いますが、テンプレにがっつりと社名とかが書かれてるケースが多いですし(まあ編集で削れたりもしますがそんな野暮はしなさんな)何より他所のテンプレを使って何か印刷トラブルがあっても先方はフォローできませんので……。

 ちなみに私が実際の印刷でお世話になったのはスターブックスさんでした。

 

 大体のテンプレはPSDファイル、つまりPhotoshop用のデータ形式でやりとりすることになります。
 とはいえPhotoshopは有料だし、普段は使わないからなぁ……なあなたに、無料で使えるGIMPをおすすめしたい。
 ちょっとUIにクセはありますが、基本的な機能は全部そろっていて、PSDファイルも問題なく弄れましたのでご参考までに。
 私はグラフィック屋さんではないので、買い切りだの月額だのを気にせず使えるコレを長年愛用しています。

www.gimp.org

 なお無料ではありますが寄付は受け付けているようなので、お金に余裕のある方は是非……。

 

 あ、あと地味に大変だったことと言えば、背幅。
 表紙およびカバー表紙を作るには背幅=本の厚みが確定している必要があります。
 そうじゃないと背表紙部分の長さが決まらないからね……。

 本文のページ数と用紙、あと表紙の用紙が決まっていれば、Web見積や背幅計算サイトなどでチャチャッと算出できますので、③の本文調整が終わってさえいれば問題ないかと。

 あ、文庫本用のカバー表紙を作る場合、背幅の着色部分は左右1mmくらい余裕を持たせて広めに取った方がいいです。
 カバーはどうしてもフワッとしてしまうので、背幅からちょっとはみ出るくらいにゆったり色塗りした方が本棚に収めたときに綺麗に見えます。


 そうそう、裏表紙の方にニセのバーコードや定価表示、あらすじを仕込むとより一層本物っぽくなっていいですよ。
 ニセのバーコードの出力はこのサイトさんが便利。私は「999999999999 999999999999」で生成し、数字部分だけ後から別の文字列を合成しました。

barcode-place.azurewebsites.net

 こうして振り返るとネットの各所にお世話になっていますね。
 四方八方に足向けて寝られない。立棺。

 

 ⑤ 最終チェックをします

 この時点で、入稿するためのデータは全て揃いましたので、いざ発注&送信! ……の前にデータに問題がないかチェックします。
 刷ってからではもう遅い(標語)。

 チェック事項はいくらでも増やせてしまうので、印刷所さんの入稿マニュアルなどに詳細をお任せするとして、私が特にコケやすいなと思ったポイントを書き出してみます。

 

 「⁉」や「──」、半角数字の表示は大丈夫? 横に倒れたりしてない?
   →フォントによってはPDF化するときに倒れて見た目がすごいことになる。
    Wordの縦中横などを使って上手いこと制御すべし。

 

 いらん空白ページが入ってない?
   →改ページが何故か二つ入ってたりするとこうなる。削除。

 

 奇数偶数の余白設定は間違いない?
   →たまにセクション設定がおかしくなって奇数・奇数みたいになってたりする。

 

 本文ページ数の合計、ちゃんと4の倍数?
   →マジでやらかすので注意。ベテランの友人に指摘されて気付いた。

 

 表紙、カバー表紙の背幅は本当に合ってる?
   →見積とかで「やっぱり表紙この厚紙にしよ」とかすると狂うから注意。

 

 これらをクリアできたら、もう流石にやらかしポイントは残ってないんじゃないかな……。
 表紙用のPSD、本文用のPDFを携えて最後の段階へ進みましょう。

 

 ⑥ 印刷所さんに発注します

 いよいよ発注!
 私は先述のとおりスターブックスさんにお願いしました。小説本の少数印刷に対応されていて有難い。

www.starbooks.jp

 この段階については個人ブログより印刷所さんの諸ポイント解説ページの方を参照した方がよいかと思います。信頼できないよこんな記事! 個人の所感の書き散らしだもの!

 

 さて、データを入稿しチェックを通過したらついに納品。
 タイトルとかガッツリ映っちゃう関係で出来高の写真は載せられませんが(ここまで来て完成品を見せないんかい)この……この……

 

f:id:tarte-tutan:20220207015450j:plain

 この達成感……!

 

 もうね、思った以上に文庫本してました。
 びっくりしました。

 

 内容とかはこのさい関係ないです(楽しめればよかったのですが、校閲のために何度も噛みすぎて最早味がしなくなってしまったし)。

 「自分が積み上げてきたものが、本格的なカタチになって手元に残ったらいいなあ」から始まった色々の作業が、本当に実を結んで目の前に、手元に現れたこの感動。
 さんざっぱら字書きと名乗っておきながら情けないのですが、ちょっと言葉にならなかったですね。
 手が震えた……。

 

 印刷所さんも、協力してくれた友人も、なんなら今までWebに載せたやつ読んでくれた方も、そして当然ながら神と信ずる公式まで、思いつく全てに感謝してました。
 いや、あれは本当、人生のうちのベスト5に入るくらいの瞬間だったと思います。

 

 なるほど、電子化の時代にあっても同人誌文化が根強い訳だ。
 これは……たまらんですよ。また作りたい。

 

 

 発注までの流れはそんな感じです。
 とにかく①さえ乗り切れば(ようは載せる本文さえ出揃っていれば)あとはどうにでもなります。どうにかなりました。初心者でもね。

 部数? ンなこと聞きなさんな野暮だねえ……。
 (目を逸らす)
 (予備本を予想外に貰っちゃって在庫が嵩んだとだけ……)
 (ちなみに拙作を購入してくださった方も何名かいらっしゃいました)
 (ありがたいことです……)

 

 是非あの喜びをもう一度味わってみたいものですが、さてそれじゃあ次は何を書こうか。
 ブログの新書化……はウェブじゃないとできないフォーマットも多く含むから難しいな。
 となるとやはり、オリジナル小説に乗り出すべきなのか……?
 文庫にできる分量を?
 大事だぞ、これは……。

 

 結論。ホンを作るには「① 中身を書きます」が一番大変。

 

 ウーン切り上げ時が分からん。今週の記事はここまで。
 また次の日曜に。